【登販向けに解説】ドラッグストア業界の将来展望と企業の成長戦略をチェック!

こんにちは、登録販売者転職のアポプラス登販ナビライターチームです。
ドラッグストア業界はここ数年で急速に成長しています。ドラッグストアと聞くと、医薬品と化粧品など、健康と美容に関する商品が多いイメージをもつ人も多いでしょう。しかし、ドラッグストアは生活雑貨やペット用品、食品まで幅広いジャンルを取り扱っており、スーパーマーケットやコンビニエンスストアとの競争も激化しています。
その結果、たくさんの課題が浮き彫りになっているのが現状です。そんなドラッグストア業界は、今後どのように成長していくのでしょうか。
本記事では、ドラッグストア業界の課題に対する企業の成長戦略と将来展望について解説します。業界の現状を理解したうえで、明るい未来に発展させるための知識を深めましょう。
目次
- ・ドラッグストアの特徴
- ・ドラッグストア業界の現状
- ・ドラッグストア業界における課題と企業の成長戦略
- ・ドラッグストア業界の将来展望
- ・ドラッグストア業界はM&Aが進展している
- ・まとめ|ドラッグストア業界は地域住民のライフラインとして重要
ドラッグストアの特徴

お客さまにとってライフラインとなりつつあるドラッグストアですが、業界をさらに成長させるためには、業界の特徴をつかんでおくことが重要です。
ドラッグストアの特徴は大きくわけて4つあります。ドラッグストアの業界情報を知り、今後のキャリアアップや転職活動に活かしていきましょう。
政策の影響を大きく受ける規制産業
ドラッグストアがメインで取り扱っている製品は医薬品です。しかし、医薬品の販売は薬機法による規制を受けるため、政府の取り決めによる影響を受けやすいのが特徴です。
薬機法は国の医療もしくは福祉政策により定期的に改正が実施されます。そのため、改正内容によってはドラッグストアの収益に大きな影響をおよぼす可能性があるのです。
立地や商圏の影響を大きく受ける
ドラッグストアの収益は、立地や商圏の影響を受けやすいという特徴があります。商圏の規模やアクセスのしやすさ、周囲に競合店舗があるかなどの条件によって売上が左右されるのです。また、メインターゲットとなる年代によって売れやすい商品も大きく異なります。
そのため、地域の特性やターゲット層の属性をふまえた品揃えやサービス展開が求められるのです。
特定の地域での大量出店が有効なケースがある
特定の商圏内に店舗を大量出店し、シェアを拡大させる出店戦略のことを「ドミナント戦略」といいます。この出店戦略は、商圏内の空白が同一店舗で埋まるため、他社との競争に打ち勝ちたいときにも有効な戦略です。
たとえば、同じコンビニエンスストアが近くにいくつもあるのはドミナント戦略である可能性が高いといえます。こうして地域での知名度をあげて、シェア拡大を狙っているのです。
立地や商圏の影響を受けやすいドラッグストア業界では、ドミナント戦略が有効であるといわれます。ドミナント戦略が成功すると、下記のようなメリットがあります。
- 顧客認知度がアップする
- 競合店が参入しにくくなる
- 広告宣伝を効率的にできる
- 配送センターの運用を効率的にできる
ただし、よい影響だけではなく、悪い影響も受ける可能性があるため、注意しましょう。ドミナント戦略は、出店地域の環境に大きく影響されるため、地域の人口減少により売上が減少したり、地域外への出店拡大が難しかったりと、悪い影響を受ける可能性もあります。
規模の効果が非常に高い
ドラッグストア業界では、店舗数が増えて市場規模が拡大すると、享受できる効果が格段に高くなるという特徴もあります。
規模が拡大すると、それだけ取り扱う金額も大きくなるため、仕入れ先への交渉力もあがります。すると、単価や仕入れ量などの融通が利きやすくなるのです。
大規模企業ともなると、プライベートブランド(PB)の開発に乗り出したり、他社へPBを提供したりと、さらなる収益の向上も見込めます。
ドラッグストア業界の現状

ドラッグストアは、薬機法の規制緩和や2020年のコロナ禍での巣ごもり需要から収益がアップするなど、大きな成長を遂げ続けています。また、近年ではビジネスモデルが変化しつつあるのが現状です。
医薬品や化粧品ではなく食品の売上がトップになるケースもあるため、ドラッグストアは単なる薬局というよりは、お客さまのライフラインなのかもしれません。
ワンストップタイプのドラッグストアの増加
近年は、ワンストップタイプのドラッグストアが増えてきています。これは、医薬品だけではなく、化粧品や日用品、食品などをまとめて1カ所で購入したいというニーズを反映したものです。こうした店舗形態は、買い物の効率アップやお客さまの満足度アップなどに貢献しています。
また、ほとんどのドラッグストアには調剤薬局が併設されており、利便性がさらに向上しています。これに加え、夜間や土日・祝日でも処方せんを受け付ける店舗もあるため、お客さまのニーズに応えることでその店舗数を伸ばしているのです。
競争の激化
ワンストップタイプのドラッグストアが増加したことで、コンビニエンスストアやECサイトとの競争が激化しています。とくに、コンビニエンスストアでOTC(一般用医薬品)販売が解禁されたことは、ドラッグストアにとって大きな痛手といえるでしょう。
そのうえ、ECサイトが成長したことで、ドラッグストアで購入できる商品をオンラインでまとめて購入する人が増加し、ドラッグストアの売上に影響を与えています。
OMO戦略の推進
競争が激化している中、ドラッグストアはお客さまの利便性を高める取り組みが求められています。なかでも今注目されている取り組みが「OMO戦略」です。「OMO戦略」とは「Online Merges with Offline」の略で、オンラインとオフラインの融合を意味しています。
ドラッグストアでいうと、オンラインで情報収集や注文をし、店舗で商品を受け取る仕組みです。OMO戦略により、ドラッグストアはデジタル化が進んでおり、それに伴いオンラインでの購入を促進することが求められています。
企業同士の提携・合併
コンビニエンスストアやECサイトとの競争に打ち勝つために、企業同士の提携や合併も積極的におこなわれています。2021年にはマツモトキヨシとココカラファインが経営統合し、大きな話題となりました。このように、激しい競争に勝つための生き残り戦略が顕著に表れつつあるのが現状です。
そして、今後も合併をはじめとする企業の再編や立て直しが続いていくと予想されており、業界の内部が大きく変わる可能性があります。以下のコラムでも最新動向を紹介しているため、あわせて参考にしてください。
ドラッグストア業界における課題と企業の成長戦略

近年ドラッグストア業界は成長を続けていますが、同時にいくつかの課題に直面しています。ここでは、今後の課題とそれに対応する企業の取り組みについて解説します。
AI技術の強化
現在、ドラッグストアでは人手不足が続いています。原因としては、業務が多いことによる離職者の増加や、店舗数の増加、人件費削減だといわれています。そこで注目されているのがAI技術の強化です。AI技術を活用することで、在庫管理やお客さまの健康管理を効率化でき、人手不足を補えます。
ウエルシア薬局株式会社は、顧客が商品に関するアイデアやリクエストを投稿できる「からだの声とくらしの声」というページを設置しています。2024年には、より効率的に顧客の声に答えるため、NEL株式会社が提供するサービスである「カスタマーAI」を導入し、「からだの声とくらしの声」に関する工数の90%を削減しました。
また、サイバーエージェントの連結子会社であるMG-DXは、2024年8月から、ドラッグストア・調剤薬局向けに「遠隔接客AIアシスタント」の提供を開始しました。「遠隔接客AIアシスタント」はAI技術を活用した受付業務の自動化と、薬剤師が遠隔地から接客できる仕組みを組み合わせ、店舗での接客をサポートするサービスです。
今後AI技術を導入するドラッグストアが増加すると、人手不足とそれに伴う労働環境の悪化が改善することが見込まれます。
参考:PR TIMES「ウエルシア薬局がAIで顧客ニーズを汲み取り改善するNEL社の新サービス「カスタマーAI」を導入」
参考:DIAMOND Chain Store online「ドラッグストア業界のDXの現況は?後編 「薬急便 遠隔接客AIアシスタント」の提供を開始」
健康サポート機能の向上
ドラッグストアは、地域住民の健康維持や健康増進の役割も担っています。コンビニエンスストアやECサイトとの激しい競争を勝ち抜くためには、専門家が常駐するドラッグストアならではの健康サポート機能のさらなる向上が求められるでしょう。
スギ薬局は、健康なときの疾病予防や啓発、さらには介護・終末期の生活支援に至るまで、人の健康をトータルに支える「トータルヘルスケア戦略」を掲げています。健康状態やライフステージにかかわらず、どんなときでも頼りにしてもらえるドラッグストアを目指しているのです。
そのための施策の一つとして、管理栄養士のいる店舗で無料の「健康相談会」を実施しています。問診、体重・筋肉量・体脂肪・血圧などの測定、結果説明を通して、管理栄養士から健康維持のためのアドバイスがもらえるサービスです。病院と比べてささいな不調も気軽に相談でき、より身近な健康のサポーターとしての役割を果たしています。
参考:日経Biz Gate「生涯にわたって健康を支えるドラッグストアへスギ薬局代表 杉浦克典氏が語る
参考:スギ薬局「健康相談会」
地域社会への支援
地域住民からのリピート利用が売上の多くを占めるドラッグストアにとって、競争に勝ち売上を安定させるには、地域からの信頼を確保することが重要です。そのため、今後、ドラッグストア業界には地域社会への支援を強化していくことが求められるでしょう。
九州地方を中心に店舗を展開するドラッグストアモリは、地域のマラソン大会のスポンサーやお祭りへの出店、学校での講演活動など、地域・社会に貢献する活動を幅広くおこなっています。
そのほかにも、高齢者の見守り体制の強化や災害時の物資支援など地域住民の生活を支えていくことで、地域に根ざした存在になることが求められています。
ドラッグストア業界の将来展望

さまざまな課題を抱えているドラッグストア業界ですが、今後はどのように進展していくのでしょうか。ドラッグストア業界の将来展望について解説します。
また、登録販売者としての就職先にドラッグストアを選ぼうか迷っている方は、以下のコラムもご参考ください。
【登販】ドラッグストアはやめたほうがいい?懸念点や対策を解説
業界規模の大幅な拡大
ドラッグストア業界の市場は現在拡大し続けていますが、今後もこの傾向は続くことが予測されています。
日本チェーンドラッグストア協会の発表によると、2030年までに全国ドラッグストアの総売上高は13兆円(2022年比152%)、店舗総数は3万5,000店(同161%)となることが予測されています。
参考:ヘルスビジネスオンライン「2030年 売上13兆円産業へ/JACDS」
セルフメディケーションの推進
先述したようにドラッグストア業界の規模が今後も拡大すると予測されている背景には、「セルフメディケーション」の推進があります。WHOの定義によると、セルフメディケーションとは「自分自身の健康に責任をもち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」です。
日本では高齢化が進んでおり、それに伴い増加する医療費が国の財政を圧迫しています。その中で、一人ひとりが「自分の体は自分で守る」との意識のもと、処方せんを使わずOTC(一般用医薬品)を活用しながら不調に対応することが推進されているのです。
セルフメディケーションの推進に伴い、ドラッグストアにおけるOTC(一般用医薬品)の売上は増加していくと予測されています。また、登録販売者や薬剤師には、お客さまが適切なOTC(一般用医薬品)を購入できるように専門家の立場からアドバイスをし、必要に応じて受診勧奨をおこなうことがいっそう求められるようになるでしょう。
参考:厚生労働省「セルフケア・セルフメディケーションの推進」
OTC(一般用医薬品)のオンライン販売率の増加
OTC(一般用医薬品)のオンライン販売率は、今後増加していくとの予測がされています。
2023年にオンライン販売されたOTC(一般用医薬品)の売上は904億円で、これはOTC(一般用医薬品)の売上全体の6.9%です。2029年のオンラインでの売上は2023年比で24.6%増加すると見込まれており、オンライン販売率も1.2ポイント増加するとされています。
また、2024年には、現行は対面販売のみであった要指導医薬品についても、オンラインでの服薬指導・販売を認める方針が発表されました。このことも、OTC(一般用医薬品)のオンライン販売を拡大させる一つの要因になるでしょう。
参考:Fuji Keizai Group「市販薬EC市場(小売りベース)を調査」
参考:厚生科学審議会 医薬品医療機器制度部会「薬機法等制度改正に関するとりまとめ」
DXの推進
DXとは、デジタル技術を業務に取り入れて効率化や自動化を図ることです。DXは現在さまざまな業界において推進されていますが、ドラッグストア業界においても今後推進されていくことが予測されます。
すでにツルハグループは、独自のキャッシュレス決済サービスを導入したり、スマホアプリを活用してお客さま一人ひとりにあわせた商品を提案したりするなど、積極的にDXを推進しています。
変化する消費者のニーズに応えられるだけでなく、人件費を抑えたり人手不足を解消したりするためにも効果的であるため、今後DXを推進する企業はますます増えることが予測されているのです。
参考:ツルハホールディングス「ツルハグループのデジタル戦略」
地域包括ケアシステム
地域包括ケアシステムとは、介護が必要な状態となっても、可能な限り住み慣れた地域で自分らしく暮らせるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体となって支援・サービスを提供する体制のことを指します。
団塊の世代が75歳以上となる2025年以降は、医療や介護の需要がより高まることが見込まれており、地域包括ケアシステムの構築がより重要な課題となっています。
ドラッグストア業界もこのシステムの一翼を担い、年を重ねても生き生きとした生活を送るために、より地域に根ざした店舗づくりをしていかなくてはなりません。高齢者の健康を守る拠点として、健康サポート管理を強化していくことが求められます。
ドラッグストア業界はM&Aが進展している

ドラッグストア業界では、企業の成長戦略の一つとしてM&A(合併・買収)が進展しています。これは、市場競争の激化や経済規模を追求する動きが顕著になってきているためです。
たとえば、マツモトキヨシグループがケイポートを買収したり、スギホールディングスがI&Hを買収したりするなど、M&Aが活発化しています。
M&Aの目的は、競争力強化や地域戦略の強化、経営効率化です。これは、一見すると業界の将来性を示しているように感じますが、中小企業にとっては生き残りをかけた戦略的な判断が求められる危機的状況かもしれません。
参考:株式会社マツキヨココカラ&カンパニー「株式会社ケイポートの株式取得(子会社化)に関するお知らせ」
参考:スギホールディングス株式会社「I&H 株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」
まとめ|ドラッグストア業界は地域住民のライフラインとして重要
ドラッグストア業界は今後も成長が続くと予測されていますが、競争の激化が進んでいるのが現状です。また、お客さまのニーズが多様化する中で業務も膨大になり、人手不足が深刻な課題となっています。
こうした背景から、地域への貢献のための事業を推進して信頼を得たり、デジタル技術を取り入れて業務を効率化させたりする企業が増えています。今後は、単に医薬品を販売するだけでなく、地域の健康活動の拠点となり、住民のライフラインの一翼を担う役割が求められるでしょう。
本記事で紹介した業界の課題や各企業の取り組みを、転職先選びや業界研究にぜひお役立てください。
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