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事例から学ぶOTC医薬品〜誤情報対応編〜

登録販売者の講師を行っている株式会社東京マキア代表・村松早織先生が解説するOTC医薬品別の接客・対応方法をご紹介。よくある具体的な事例を交えながら、お客様の症状別での接客・対応方法を学べるコンテンツを特集します。

2021年10月12日

事例から学ぶOTC医薬品〜誤情報対応編〜

  • 【お客様の背景】
  • 40歳、男性。新型コロナウイルスに「パモキサン錠」が効くという誤情報をお持ちの方がご来店した。

お客さま: すみません、「パモキサン錠」という商品はありますか?

登録販売者: いらっしゃいませ。蟯虫駆除剤のパモキサン錠ですね。こちらにございます。お客さまがお使いですか?

お客さま: 今使うというわけではないのですが、「パモキサン錠」が新型コロナウイルスに効くという情報をSNSで見かけたんです。何かあった時のために買っておこうかなと思いまして。

登録販売者: そうでしたか。新型コロナウイルスに感染してしまったらと思うと不安になりますよね...。ですが、「パモキサン錠」は蟯虫の駆除に使用するお薬です。市販薬は決められた効能・効果で使用する必要がございますので、残念ながら新型コロナウイルスへの使用はお勧めすることができません。

【イベルメクチン】
糞線虫やヒゼンダニに有効な駆虫薬で、効能・効果は腸管糞線虫症や疥癬です。

お客さま: 今、イベルメクチンが話題になっているでしょう?イベルメクチンは駆虫薬なので、それと同じような駆虫薬がドラッグストアで買えると聞きました。イベルメクチンは医療用医薬品だから手に入らないですし、海外から個人輸入するのもリスクがあると聞いたので...。であれば、私は効き目があるかどうかは気にしないですし、「パモキサン錠」を買って備えておきたいなと思いました。

医薬品の個人輸入のリスクについても知っておきましょう。

※厚生労働省
医薬品等を海外から購入しようとされる方へ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/kojinyunyu/index.html
自分の言葉だけでは説明が難しいケースでは、メーカー情報や厚生労働省からの情報など、信頼できる情報源からの情報をお伝えします。

※佐藤製薬
パモキサン錠の適正使用について
https://www.sato-seiyaku.co.jp/newsrelease/2021/210826/

登録販売者: おっしゃるとおり、個人輸入は偽造品などもあるので、慎重にならないといけませんね。「パモキサン錠」については、メーカーさんが出しているこちらのニュースリリースをご覧になってください。「『パモキサン錠』の有効成分は『パモ酸ピルビニウム』で『イベルメクチン』とは異なります。また、『蟯虫の駆除』を効能・効果として承認された第2類医薬品で、新型コロナウイルスに関する有効性及び安全性は認められておりません。」と書いてございます。

お客さま: そうですか...。これはメーカーが出している情報なのですね?

登録販売者: さようでございます。有効性が認められていないものを使用する場合、「薬が効かなかった」だけで済めばまだよいのですが、副作用のリスクも負うことになります。薬を適正に使用しなかった場合の健康被害では、国からの補償もありません。万が一お客さまの身に何か起こってしまったらと考えると、心配になります。

お客さま: そうなのですね。たかが市販薬ですし、副作用が出た時の対応までは考えていませんでした。

登録販売者: 市販薬はよく医療用医薬品と比べられますが、やはり薬ですので、副作用が出ることもあります。特に薬を適正使用しなかった場合には、そのリスクが高まってしまいます。ご理解いただければ幸いです。

お客さま: 分かりました。今日はここに来て色々な情報が得られたので、もう一度考え直してみますね。

新型コロナウイルスの流行が始まってから、SNS等ではさまざまな誤情報が後を絶ちません。ドラッグストアでも、いろいろな情報に翻弄されているお客さまをお見掛けすることがあります。

「パモキサン錠」は、昨年から少しずつ「新型コロナウイルスに有効である」という情報が流れ出し、イベルメクチンが新型コロナウイルスに効くのではないか?という期待の高まりとともに、問い合わせを受けるスタッフが増えているようです。このようなお客さまの対応に四苦八苦している方もいると思いますので、どのように対応すればよいのかを確認しておきましょう。


1.頭ごなしに否定せず、間違った情報には同意もしない

誤情報を信じているお客さま頭ごなしに否定する、バカにした態度を取る、お客さまの言葉を遮って返事をする、などの対応をとると、思いがけない方向に話が進み、ヒートアップしてしまうことがあります。1日に何度も同じような方の対応をしていると、「またか...。」という気持ちになってしまうこともありますが、このような態度はお客さまにすぐに伝わりますので、控えましょう。また、しばらくお話を伺ってみると、私たちに伝えたいことは「不安な気持ち」であり、誤情報がメインの話題ではないこともあります。
なお、お客さまがお持ちの情報が明らかに間違っている時は、無理に同意する必要もありません。否定もせず、肯定もせず、お客さまが真に伝えたいことを探ってみてください。
ひとつ心に留めておきたいことは、お客さまがスタッフとのコミュニケーションを拒絶しているケース(相手を攻撃するような言動が見られる場合など)では、どんなにすばらしいエビデンスやコミュニケーション能力を持っていたとしても、短時間で相手の考えを変えることは至難の業です。お客さまの態度によっては、必要なことを伝えるのみにとどめるなど、ある程度割り切って対応することも選択肢の一つにして、自分自身の心の健康を優先してください。

2.専門家として薬の適正使用を推進する

OTC医薬品は、定められた効能・効果や用法・用量以外の使い方をすることはできません。パッケージや添付文書に記載のある方法で使用することが鉄則ですので、薬をいわゆる「裏技」のような方法で使おうとするお客さまには、適正使用について説明しましょう。また、本来その薬が必要でない人が購入してしまうことで、急に需要が高まってしまい、本当にその薬が必要な人に行き渡らなくなることもあります。薬剤師や登録販売者は、薬の供給を安定させるための番人でもあるのです。

3.お客さまの不利益についてお話をする

薬を適正使用しなかった場合、効果が見込めないだけでなく、当然、副作用のリスクもあります。また、「医薬品副作用被害救済制度」は、薬を「適正使用」した場合に起こった健康被害についての補償制度です。すなわち、薬を適正に使用せずに健康被害が発生した場合、金銭などの補償が受けられなくなります。

4.医薬品情報は常にアップデートを

医薬品の情報は日々移り変わります。昨日までは◎だったものが、今日には✕になることもあります。お客さまが情報を取得するスピードは、SNSの助けもあり、とても速くなっています。私たちも厚生労働省や国立機関、公共機関の情報など、信頼できる情報源から情報を収集し、お客さまに適切な情報をすばやく提供できるように日ごろから意識しましょう。

過去の記事 事例から学ぶOTC医薬品〜皮膚用薬編(にきび)~
新しい記事 事例から学ぶOTC医薬品〜解熱鎮痛薬編 partⅡ〜