OTC類似薬保険見直しの波をチャンスに変える登録販売者の戦略
はじめに
2026年度、日本の医療制度は「何でも保険で安く受診できる」時代から、セルフケア・セルフメディケーションを前提とした新しい段階へと進もうとしています。風邪薬や胃腸薬など、これまで医療機関で安価に処方されてきた「OTC類似薬」について、患者負担を引き上げる改革が本格的に始まります。
この変化は、単に「薬代が高くなる」という話にとどまりません。ドラッグストアや薬局の最前線に立つ登録販売者にとっては、「国民のセルフメディケーションを支えるプロフェッショナル」として職能を拡大し、自らの価値を再定義する絶好のチャンスでもあります。
本コラムでは、医薬研究事業に携わってきた医薬ジャーナリストとして、 OTC類似薬の保険給付見直しの背景と今後のロードマップを整理しつつ、登録販売者がこれからの数年で何を学び、どのような行動を取るべきかを考えていきます。
目次
- 1.2026年度OTC類似薬見直し:登録販売者の転機
- 2.OTC類似薬保険外療養とは?2026年負担増の全貌
- 3.OTC類似薬の保険適用除外は古くて新しい問題
- 4.登録販売者が主役となる「セルフメディケーション」の新時代
- 5.登録販売者職能拡大:セルフメディケーションの主役へ
- 6.OTC類似薬改革後:登録販売者が導く医療の未来
1. 2026年度OTC類似薬見直し:登録販売者の転機
社会保険料の増大が社会問題化しています。現在、我が国の社会保障制度は、少子高齢化の進展に伴い、かつてない持続可能性の危機に直面しています。こうした中、昨年、自民・維新の両党合意に基づき、厚生労働省は2025年12月25日の社会保障審議会において、77成分に及ぶ「OTC類似薬」の保険給付見直し案を提示、同審議会の医療保険部会の了承を得ました。
健康保険法改正案の提出と実施スケジュール
これにより2026年3月上旬には健康保険法の一部改正案が国会に提出される予定で、2026年度中の実施が確実視されています(2027年3月実施予定)。この変革は、単なる財政調整だけの問題ではありません。将来的にはOTC薬市場にも大きな影響を与えるものです。何よりほとんどのOTC薬を販売している登録販売者にとっては、まさに「国民のセルフメディケーションを支えるプロフェッショナル」として、職能・職域を拡大し、その社会的地位を確立するための絶好の制度改正だといえます。
2.OTC類似薬保険外療養とは?2026年負担増の全貌
今回の見直しは、OTC薬として市販されている成分と同様の処方薬に対し、薬価の4分の1相当を患者の自己負担(一部保険外療養)とする仕組みです。具体的な徴収方法、消費税の有無等については今後、法律が改正される中で決められてくる予定です。しかし、議論の本質はさらにその先にあります。
OTC類似薬の保険適用根底議論
そもそも論ですが、本来はOTC薬としてドラッグストアなどで販売されている風邪や軽微な不調に対するOTC類似薬は、「保険給付の対象外」とすべきではないか、という議論が根底にあります。それは同じ医薬品を服用するにあたり、医療機関を受診した場合と、OTC薬を購入する場合とでは、その負担額に大きな違いがあり、「保険給付の公平性」の視点で見ると、両者には激しい格差があるという問題です。
今回の措置は、将来的な「保険適用除外」に向けた大きな布石という位置づけにはなりますが、2026年度、2027年度にかけては大きな変化はないと思われます。ただし、自民党、維新の政調会長間合意事項の中では、早くも令和9年度以降に77成分の対象範囲を拡大し、あわせて特別料金の引き上げについても検討すると明記されています。「何でも保険で安く手に入る」というこれまでの常識が、今まさに終わりを告げようとしています。
高齢者医療費無料化政策の理想像
保険医療の理想は昭和48年から昭和58年まで続いた「高齢者の医療費無料化」政策だという話があります。しかし無料で入院できたために、入院に伴う食事代、宿泊代、光熱費代等もタダになり、「社会的入院」という大きな問題が起こりました。確かに医療が無料であるのは理想ではありますが、その一方で日本の国民の心の中に大きな負の遺産をかかえ、その後の医療保険制度に大きな禍根を残してしまったのも事実です。
3.OTC類似薬の保険適用除外は古くて新しい問題
これまでもOTC類似薬を保険適用から除外するという話は、医療用漢方薬の薬価収載を巡って古くから論議されてきました。極論すれば昭和51年に医療用漢方薬が一挙に保険適用されましたが、その時から医療用漢方薬に対する行政と業界団体との確執があったのは関係者の中では周知の事実です。当時は医師会と厚生省との確執がよく取り上げられましたが、いずれにせよ昭和51年を境にして、OTC漢方薬は大きく衰退しました。
それに対して医療用漢方薬は拡大の一途で、直近の2024(令和6)年度の薬事工業生産動態統計調査(厚生労働省)では医療用漢方薬2,000億円超に達し、OTC漢方薬は500億円台と低迷しています。それと同時に漢方相談薬局・薬店などにいたOTC漢方薬販売のプロフェッションの数も激減したのは確かです。
これまでの経緯として図表-1に過去の保険給付の見直しについて示しました。図表-2には「OTC類似薬の保険給付見直しのロードマップ(イメージ)」を示しました。
これまでもビタミン剤をはじめ湿布剤などが適正使用の観点から保険給付の見直しが行われてきましたが、関係団体等の反対も激しく、OTC薬市場が拡大するところまでには至っていません。
図表-1 過去の保険給付の見直し
(適正使用の観点から保険除外)
- 単なる栄養補給目的のビタミン製剤の投与(2012年度)
- 治療目的以外のうがい薬単体の投与(2014年度)
- 必要性のない70枚超の湿布薬の投与(2016年度)
- 必要性のない63枚超の湿布薬の投与(2022年度)
財務省:財政制度等審議会の「令和8年度予算の編成等に関する建議」
(令和7年12月2日)より
図表-1 OTC類似薬の保険給付見直しのロードマップ(イメージ)
| 段階 | 時期 | 内容 | 目的とする登録販売者の役割 |
|---|---|---|---|
| 第1段階(現行) | 2024年〜 | 湿布剤等の枚数制限、一部自己負担適用 | 適切な受診勧奨と市販薬への橋渡し |
| 第2段階(変革期) | 2026年度中 | 77成分の選定療養導入 (薬価の1/4負担) |
情報提供の強化、セルフメディケーション相談 |
| 第3段階(将来像) | 未定 | 保険給付からの完全除外 (市販薬への移行) |
地域の健康拠点としての職能確立・職域拡大 |
4.登録販売者が主役となる「セルフメディケーション」の新時代
OTC類似薬の保険給付見直しは「薬代が高くなる」という批判があるかもしれません。しかし、医療費が極めて安価、あるいは無料であることが、結果として国民の「不養生」や「安易な受診」を招いてきた過去の側面も否定できません。
「薬は価値ある資源である」という意識が芽生えることで、国民は初めて「自分の健康は自分で守る」というセルフケアの主体性を持つようになります。ここで、私たち登録販売者の出番です。
- ①専門的アドバイスによる信頼構築
成分の重複や副作用をチェックし、最適なOTC薬を提案する。 - ②トリアージの担い手
軽症であればOTC薬を、受診が必要であれば医療機関を。この判断こそが、登録販売者の専門性です。 - ③健康寿命の延伸への寄与:予防意識を高めることで、結果として重症化を防ぎ、国民全体の健康寿命を延ばす。
いずれ医療用漢方薬の保険適用除外も避けられないと予測されます。これまでの歴史的経緯を踏まえると、本来であれば「漢方薬のセルフメディケーション化に関する専門部会」などを行政と民間で立ち上げ、登録販売者向けの「漢方選定マスター講座」などの推進が求められるところです。単に保険適用除外を闇雲に進めるのではなく、現実的な問題として、セルフケア・セルフメディケーションの受皿の専門家育成を並行して行わないと、負担を被るのは国民に集中することになりかねません。
5.登録販売者職能拡大:セルフメディケーションの主役へ
OTC類似薬が保険から除外される範囲が広がれば広がるほど、ドラッグストアや薬局の店頭は、医療の「入り口」としての機能を強めます。医師の処方箋を待つのではなく、国民が自らの意思で登録販売者に相談し、最適な薬を選択する。このサイクルが確立されたとき、登録販売者の職能は「販売員」から「未病・予防のカウンセラー」へと昇華します。そのための主な項目の以下に紹介します。
- とにかく軽微な身体の不調は保険制度を見直し、公的財源の負担増を回避する。
- 自己負担の増加を回避するために、日頃の健康意識、セルフケア・セルフメディケーション意識を高める。
- そのために登録販売者はセルフケア・セルフメディケーション推進を支援できる専門的指導スキルをアップさせ、国民が安心してセルフケア・セルフメディケーション推進に取組める体制を整備する。
- 必要に応じた受診勧奨体制は不可欠、そのために国民のセルフケア、ヘルスリテラシー意識の向上、引いては医療資源の適正配分につなげる。
- 結果的に持続可能な社会保障制度を達成する。
6.OTC類似薬改革後:登録販売者が導く医療の未来
「医療費が無料」であることは一見理想的に見えますが、それが医療制度の崩壊を招き、逆に国民の健康意識、セルフケア・セルフメディケーション、ヘルスリテラシー意識を損ねる方向につながるだけでなく、次世代に負担を押し付けることにもつながります。それは真の理想とは言えません。
登録販売者は今回の保険給付見直しを機に、国民の意識改革をサポートする先頭に立つ覚悟が必要だと思います。まさに「立ち上がれ登録販売者」という思いです。令和6年度衛生行政報告例によれば登録販売者数は30万人を突破しました。これだけの登録販売者が立ち上がれば日本の将来は明るいといえます。登録販売者は単なる「箱」としての薬を販売しているのではなく、国民が自律して健康に生きるための「知恵」と「安心」を提供する専門家になるべきです。まずはアポプラス登販ナビ(https://www.touhan-navi.com)に登録して、あなたのキャリアを次のステージへ。保険制度の変化を「負担増」だけで終わらせず、地域の健康拠点として輝く未来を共に築きましょう。
著者情報:医薬ジャーナリスト 柴田 龍
プロフィール
1982年、医薬専門誌・紙企業に勤務、厚労省記者クラブ、医療分野の記者を経て、1998年、団体職員に転向、以後、医薬関係団体等の理事を務め、厚生労働省の検討会委員、厚生労働科学研究・医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業、スイッチOTC医薬品関連に関する研究などの研究協力員および作業チームに参加、現在に至る。
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