事例から学ぶOTC医薬品〜花粉症対応編〜
登録販売者の講師を行っている株式会社東京マキア代表・村松早織先生が解説するOTC医薬品別の接客・対応方法をご紹介。よくある具体的な事例を交えながら、お客様の症状別での接客・対応方法を学べるコンテンツを特集します。
2022年1月27日
事例から学ぶOTC医薬品〜花粉症対応編〜
- 【お客様の背景】
- 35歳男性、花粉症と診断されているが、仕事が忙しいためセルフケアを希望している。緑内障治療中である。
お客さま: 花粉症ですが、おすすめの薬はありますか?
登録販売者: ご案内いたします。今月から花粉が少しずつ飛び始めているようですね。
お客さま: そうなんですよ。病院に行く時間がないので、今年は自分でどうにかしたいです。
登録販売者: 承知いたしました。今ある症状の中で、一番気になる症状は何ですか?
お客さま: 鼻水です。
登録販売者: 鼻水ですね。いつもお使いの花粉症のお薬の名前は覚えていますか?
お客さま: 飲み薬ですが、名前は忘れてしまいました。眠くなりにくいものなら何でもよいですよ。
登録販売者: 眠くなりにくいお薬ですね。現在、治療中の病気などはありますか?たとえば、緑内障や高血圧などがあれば教えてください。
お客さま: 緑内障の治療中です。
登録販売者: 本日はおくすり手帳をお持ちですか?
お客さま: 持っています。こちらです。
登録販売者: 助かります。お借りしますね。お医者さんから、何か使ってはいけないお薬などについてお話がありましたか?
お客さま: 特にありません。花粉症の薬は、緑内障の人は使えないのですか?
登録販売者: 一部のお薬には、緑内障を悪化させるリスクのある成分が入っています。ですが、使用可能なものもありますよ。花粉症のお薬には、大きく分けて飲み薬と点鼻薬がありますが、どちらかご希望はありますか?
お客さま: できれば飲み薬の方がよいですが、どちらでも構いません。
登録販売者: かしこまりました。眠くなりにくいお薬で、緑内障の方も服用可能と考えられるお薬がありますので、そちらが普段お使いのお薬と一緒に使えるかどうかを薬剤師に確認してまいります。
お客さま: お願いします。
薬剤師への確認が必要な理由について端的に伝えます。
【薬剤師への確認】
登録販売者: 〇〇さん、今お時間少々よろしいでしょうか?花粉症のお薬と医療用医薬品との併用についてお聞きしたいです。
薬剤師: もちろんです。どのようなことでしょうか?
お客さまの詳細について説明します。
登録販売者: 30代くらいの男性で鼻水の症状があります。花粉症と診断されていますが、セルフケアをご希望です。緑内障治療中とのことで、使ってはいけないと言われているお薬があるかどうか伺いましたが、特に何も言われていないそうです。おくすり手帳はこちらです。
薬剤師: 助かります。
具体的な案(商品)を伝えます。
【アレグラFXの成分】
フェキソフェナジン塩酸塩
【クラリチンEXの成分】
ロラタジン
登録販売者: 眠くなりにくい飲み薬をご希望なので、アレグラFXかクラリチンEXをお勧めしたいのですが、大丈夫でしょうか?
【フルナーゼ点鼻薬<季節性アレルギー専用>の成分】
フルチカゾンプロピオン酸エステル
薬剤師: 確認しますね。...特に問題なさそうなので、どちらのお薬でも大丈夫です。それと、まずは内服薬を試してみて、効果の面で不安があれば点鼻薬を検討するのもよいかもしれません。「フルナーゼ点鼻薬」であれば、緑内障の方も使用できる可能性があります。要指導医薬品ですので、その場合は薬剤師に相談してくださいね。
登録販売者: ありがとうございます。点鼻薬についても、お客さまにお伝えしてみます。
1.花粉症の薬
主な医薬品としては、内服薬とステロイド点鼻薬があります。
①内服薬
抗ヒスタミン成分のうち、抗コリン作用の強い成分は、緑内障の人は「相談すること」になっています。抗コリン作用の強い成分とは、ジフェンヒドラミン塩酸塩やクロルフェニラミンマレイン酸塩などの第一世代の抗ヒスタミン成分と、第二世代の抗ヒスタミン成分のメキタジンです。第二世代の抗ヒスタミン成分には、基本的に緑内障の人に関する注意書きがありませんが、メキタジンには強い抗コリン作用があるため、第一世代の抗ヒスタミン成分と同様、「相談すること」になっています。
ポイント
緑内障と診断されている人に対しては、メキタジン以外の第二世代の抗ヒスタミン成分を検討します。
小青竜湯は、漢方薬を希望されている方や、抗ヒスタミン成分による眠気が心配だという方、もしくは、鼻水だけでなく、咳や痰の症状も気になる方の選択肢になります。体が冷えて体内に余計な水が溜まると、鼻水や水様の痰などの症状として現れます。小青竜湯は体を温めて、水分代謝を上げる薬です。
ポイント
小青竜湯は、体の冷えがあり、鼻水や咳、痰などがある場合に検討します。
商品名 | 成分 | 概要 | 車の運転 | 緑内障 | |
---|---|---|---|---|---|
第二世代の抗ヒスタミン成分 | アレグラFX | フェキソフェナジン塩酸塩 |
|
〇 | 〇 |
クラリチンEX | ロラタジン |
|
〇 | 〇 | |
アレジオン20 | エピナスチン塩酸塩 |
|
✕ | 〇 | |
コンタック鼻炎Z | セチリジン塩酸塩 |
|
✕ | 〇 | |
漢方薬 | 小青竜湯 | マオウ、シャクヤク、カンキョウ、カンゾウ、ケイヒ、サイシン、ゴミシ、ハンゲ |
|
〇 | 〇 |
②ステロイド点鼻薬
花粉症に対しては、ステロイド点鼻薬もよい選択肢です。ステロイド点鼻薬は、くしゃみ、鼻水、鼻づまりに高い効果があり、点鼻ではステロイドとしての副作用もほとんどありません。内服薬と点鼻薬のどちらがよいかは、お客さまの好みで決めていただいて構いません。
なお、血管収縮成分の含まれた点鼻薬は即効性がある反面、使い続けることでかえって鼻炎を起こしやすくなることがあります。これは薬剤性鼻炎と呼ばれ、注意が必要です。従って、血管収縮成分の含まれた点鼻薬はどうしても必要な場合のみ使用し、連用は避けます。一方で、ステロイド点鼻薬にはそのような副作用はなく、適切な用法・用量で使用を続けることで薬効を発揮します。
ステロイド点鼻薬には、要指導医薬品と、指定第二類医薬品があります。指定第二類医薬品の「ベクロメタゾンプロピオン酸エステル」という成分は、緑内障の人の使用が禁止されています。緑内障の人で点鼻薬を希望されている場合は、要指導医薬品の「フルナーゼ点鼻薬」を検討します。要指導医薬品は薬剤師のみ販売可能な商品ですので、必要な場合は薬剤師や薬剤師のいる店舗をご案内してください。
ポイント
ステロイド点鼻薬は、指定第二類医薬品では様々な使用制限がありますが、花粉症にはよい選択肢です。
商品名 | 成分 | 概要 | 車の運転 | 緑内障 |
---|---|---|---|---|
フルナーゼ点鼻薬<季節性アレルギー専用> | フルチカゾンプロピオン酸エステル |
|
〇 | 〇 |
ナザールαAR0.1%C〈季節性アレルギー専用〉、パブロン鼻炎アタックJL〈季節性アレルギー専用 | ベクロメタゾンプロピオン酸エステル |
|
〇 | ✕ |
2.医療用医薬品を使用している場合の注意点
医療用医薬品を使用している場合、薬剤師に最終確認をしてください。この事例では薬剤師のいる店舗を想定して記載しましたが、薬剤師が常駐していない店舗では、かかりつけの薬局に相談していただくか、お薬手帳を持参の上、薬剤師のいる店舗や薬局に誘導してください。

執筆者:村松 早織(薬剤師・登録販売者講師)
株式会社東京マキア 代表取締役
登録販売者や受験生向けの講義を中心に事業を展開
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