【現役ドラッグストア店長直伝】登録販売者が最初にマスターすべき漢方薬3選と接客のコツ<登録販売者のキャリア>
すっかり涼しくなりドラッグストアの店内も秋冬商品に変更になりました。
体調を崩されてドラッグストアに来店されるお客さまも多いはずです。
こうした環境や季節の変化などに対応できるのが漢方薬です。
以前と比べて科学的なエビデンスが増加しており、近年は医療用漢方薬の処方も増加しています。
しかし漢方薬は独特な仕組みと効能効果のため、「成分が漢字ばかりで覚えにくい」「結局、何に一番効くのか分かりにくい」「お客さまへの提案の仕方が分からない」といった苦手意識を持つ登録販売者が多いのが現状です。
まず必要なのは漢方薬に慣れることです。今回は「おすすめしやすい漢方薬3選」を解説し、あなたの苦手意識を自身に変えるきっかけを提供します。
漢方薬を少しずつ覚えていくことで登録販売者としてのスキルを高めることにも繋がります。
まずは今回のコラムを参考に、得意な漢方薬を一つずつ増やしていきましょう。
目次
- ●登録販売者が知っておくべき漢方薬は難しいと感じる理由と注意点
- ●登録販売者が最初にマスターするべき漢方薬3選
- ●登録販売者の接客に活かせる漢方薬の提案トーク術
- ●登録販売者が覚えておくべき漢方薬3選・まとめ
登録販売者が知っておくべき漢方薬は難しいと感じる理由と注意点
登録販売者に聞くと、漢方薬は試験も接客も難しく「とっつきにくい...」という声を多く聞きます。
確かに一般的な市販薬と比べると全く理屈が違うので難しく感じてしまいがちですが、得意な漢方薬をつくることで心理的なハードルはぐっと下がります。
まずは自身の漢方薬理解のネックと、人気の漢方薬について考えてみましょう。
漢方薬がとっつきにくい理由
漢方薬がとっつきにくい、苦手と感じてしまう理由はいくつかあります。
わたしが店舗の登録販売者に聞くと次のような声がありました。
- 漢字ばかりで覚えにくい
- 効能が幅広くてよく分からない
- お客さまの「証」がわからない
皆さんもこれらの声には共感できるのではないでしょうか。
一般の市販薬は「販売の訴求ポイント」つまり売るための「セールスポイント」があるのですが、漢方薬にはそれがありません。
また成分も生薬ばかりで覚えにくく、さらに体質である「証」が合っていないと効かない...
これらのハードルは登録販売者にとって非常に高く、漢方薬に苦手意識を持ってしまい接客機会を避けてしまい、チャンスを逃しているケースが多く見られます。
わたしは過去に所属した店舗で今回とりあげる「おすすめしやすい漢方薬」の接客方法を登録販売者に教えています。
漢方の「とっつきにくい」と感じる原因をできるだけ取り除いて、覚えやすいものから始めましょう。まずは最初のハードルをクリアすることが、スムーズな学びへの第一歩です。
間違うと悪化することもある
漢方薬は体質に合えば優れた効果が期待できますが、選び方や使い方を間違うとかえって症状の悪化を招くことがあります。
お客さまの中には「漢方薬は弱い」「漢方薬は続けないと効かない」という誤った認識の方もいるため、健康被害が出る可能性もあります。
漢方薬の中には効果が早く出るタイプもあるため、そうした漢方薬を連用するとむくみや血圧上昇、筋力の低下などの不調につながることがあります。
甘草や麻黄のリスクなどは登録販売者試験でも出題されたと思います。
漢方薬で健康被害が起こる原因のひとつがお客さまの理解不足にある場合もあります。そのため、接客時には副作用などのリスクもしっかりと伝えるようにしましょう。
「漢方薬は安全で副作用がない」と勘違いしているお客さまは思いのほか多く、妊婦でも服用可能と考えている場合もあるので、他の市販薬と同様に必ず「服用する人」は誰なのか?ということを確認しましょう。
また高齢の方や妊娠中、持病や服用薬がある方には、必ず医師への確認を推奨してください。
葛根湯の落とし穴
葛根湯は国民的な漢方ですが、実は万人向けではありません。
体力が充実していて汗がまだ出ていない風邪の初期段階、特に寒気が強く首や肩がこわばる症状がある方に使われる処方です。
ポイントは麻黄と発汗で、麻黄(生薬の一種)には交感神経を高めて体を温め、汗を出して押し切る力があります。
体力がある人には効果的ですが、虚証(体力、気力、抵抗力が低下し、身体の機能が不足している状態)の人はエネルギーも水分も不足気味であり、無理に汗を出すとさらに消耗し、だるさや食欲低下、めまいなどが現れることがあります。
高齢者は特に注意が必要で、加齢で虚証に傾きやすく、麻黄による血圧上昇や動悸、前立腺肥大のある男性では尿が出にくくなるなどのリスクがあります。
甘草を含むため長く多く飲むと偽アルドステロン症によりむくみや血圧上昇、脱力が出ることもあります。
高齢者の中には風邪予防に葛根湯を毎日飲む方もいらっしゃいます。
しかし、「毎日身体を温めるものを飲む」という習慣になっている場合は、葛根湯の副作用リスクをきちんとお伝えしたうえで身体が温まる実感が得られる「生姜湯」などの代替品を紹介することをおすすめします。
葛根湯は体を温め血行を促進する効果がありますが、高齢者には負担になることもあるため注意が必要です。
これから秋冬を迎えると葛根湯の販売数が大きく伸びるため、リスクについて再確認しておきましょう。
参考:
麻黄とは(Wikipedia)
甘草とは(Wikipedia)
登録販売者が最初にマスターするべき漢方薬3選
ではここから登録販売者が覚えておくべき漢方薬を3種類紹介します。
どれも紹介する機会が多く、難しい「証」を問わずどんな体質のお客さまにも早く効果が現れる漢方薬です。
接客の頻度が高いため経験を積みやすく、スキルアップに最適です。
水分バランスのくずれに...五苓散
五苓散は「水」のめぐりを整える代表的な漢方薬です。
体力有無に関わらず使いやすく、天気や気圧で悪化する頭痛、めまい、吐き気、むくみ、水っぽい下痢、二日酔いで喉が渇く、暑気あたりといった症状に効果的です。
暑気あたりや二日酔い、気圧の変化での需要があることからも分かりますが、年間通じて対応できる漢方薬です。
体内の水分の出入りを調整し、余分な水分があれば体外へ排出し、不足している場合は水分を保持する方向へ働くと考えられております。このため「水」のバランスが崩れることによるさまざまな不調に幅広く対応しやすいのが特長です。
天気頭痛は気圧低下のサインが出たら早めに服用するのが有効のため、天気予報をこまめにチェックしたり気圧関係のアプリを使うなどの対策を提案してください。
頭痛には「片頭痛」と「緊張型頭痛」という2大タイプがありますが、五苓散はどちらにも効果があるとされています。
片頭痛には「呉茱萸湯(虚証~体力中等度)」、緊張型頭痛には「葛根湯(体力中等度~実証)」が有効なので、これらの漢方薬の「証」がお客さまと合わなかったら選択肢に入れてください。
二日酔いは水分補給も大切なため、飲酒中も含めて水分補給は積極的にするようにお伝えしましょう。
顆粒剤は2歳から、錠剤は5歳から使用でき、幅広い年代の方に使いやすい漢方薬です。
常備薬として手元に置いておくと、いざという時にすぐに使えてとても便利です。
ぜひ積極的にお客さまに紹介できるよう、しっかり覚えておきましょう。
急な筋肉のけいれんに...芍薬甘草湯
芍薬甘草湯は「芍薬」と「甘草」の2つだけでできたシンプルな漢方薬で、筋肉の急なけいれんを素早くゆるめる働きがあります。
ギュッと差し込むような筋肉痛や、筋肉が痙攣した時に効果的な誰でも使える漢方薬です。
類似する薬が他にない上、即効性があることから、「痙攣(こむら返り)」が起きる人にとっては救世主のような漢方薬でもあります。
実はわたしも「こむら返り体質」なのでよく使いますが、芍薬甘草湯以外に優れた対処法が無いため常備しています。
夜間のこむら返りで覚醒しまう方には、枕元に一包置いておくと心理的にも安心して眠ることができます。
即効性はありますが、こむら返りの前兆を感じたら早めに服用することで本格的な痙攣を和らげることができるので、市販薬でこむら返りに対応するなら芍薬甘草湯がほぼ一択です。
また下腹部が強く締め付けられるタイプの生理痛にも有効で、鎮痛剤を手放せない方におすすめもできます。
女性は漢方薬に対して良い印象を持っていることが多いので、接客の切り口として紹介してみてください。
芍薬甘草湯は効果が非常に早いため「効いた」という実感がしやすい漢方薬です。
このため登録販売者としての印象も良くなり信頼性も上がります。
ただ「甘草」の量が多いため、他の漢方薬や「グリチルリチン酸」を含んだ咽頭痛治療薬や風邪薬と重複すると「偽アルドステロン症候群」を発症する可能性があります。
芍薬甘草湯のみの服用ならリスクは低いですが、必ず他の薬を飲んでいるか確認をしてください。
のどの痛みに...桔梗湯
桔梗湯は「桔梗」と「甘草」の2つだけでできたシンプルな漢方薬で、のどの局所症状に特化しています。
のどがヒリヒリする、飲み込むと痛い、扁桃が腫れて違和感があるような「のど」の炎症に使いやすいのが特長です。
桔梗湯は特徴的な漢方薬で「少しずつ口に含み、水またはお湯で徐々に溶かしながら服用」という使用法です。
なぜこのような服用方法かというと「のどを通過する時」と「身体の中から」の二重で効果が現れるからです。
つまり、他の薬のように一気に飲み込んでしまうと、本来の効果が充分発揮されない薬でもあります。
この点は必ず接客時にお伝えしてください。
また、「咽頭痛」の市販薬に含まれるグリチルリチン酸が桔梗湯の「甘草」と成分重複のおそれがあります。
芍薬甘草湯と同様、桔梗湯にも「甘草」が含まれています。
効能効果が同じ市販の「のど薬」と併用されやすいため、甘草の過剰摂取による「偽アルドステロン症」を発症するリスクが特に高まります。
併用薬の確認は必ず行ってください。
レジで「咽頭痛治療薬」と「桔梗湯」を同時に購入するお客さまには必ずお声がけしてください。
登録販売者の接客に活かせる漢方薬の提案トーク術
では、ここからは3種類の漢方薬のお客さまへの提案パターンを紹介していきます。
さまざまなパターンがあるので、自身が紹介しやすいものを覚えてください。
五苓散のコツは「万能型」
五苓散の特徴は「水が原因」の症状の緩和なので、用途や効能は多岐にわたります。
お客さまの購入した商品に合わせて紹介することも可能です。
- 経口補水液...下痢や暑気あたりなど
- 鎮痛剤...頭痛(頭痛のパターンをヒアリング)
- 胃薬、肝臓系市販薬やサプリメント...二日酔い
お客さまに対して「症状を聞いたうえで対処法を紹介し、「水」が原因なので五苓散」という流れだとスムーズです。
最も多い頭痛の接客時に五苓散を紹介し「頭痛以外にも使えますし、体質を選ばないのでご家族で使えます」とお伝えしてみてください。
五苓散は各社から「気圧」に関する頭痛の商品として販売されています。
漢方薬シリーズとして、専門メーカーから大容量も販売されているので、お客さまのライフスタイルやお悩みに応じておすすめしてください。
芍薬甘草湯のコツは「筋肉の痛み特化」
芍薬甘草湯は「今すぐ痛みを取りたい」という需要を満たしてくれます。
湿布薬や鎮痛剤売場で悩まれているお客さまにお声がけしてみましょう。
また「この時にこむら返りが起こる」というパターンがある方には、常備しておくと非常に役立ちます。
スポーツをしていて痙攣が起こる方にも使えますが、芍薬甘草湯には「アンチ・ドーピング」の禁止物質は含まれていないものの、各競技や大会によって大きく差があるためルールを確認するようお伝えしましょう。
ドーピングに関しては禁止物質が入っていなくても、競技中や直前での服用は誤解を招きトラブルになる可能性があります。
ネットで調べてリストに入っていないから大丈夫...という安易な判断は控えてください。
生理痛は「重い痛み」より「差し込むような痛み」が向いているため、どんな痛みかヒアリングしてください。
その際、頭痛で鎮痛剤を使っているかお聞きし、もし使っているのなら「頭痛+生理痛」で鎮痛剤の使用頻度を上げると「薬物乱用頭痛(薬剤の使用過多による頭痛)」を併発しやすいので、「五苓散」や「芍薬甘草湯」を使用し鎮痛剤の使用頻度を下げるとQOLが向上します。
お客さまの生活の質を向上するのに有用なのでぜひ紹介してください。
桔梗湯のコツは「のどの痛み特化」
桔梗湯の特徴は「のどの痛み」のみ、という特徴がある、組み合わせで訴求も可能です。
- 咽頭痛のみ...桔梗湯(+鎮痛剤)
- 咽頭痛と咳...桔梗湯+咳止め(デキストロメトルファンなど)
- 咽頭痛と痰...桔梗湯+去たん薬
また「うがい薬」「のどスプレー」「トローチ剤」「のど飴」などとも併用可能なので提案してみましょう。
提案の際は服用方法をよく説明してください。
(トローチ剤やのどスプレーは配合量は少ないもののグリチルリチン酸配合のものは避けましょう)
登録販売者が覚えておくべき漢方薬3選・まとめ
葛根湯や麻黄湯など知名度が高い漢方薬よりも、体質に関係なく使える「証」を問わない漢方薬は、経験が浅い登録販売者がまず最初に覚えてチャレンジすべき処方です。これらは使いやすく接客の現場でも提案しやすいため、まずは基本としてしっかり押さえておきましょう。
今回は「五苓散」「芍薬甘草湯」「桔梗湯」を紹介しましたが、これらは秋冬にかけても紹介頻度が高く便利です。
・五苓散
「水」が原因の症状に効果的。頭痛・二日酔い・下痢・暑気あたりなど。
症状の原因を改善するため、効果が多岐に渡るので汎用性が高い。
「気象痛」のパッケージで複数のメーカーから販売されている。
・芍薬甘草湯
筋肉の痛みに即効性がある漢方薬。筋肉痛・こむら返り・生理痛など。
筋肉が痛いのなら選択肢に上がるため、湿布薬を購入のお客さまに提案可能。
こむら返りに有効で、予防効果もある。
生理痛のお客さまに紹介することで鎮痛剤の使用頻度を下げることもできる。
・桔梗湯
のどの痛みにのみ効く漢方薬。少しずつ溶かしながら服用することで「のどを通過する時」と「服用し体の中から」効く。
鎮痛剤や咳止め、去たん薬と併用することで風邪薬を使わずに対応することも可能。
登録販売者にとってもお客さまにとっても、今回ご紹介した3選は漢方薬入門に最適です。 自信を持って提案し、お客さまのQOL向上にお役立てください!
執筆者:ケイタ店長(登録販売者)
ドラッグストア勤務歴20年、一部上場企業2社で合計15年の店長経験を活かし、X(旧Twitter)などで登録販売者へのアドバイスや一般の方への生活改善情報の発信を行っている。X(旧Twitter)フォロワー数約5,000人。
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