事例から学ぶOTC医薬品〜皮膚用薬編(じんましん)~
登録販売者の講師を行っている株式会社東京マキア代表・村松早織先生が解説するOTC医薬品別の接客・対応方法をご紹介。よくある具体的な事例を交えながら、お客様の症状別での接客・対応方法を学べるコンテンツを特集します。
2021年7月27日
事例から学ぶOTC医薬品〜皮膚用薬編〜
- 【お客様の背景】
- 20代男性、じんましんと思われる症状が出ている。
お客さま: 体にじんましんのようなものができているのですが、見てもらえますか?
症状が広範囲である、症状が強い、もしくは皮膚症状以外の症状がある場合、受診勧奨をします。
登録販売者: 腕の一部に皮膚症状が出ていますね。おなかや足など、ほかの部分はどうでしょうか?体全体に広がっていますか?
お客さま: 今のところ一番気になるのは腕で、足にも少しだけ出ています。体全体という感じではありません。
症状の経過を確認します
登録販売者: いつから症状が出ていますか?
お客さま: 1時間くらい前に急に出ました。じんましんだとしたら、何が原因になりますか?
登録販売者: 代表的なものですと、食べ物や薬、疲れやストレスなどがあります。特定できないこともありますが...。
お客さま: そういえばお昼はエビを食べましたね。でも今まで食べ物でじんましんなんて出たこともないのになぁ。
登録販売者: じんましんの場合、ひとつの原因だけでなく、いろいろな原因が重なって症状が出ることもありますよ。ただ、原因が分かると、次回からそれを避けることで、じんましんを予防することできます。
お客さま: なるほど。あとで自分の生活を振り返ってみます。
体の内部にまでじんましんがおよぶと、のどが腫れて呼吸困難などの症状が出ることがあります。この場合は命にかかわるため、速やかに病院に行く必要があります。
どの薬であれば使用できるかを確認します。
登録販売者: のどのかゆみや呼吸困難、腹痛や吐き気など、皮膚症状以外に何か症状はありますか?
お客さま: 特にありません。
登録販売者: 持病などはありますか?たとえば、尿が出にくい症状や、緑内障と診断されたことはありませんか?
お客さま: 緑内障の可能性があると言われたことがあります。でも今のところ治療するほどではないので、定期的に検診に来るようにと言われています。
登録販売者: 承知いたしました。緑内障の方が注意すべきお薬もあるので、念のためそちらは避けますね。現在、使っている薬やサプリメントもありませんか?
お客さま: ありません。
【ムヒAZ錠の成分】
アゼラスチン塩酸塩
登録販売者: そうしましたら、「ムヒAZ錠」はいかがでしょうか?じんましんには抗ヒスタミン薬と呼ばれるお薬が使われまして、「ムヒAZ錠」にはアゼラスチン塩酸塩という成分が含まれています。
お客さま: 皮膚の症状なのに、塗り薬ではないのですね。
登録販売者: じんましんの場合、一般的に塗り薬よりも飲み薬の方が効きがよいと言われていますので、こちらを優先してお勧めしています。塗り薬もありますが、持病などで飲み薬が使いにくい方や、ご希望のある方にご紹介しております。
お客さま: そういうことですね。効き目の問題なのであれば、「ムヒAZ錠」にしてみます。
登録販売者: もう1点、抗ヒスタミン薬は、口の渇きや眠気の副作用が出ることがあります。「ムヒAZ錠」はそれらの副作用が軽減されていますが、それでも服用後の車の運転はお控えいただく必要があります。そちらは問題ないでしょうか?
お客さま: 大丈夫です。
登録販売者: 今は皮膚症状の範囲が小さいですが、薬を飲んでも症状がどんどん広がってしまったり、かゆみが強くなったり、息がしにくいなどの皮膚症状以外の症状が出るようなことがあれば、すぐに医療機関を受診してください。薬が効かない場合、一般的なじんましんでない可能性もありますので、体調の変化にお気を付けください。
お客さま: 分かりました。ありがとうございます。
登録販売者: お大事になさってください。
じんましんの接客の大まかな流れ
- 1.症状を確認する
- 2.受診勧奨すべきかどうかを判断する
- 3.薬を選ぶ
1.症状を確認する
皮膚症状の場合、お客さまに「患部を見てほしい」と言われることがよくあります。皮膚症状は見た目だけでは分からないことも多いため、軽症の場合であれば、その時点で最も適切と考えられるOTC医薬品で様子を見てもらい、改善しなければ皮膚科の受診を促します。今回の事例では、お客さまからいただいた情報から、じんましんの可能性が高いと判断し、話を進めています。
じんましんは、皮膚の一部が突然盛り上がり(膨疹)、短時間で消えてしまう病気です。多くの場合は数十分から1日以内に治まります。急性のじんましんでは原因を特定できることもありますが、慢性のじんましん(1か月以上にわたって症状が出たり消えたりする場合)では、原因の特定が困難な場合も多くあります。
2.受診勧奨すべきかどうかを判断する
皮膚症状全般に関して、次の状態にあてはまる場合、受診を促します。
- ● 患部の範囲が広い、全身に広がっている
- ● 症状が強く日常生活に支障をきたしている、夜眠れない
- ● のどのかゆみや呼吸困難、腹痛や吐き気など、皮膚症状以外にも症状がある
3.薬を選ぶ
どの種類のじんましんであっても、基本的な治療は抗ヒスタミン薬の内服になります。中でも、眠気や抗コリン作用の副作用の少ない第二世代の抗ヒスタミン薬が中心となります。じんましんに適応のある「抗ヒスタミン薬の塗り薬」もありますが、多少効果がある程度と言われています。また、ステロイドの外用薬は、じんましんには推奨されていません。
OTC医薬品のうち、第二世代の抗ヒスタミン薬には、アレグラFX(成分:フェキソフェナジン)や、クラリチンEX(ロラタジン)もありますが、これらの商品の効能効果は「花粉、ハウスダスト(室内塵)などによる次のような鼻のアレルギー症状の緩和:鼻水、鼻づまり、くしゃみ」となっており、「じんましん」には適応がありません。処方薬ではこれらの薬がじんましんに使われることもありますが、OTC医薬品の場合、効能効果に書かれた症状に薬を用いることが原則となります。商品パッケージや添付文書に書いていない症状に薬を使ってしまうと、適正使用から外れてしまい、「副作用被害救済制度」が利用できなくなる可能性があります。注意しましょう。
じんましんに適応のある内服薬には、次の商品があります。
【第二世代の抗ヒスタミン薬】
ムヒAZ錠(主成分:アゼラスチン塩酸塩)
ジンマート錠(主成分:メキタジン)
【第一世代の抗ヒスタミン薬】
アレルギール錠:(主成分:クロルフェニラミンマレイン酸塩)
レスタミンコーワ糖衣錠(主成分:ジフェンヒドラミン塩酸塩)
眠気や抗コリン作用(口の渇き、排尿困難)の副作用は、第一世代の抗ヒスタミン薬よりも第二世代の抗ヒスタミン薬の方が少ないとされています。ただしメキタジンは、第二世代の抗ヒスタミン薬でありながら強い抗コリン作用を持つ成分であり、排尿困難の症状のある人や緑内障の人は「相談すること」になっています。特に高齢者の場合、本人に自覚のないまま前立腺肥大症や緑内障にかかっている人も多いので、注意するようにしてください。
また、第二世代の抗ヒスタミン薬とはいえ、眠気の副作用があるため、上記すべての薬で服用後の自動車の運転は禁止されています。
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