【現役ドラッグストア店長直伝】登録販売者が知っておくべき汎用性の高い商品<登録販売者のキャリア>

皆さんは接客中にパニックに陥った経験はありますか?
「提案する商品がない」「何か紹介できそうだけど忘れてしまった」「持病があるから紹介する商品がない」など、とくに経験が浅い登録販売者には身に覚えがあるはずです。
今回は汎用性の高い商品を紹介しながらできるだけお客さまに満足していただける商品を紹介するとともに、そのような商品の探し方を考えていきましょう。
目次
禁忌の持病をお持ちのお客さまに紹介する商品はあるか?

お客さまとの接客でもっとも注意しなければいけないのが持病をお持ちのお客さまへの対応です。
ここで禁忌事項があるために何も提案できないのは店舗にとってもお客さまにとっても損害となります。
お客さまが選びやすい選択肢を提案できる準備をしておきましょう。
鼻詰まりのお客さまにお勧めできる商品群
鼻詰まりの効能効果があるのは鼻炎薬や点鼻薬ですが「高血圧・糖尿病・緑内障・甲状腺機能障害」などの禁忌が多く存在します。
第2世代と呼ばれている抗ヒスタミン薬なら禁忌を避けやすいのですが、効果が得られなかったからと敬遠されることも多いはずです。
ここで受診勧奨をおこなうこともあると思いますが、少しでも症状が緩和できるように市販の商品を提案してみましょう。
- ・鼻うがい
- 近年人気が高まってきた「鼻うがい」は使用感もよく、効果も実感しやすいうえに鼻腔内のケアにもなるためお勧めしやすい商品です。
また、詰め替えも販売されているので効果を実感されるとリピートしやすいのもポイントで、来店回数や買い上げ点数アップにもつながります。
禁忌ではないお客さまにとっても代替品ではなく、完全なプラスオンが狙える商品なので積極的に紹介しましょう。
しかし「鼻の中に液体を注ぎ込む」という行為に忌避感があるお客さまも多いので、実際に自身で使用してみると紹介しやすくなります。
ちなみにわたしは「鼻から入れて口から出す」ことができません。
しかし効果は実感できるので、こうした特徴なども使用したうえでの体験談を添えると分かりやすくなります。
- ・鼻詰まり塗布剤
- 主に小児用として利用される「塗る風邪薬」も鼻詰まりに有効です。
持病とも関係がなく、眠気もないため勉強・仕事・運転中にも使用可能なのでこれも積極的に利用したいところです。
昭和時代から販売されていますが主に子どもにしか使わないため、ほとんどのお客さまが「存在は知っているが忘れていた」商品です。
もちろんこれも持病などがない方でも他の薬と併用可能です。
このふたつの商品は便利なので覚えておきましょう。
咳のお客さまにお勧めできる商品群
咳止めは「濫用等のおそれのある医薬品」に該当する商品が多いため、接客機会が多い商品群でもあります。
例えば小児や依存性のある医薬品に忌避感をお持ちのお客さまに対してお勧めできるものは以下のような商品があります。
- ・純粋はちみつ
- ハチミツは民間療法のようにみえますが「咳」への効果があるといわれています。
実際に論文も存在しますし、効果も感じられるのでお勧めできる商品です。
Effect of honey, dextromethorphan, and no treatment on nocturnal cough and sleep quality for coughing children and their parents - PubMed
「効能効果がないのに伝えていいのか」と考える方もいると思いますが、これは後半で解説する「明らか食品」という定義があります。
また、論文もありますのでOTC(一般用医薬品)を使用できなかったり希望されないお客さまに対してお勧めしたり、OTC(一般用医薬品)との補強目的で紹介するのも有効です。
Effect of honey, dextromethorphan, and no treatment on nocturnal cough and sleep quality for coughing children and their parents - PubMed
ご存じの方も多いと思いますがハチミツは「1歳未満には禁忌」ですので、小児へのお勧めはせずに受診勧奨がベターです。
小児へは風邪薬も控えて受診を第一優先とするようお伝えしましょう。
自動車を運転するお客さまに紹介できる組み合わせ
最近大きな自動車事故の原因が市販風邪薬の可能性があるとの報道がありました。
登録販売者ならご存じでしょうが「風邪薬・鼻炎薬・解熱鎮痛剤・下痢止め」などのOTC(一般用医薬品)に禁忌事項にとして「機械類の運転操作」が入っているものが多数存在します。
このOTC(一般用医薬品)と自動車運転の関係は大きな問題と思われるにもかかわらず、一般的な認識として大きな問題となっていないのはもどかしく感じますが、もちろん接客時にお伝えすべき内容です。
とくに交通網が充実していない地方では移動手段が自動車しかない...といった事情もあるのですが、だからといって販売していい訳ではありません。
この場合、基本的な対応はお客さまに症状をお聞きし、「機械類の運転操作」が禁忌ではない商品と先ほど紹介した商品を併用することをお勧めするのがベストです。
この際に「症状と自動車事故」のどちらがデメリットが大きいかを説明すると理解してもらいやすくなります。
汎用性が高い商品は守備範囲が広い

実例をあげて紹介しましたが、汎用性が高くリスクが少ない商品は多彩な商品提案が可能なので把握しておきましょう。
ここが「登録販売者としての引き出しの多さ」となります。
大人でも使える小児向けの商品
小児向け商品は風邪薬などの「小児専用」を除けば「大人でも安心して使える商品」となります。
パッケージに惑わされないよう、店頭の小児向け商品を確認しておきましょう。
- ・皮膚薬
- 一見「赤ちゃん用皮膚薬」に見える皮膚薬も、大人が使用できるので汎用性が高い商品です。
お勧めポイントは以下の通りです。
- 優しい成分なので顔など身体のどこでも使える
- メントールが配合されていないので冷感が苦手な方にお勧め可能
- 使用感がよいので皮膚薬が苦手な方にもお勧め可能
汎用性が高いので常備薬にも使えます。
海外旅行の準備をしているお客さまにもお勧めできる商品です。
- ・整腸剤
- 整腸剤には3カ月から使用可能の商品もあります。
5歳以下でも使用可能な商品は錠剤ではなくほぼ粉剤なので、錠剤が苦手なお客さまには赤ちゃんのパッケージの商品もお勧め可能です。
- ・解熱鎮痛剤
- アセトアミノフェンのみとなりますが小児向けのものはアセトアミノフェン単剤で水無しで服用可能のものもあり、持病で風邪薬が使えなかったり錠剤が飲めないお客さまなどにお勧めしやすいのでお勧めです。
このような商品を常に頭の片隅に入れておくと、お客さまのシチュエーションに応じた商品提案が可能となります。
健康食品を補助として準備しておこう
健康食品の紹介が苦手な登録販売者も多いのではないでしょうか。
どこまで効能効果的な事例をいってもいいのか、迷ってしまううちに忌避感だけが積みあがってしまい苦手意識が大きくなってしまう...というパターンがもっとも多いはずです。
扱いにくい健康食品も、あくまで補助として考えると意外と商品提案として使えることが多いので紹介しておきましょう。
- ・ダイエット系
- もっとも提案しやすいのはダイエット系です。
医薬品だと漢方薬の防風通聖散がもっとも接客機会が多いのですが、この漢方薬は「実証」向けの漢方薬であり万人に有効な医薬品ではありません。
最近では要指導医薬品で「オルリスタット」を使用した商品もスイッチOTCとして市販化されましたがこれも購入条件が多々あるため断念される方も多く、第2類医薬品での防風通聖散を希望されるも「証」が合わずに困っているお客さまも多いためチャンスでもあります。
糖類や炭水化物をよく摂取する方には糖の吸収を阻害する「ファイバー系食物繊維」、脂質の多い食生活の方には「キトサン」などのサプリが豊富に存在します。
接客しながら紹介するとお客さまも「自分に合ったものを選んでくれた」と感じるため、購入に至る可能性が高いので覚えておきましょう。
- ・睡眠改善薬
- 抗ヒスタミン剤を使った睡眠改善薬は各社から販売されていますが、依存性もあり定期的に購入されるお客さまも多い商品です。
睡眠時間にもよりますが人によっては10時間以上も作用が続くことから、できれば「GABA」や「テアニン」などの睡眠系のサプリメントに切り替えた方がQOL向上につながる場合も多いので成分の違いを把握しておきましょう。
「明らか食品」を把握しておく
そして先ほど「はちみつ」を紹介した時にも触れましたが「明らか食品」も把握しておくべきです。
「明らか食品」とは「誰が見ても明らかに食品と認識できるもの」で、昔から食品として親しまれている野菜や果物などが該当します。
例えば「りんご」や「はちみつ」は明らかに食品ですが、「ルイボスティー」や「マヌカハニー」は明らかに食品といわれるまでには認知されていません。
また、明らか食品であっても「〇〇病に効く」など踏み込みすぎると健康増進法違反となるので注意が必要です。
店頭で「明らか食品」を活用するには以下のような場面が想定されます。
- 整腸剤の接客で「りんごは善玉菌を増やす働きがありますよ」
- むくみの漢方薬をお探しのお客さまに「バナナはむくみを改善できますよ」
- 玉ねぎのPOPに「血液サラサラ」
こうした「明らか食品」の特徴を抑えておくだけで接客の幅がグッと拡がります。
汎用性の高い商品を探すコツ

こうした汎用性の高い商品を覚えておくと「持病や禁忌」「濫用等のおそれのある医薬品」などにも対応できるばかりでなく、買い上げ点数にも貢献可能です。
ではどうしたら汎用性の高い商品をみつけられるのでしょうか。
思考をいったんリセットしよう
わたし達は先入観があるためお客さまの症状を医薬品で解決しようとしがちです。
また会社の推奨品や人気商品の印象も強いため、視野が狭くなってしまう方も多いはずです。
ですが先入観や義務感での販売はお客さまのQOL向上どころか逆に下げてしまうおそれもあるのです。
わたしは毎回おこなっていますが、お客さまとの接客の中で最初に提案候補として出てきた商品は保留にして店内商品から探してみましょう。
この作業をおこなうことで自身の中に「汎用性の高い商品」が蓄積されていくのです。
ではその探し方や考え方をみてみましょう。
「単剤」を把握しておこう
医薬品で探すとほとんどが複数の成分から構成される「合剤」で構成されており、これがリスクの原因となります。
リスクの排除という観点から考えると、どれだけ「単剤」の商品を把握しているかが商品提案の肝となるのです。
風邪薬の接客なら「解熱鎮痛剤」や「咳止め」の単剤は把握しておくべきですし、胃薬などほとんど合剤の商品しかないジャンルでもできるだけ成分が少ないものを把握しておきましょう。
当然風邪など複数の症状が現れた時に、それぞれの症状を別々の単剤で抑えようとすると症状の数だけ商品が必要となり購入金額も上がることとなります。
このためお客さまの判断を待つことになりますが、できるだけリスクの少ない商品を提案しお客さまのQOL向上のための提案をおこなうことは登録販売者の責務でもあるので、代表的な商品は把握しておきましょう。
視野を広く持とう
こうした考え方は商品をしっかりと成分単位で考えられているかがポイントです。
そして店舗全体の商品の特徴を把握することも重要です。
「〇〇なら△△」のような安易な決めつけをするとお客さまの健康リスク増加につながりかねませんし、QOL向上にもなりません。
医薬品から健康食品、時には食品や化粧品まで商品の特徴を押さえつつお客さまに提案するのがベストです。
効能効果が広い商品や、非医薬品の商品は汎用性が高いのでお客さまのためにも把握してください。
とくに経験の浅い登録販売者は覚えることが多く大変でしょうが、今回お話した内容を理解し実践できれば接客の幅は大きく向上します。
お客さま満足度と店舗の利益を向上させることで、自身の登録販売者としての価値を高めていきましょう!

執筆者:ケイタ店長(登録販売者)
ドラッグストア勤務歴20年、一部上場企業2社で合計15年の店長経験を活かし、X(旧Twitter)などで登録販売者へのアドバイスや一般の方への生活改善情報の発信を行っている。X(旧Twitter)フォロワー数約5,000人。
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