OTC医薬品業界に吹いた新しい風~シンプル処方が増えている?~
登録販売者の講師を行っている株式会社東京マキア代表・村松早織先生が解説するOTC医薬品別の接客・対応方法をご紹介。よくある具体的な事例を交えながら、お客様の症状別での接客・対応方法を学べるコンテンツを特集します。
2022年1月13日
OTC医薬品業界に吹いた新しい風~シンプル処方が増えている?~
新型コロナウイルス感染症が流行し始めてから、私たちの生活様式は今までと大きく変わりました。それに伴いOTC医薬品業界の「スタンダード」もコロナ前後で変化したように思います。時代と共に流行の商品は変わっていきますが、それを把握するのも登録販売者の大事な仕事です。今回は、OTC医薬品業界の「今」に焦点を当てて、商品解説をしていきます。
1.CMやキャッチコピーの変化
エスタックイブファインEXのキャッチコピーは一般消費者の間でも広く知られており、ここ数年は「風邪でも絶対に休めないあなたへ」が使われていました。しかし2020年には、「今すぐ治したいつらい風邪に」に変更されています。また、同じく2020年にパイロンPLシリーズの電車の中吊り広告の「かぜの時は、お家で休もう!」というキャッチコピーがSNSで話題になり、ほかにも同時期に放映されていたコルゲンコーワIB錠TXαのCM、「働く人に聞きました」篇では、女優の桜咲彩花さんが「風邪っぽいのに仕事に行ったことありますか?大切ですよ、無理しない勇気」と語りかける内容となっていました。
この変化については、私の周りでも好意的に受け取る人が多くいました。もともと薬剤師や登録販売者を含む医療関係者の間では、「かぜの日は安静にすること」が共通認識としてありますし、もちろんそれをご存じの一般消費者もいらっしゃいます。それゆえ仕事や外出をする様子を映したかぜ薬の宣伝方法に違和感のある人もいたと考えられますが、このタイミングでそのズレが解消されることになりました。
2.商品の変化
宣伝方法の変化のみならず、商品の成分配合についても変化を感じます。簡単に言えば、今までよりも処方がシンプルな新商品やリニューアル商品が見受けられます。理由として考えられることは、新型コロナウイルス感染症の拡がりにより、家で過ごす人が増え、「少しのかぜであれば病院に行かずにセルフケアで治したい」という需要が増えたためでしょうか。また、人との接触を避けるため、スタッフと話さずにお買い物をするお客様も増えたことでしょう。OTC医薬品は配合剤が多いですが、成分数が増えるほど、持病や副作用のリスクを考えなくてはなりません。つまり、成分数が多く処方が複雑な商品ほど、人を選ぶということです。
ここではそのような変化が見受けられた商品を紹介していきます。
①ストナファミリー(2021年10月発売)
佐藤製薬 ストナファミリー https://search.sato-seiyaku.co.jp/pub/product/4841/
まずは、かぜ薬のストナファミリー。成分数はなんとたったの4つです。
かぜ薬といえば、6~7成分以上で構成されているのが今までのスタンダードであり、多いものでは10成分を含むものもあります。ですがストナファミリーは、かぜの11症状をカバーできる最低限の成分で構成されています。便秘を起こしやすいコデイン類、糖尿病や高血圧に影響を与えるメチルエフェドリン類(マオウ含む)、過剰摂取になりがちなカフェイン類を配合しておらず、基礎疾患のある人にも検討しやすい配合です。
ストナファミリーのデータ
【成分 6錠中】
- 解熱鎮痛成分 アセトアミノフェン900㎎
- 抗ヒスタミン成分 クロルフェニラミンマレイン酸塩7.5㎎
- 鎮咳成分 デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物45㎎
- 去痰成分 グアイフェネシン150㎎
【用法・用量】
- 成人(15歳以上) 1回2錠
- 7~14歳 1回1錠
1日3回、食後30分以内に服用
なお、ストナファミリーを含む多くのかぜ薬には抗ヒスタミン成分が配合されており、前立腺肥大症や緑内障をお持ちの方、眠気の出やすいかぜ薬は避けたいという方には不向きです。抗ヒスタミン成分が入っていないかぜ薬をお求めの方には、パブロン50錠や改源錠などがよいでしょう。ただしこれらの商品には、抗ヒスタミン成分が含まれないため、鼻症状への効能効果がありません。お客様とよくご相談の上、商品を決めるようにしてください。
【参考】
大正製薬 パブロン50錠 https://www.catalog-taisho.com/04537.php
カイゲンファーマ 改源錠 https://www.kaigen-pharma.co.jp/product/product2/78_kaigenjyou.html
②メジコンせき止め錠Pro(2021年8月発売)
シオノギヘルスケア メジコンせき止め錠Pro https://www.shionogi-hc.co.jp/medicon.html
次は、鎮咳薬のメジコンせき止め錠Proです。商品のWebページを確認すると、「かぜ対策、おうちでケア派が増えている!?」というキャッチコピーが飛び込んできます。コロナ禍で病院に行くことがはばかられ、OTC医薬品でセルフケアをしたい人にスポットを当てていることが分かります。
メジコンせき止め錠Proは、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物(90mg)のみの商品です。麻薬性鎮咳成分が含まれていないため、販売する側としても、「濫用等のおそれのある医薬品」に関する説明が不要というメリットがあります。ただしデキストロメトルファンにも、眠気の副作用や大量服用による幻覚などの副作用があります。濫用されている事実もありますので、「濫用等のおそれのある医薬品」に指定されていないとはいえ、適正使用に配慮してください。
なお、メジコンせき止め錠Proの「してはいけないこと」には、眠気を理由に自動車の運転を禁止する記載がありません。一方で、医療用医薬品のメジコンには記載があります。これは、OTC医薬品におけるデキストロメトルファンの添付文書記載要領に含まれていないことが理由です。
その代わり、添付文書の裏(枠外)に「眠くなることがある」という注意書きがあります。自動車の運転をする方には眠気の副作用についてお伝えし、眠くなる副作用のない漢方薬の選択肢も視野に入れて対応しましょう。咳に用いられる漢方薬には、小青竜湯や麦門冬湯などがあります。
メジコンせき止め錠Proのデータ
【成分 6錠中】
鎮咳成分 デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物 90mg
【用法用量】
15歳以上、1回2錠、1日3回服用
③バファリンプレミアムDX(2021年9月発売)
ライオン バファリンプレミアムDX https://www.bufferin.net/products/premiumdx.htm
バファリンプレミアムDXは、バファリンプレミアムの鎮痛成分増量版の商品ですが、一番注目したいことは、鎮静成分のアリルイソプロピルアセチル尿素が抜去されていることです。
成分(1回量2錠中) | バファリンプレミアムDX | バファリンプレミアム | |
---|---|---|---|
鎮痛成分 | イブプロフェン | 160mg | 130mg |
鎮痛成分 | アセトアミノフェン | 160mg | 130mg |
鎮痛補助成分 | 無水カフェイン | 50mg | 80mg |
胃粘膜保護成分 | 乾燥水酸化アルミニウムゲル | 70mg | 70mg |
鎮静成分 | アリルイソプロピルアセチル尿素 | なし | 60mg |
アリルイソプロピルアセチル尿素は「濫用等のおそれのある医薬品」には指定されていませんが、依存性があり、また、薬疹の副作用が懸念される成分でもあります。鎮痛薬に鎮静成分が追加されている場合、このような理由により考慮すべきリスクが増えるため、バファリンプレミアムDXの方がお客様にご紹介しやすいという利点があります。
ただし、鎮痛成分を増量しているため、バファリンプレミアムDXでは、高血圧や胃・十二指腸潰瘍のある人などは「してはいけないこと」になっています。知らなかった登録販売者の方は、一度添付文書を確認してみてくださいね。
バファリンプレミアムDXのデータ
【成分】
上記の表の通り
【用法用量】
15歳以上、1回2錠、1日3回まで服用可
④第一三共胃腸薬 細粒s / 錠剤s(2021年8月リニューアル発売)
第一三共胃腸薬 細粒s / 錠剤sは、リニューアルにより、ロートエキスという成分が抜去されました。リニューアル後の商品には、「第一三共胃腸薬」という商品名の最後に「s」というアルファベットが入っています。ロートエキスは抗コリン成分で、前立腺肥大症や排尿困難の症状のある人、緑内障の人は不向きです。これにより、リニューアル前よりも安全性に配慮した商品に生まれ変わったと言えます。
第一三共胃腸薬 細粒s / 錠剤s のデータ
【成分 3包中または9錠中】
- 消化酵素 タカヂアスターゼN1 150mg、リパーゼAP12 60mg
- 胃粘膜修復成分 アカメガシワエキス 63mg、カンゾウ末 150mg
- 制酸成分 ケイ酸アルミン酸マグネシウム 720mg
合成ヒドロタルサイト 300mg、水酸化マグネシウム 600mg - 健胃成分 オウバク末 105mg、ケイヒ末 225mg、ウイキョウ末 60mg、
チョウジ末 30mg、ショウキョウ末 75mg、l-メントール 9m
【用法・用量】
細粒s
- 5歳以上 1回1包
- 11歳以上15歳未満 1回2/3包
- 8歳以上11歳未満 1回1/2包
- 5歳以上8歳未満 1回1/3包
- 3歳以上5歳未満 1回1/4包
細粒s
- 15歳以上 1回3錠
- 11歳以上15歳未満 1回2錠
いずれも1日3回、食後に服用
このようにOTC医薬品業界も変化し続けていますが、ぜひ最新の情報を取り入れて、日々の接客に活かしていきましょう。
執筆者:村松 早織(薬剤師・登録販売者講師)
株式会社東京マキア 代表取締役
登録販売者や受験生向けの講義を中心に事業を展開
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