事例から学ぶOTC医薬品〜皮膚用薬編(かぶれ)~
登録販売者の講師を行っている株式会社東京マキア代表・村松早織先生が解説するOTC医薬品別の接客・対応方法をご紹介。よくある具体的な事例を交えながら、お客様の症状別での接客・対応方法を学べるコンテンツを特集します。
2021年8月24日
事例から学ぶOTC医薬品〜皮膚用薬編(かぶれ)
- 【お客様の背景】
- 50代女性、ハイキングの時に植物で肌がかぶれてしまった。
お客さま: 肌がかぶれてしまって...何か薬はありますか?
登録販売者: ご案内いたします。かぶれはいつから出ていますか?
お客さま: 昨日ハイキングに行ったので、恐らく植物にかぶれたんだと思います。家に薬がありましたが、どれを使えばよいかわからなくてこちらに来ました。
登録販売者: ご来店いただき、ありがとうございます。植物でかぶれた可能性があるということですね。症状はかなり広範囲に出ていますか?
お客さま: いいえ、そんなに広範囲ではないと思います。手首の周りに出ているだけですね。ほら、ここです。
症状を確認し、医療機関への受診勧奨をすべきかどうか判断します。
登録販売者: こちらの狭い面積であれば、セルフケアで様子を見てもよさそうですが、かゆみや痛みが強くてつらいということはありませんか?
お客さま: はい、我慢できないというほどではないので、市販薬で様子を見たいです。
お客さま情報を確認します。
登録販売者: 分かりました。何か飲んでいる薬やサプリメント、塗り薬などはありますか?
お客さま: 特にありません。
登録販売者: 今までに塗り薬でアレルギーやかぶれなどの症状が出たことはないですか?
お客さま: ありません。
商品をご案内します。
登録販売者: 承知いたしました。そうしましたら、「リンデロンVs軟膏」か「リンデロンVsクリーム」はいかがでしょうか?こちらはベタメタゾン吉草酸エステルという「ステロイド」と呼ばれるタイプのお薬です。ほかに色々な成分が配合された商品もあるのですが、接触皮膚炎といって、薬の成分でかぶれの症状が出ることもありますので、今回はこのようなシンプルな処方の商品がおすすめです。
お客さま: 薬で逆にかぶれてしまうこともあるんですね。リンデロンってお医者さんから処方してもらったことがあるような気がします。
登録販売者: おっしゃる通り、医療用のお薬で有名なブランドです。ステロイド外用剤は、作用の強さによって5段階に分類されます。こちらはその分類のちょうど真ん中にあたる、「ストロング」の分類のお薬です。ステロイド外用剤を使用するときは、まずは効果の高いステロイドを使い、様子を見ながら弱いタイプに移行していく方法が一般的ですので、こちらのお薬で様子を見てはいかがでしょうか?
お客さま: 知っている名前のお薬で安心ですし、それをもらっていこうかしら。クリームと軟膏はどちらがよいですか?
登録販売者: 一般的にクリームの方がのびがよいですが、皮膚刺激が出やすいと言われています。軟膏は少しべたつきますが、皮膚刺激が出にくいです。
お客さま: そしたら、軟膏の方を買います。
1回の使用量について説明します。
登録販売者: ありがとうございます。こちらのお薬を使うときは、1回につき、人差し指の第一関節の半分くらいまで絞り出していただいて、患部に塗るようにしてください。
お客さま: 1回につき、人差し指の第一関節の半分くらいまでの量ですね。
塗る回数について説明します。
登録販売者: さようでございます。塗る回数ですが、症状が強い時は1日2回塗ってください。よくなってきたら1日1回に減らしてください。症状が悪化した場合や、5~6日間塗ってもよくならない場合は、薬の使用をやめて、また相談してくださいね。
お客さま: しばらくは1日2回ですね。分かりました。ありがとうございます。
登録販売者: お大事になさってください。
ステロイド外用剤の接客の大まかな流れ
- 1.症状を確認する
- 2.受診勧奨すべきかどうかを判断する
- 3.ステロイドがよいか、それともほかの選択肢がよいかを判断する
- 4.使い方を説明する
1.症状を確認する
かぶれとは、ある物質が皮膚に触れることで起こる皮膚炎のことで、接触皮膚炎とも言います。植物や金属、医薬品や化粧品など、あらゆるものが原因となる可能性があります。接触皮膚炎を防ぐには、原因となっているものとの接触をなくすことが非常に重要です。
接触皮膚炎は大きく分けて、刺激性接触皮膚炎とアレルギー性接触皮膚炎の2種類があります。植物によるかぶれにも、この2種類があります。
刺激性皮膚炎は、酸やアルカリなどの化学物質への「刺激」によって起こり、唾液などの体液が原因になることもあります。アレルギー性接触皮膚炎は、化粧品や金属へのアレルギー反応によって引き起こされます。
2.受診勧奨すべきかどうかを判断する
皮膚の湿疹やかぶれの症状がある場合、次の記述を基準に受診勧奨するかどうかを判断します。
● 症状は広範囲でないか?
→目安としては、ステロイド外用剤を身体に使用する場合、患部のサイズが手のひら2枚分の面積を超えていれば、医療機関への受診を促します。
● 症状は強くないか?
→眠れないほど症状が強い、日常生活に支障が出ている、腫れがひどいなどの場合には、医療機関への受診を促します。
● 皮膚以外の症状もある
→発熱している、呼吸が苦しいなど、皮膚症状以外にも症状が出ている場合、医療機関への受診を促します。
3.ステロイドがよいか、それともほかの選択肢がよいかを判断する
皮膚の湿疹やかぶれの症状があるときの主な薬の選択肢としては、ステロイドや抗ヒスタミン薬の外用剤があります。皮膚の炎症や赤みが強い場合にはステロイド外用剤、症状が軽微(かゆみのみ)で炎症がない場合や、ステロイド外用剤を使いたくないというご要望がある場合には、抗ヒスタミン薬の外用剤がよいでしょう。
ステロイド外用剤は、作用の強さによって5段階に分類されますが、OTC医薬品には3群〜5群の間の強さのものがあります。医療用医薬品の場合、ストロンゲスト(1群)、ベリーストロング(2群)もあります。
どの強さのものを使うかは、体の各部位の薬の吸収率を考慮します。
成分 | 使用部位 | |
---|---|---|
使用部位 | ベタメタゾン吉草酸エステル、フルオシノロンアセトニド | 胸、おなか、背中などの体幹、手足 |
4群medium(普通) | ヒドロコルチゾン酪酸エステル、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル | 顔、首、高齢者、乳幼児の体幹 |
5群weak(弱い) | デキサメタゾン酢酸エステル、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン酢酸エステル、ヒドロコルチゾン | 乳幼児の顔 |
またステロイド外用剤は、十分な効果を得られる強さの薬で短期間に症状を改善し、徐々に弱いタイプへ移行していく、「ステップダウン療法」という治療法が一般的です。これは、弱いステロイド外用剤から先に使っていく場合(ステップアップ療法の場合)、いたずらに治療期間が延びてしまうことがあるからです。
とはいえOTC医薬品の場合、何種類かのステロイド外用剤をご購入いただいて薬を切り替える方法は、現実的ではありません。実務としては、まずは効果の高いステロイド外用剤を1日2回で使用し、症状が改善したら1日1回に切り替えていただき、最後はご自宅にある保湿剤などに移行する流れがよいでしょう。
4.使い方を説明する
ステロイド外用剤の使用量の目安は、1FTU(フィンガー・チップ・ユニット)という単位を覚えると便利です。1FTUとは大人の人差し指から第一関節まで薬を載せた量のことで、約0.5gとなり(チューブのサイズによって量が異なることがあります。)、手のひら2枚分の面積に塗る量に相当します。
これを踏まえて、お客さまの患部の大きさに合わせて、どのくらいの量を塗ったらよいか説明するとよいでしょう。
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