小児用ジキニンを大人が一気飲み...登録販売者はどこまで止めるべき?現場対応をプロが解説
OTC(一般用医薬品)は、効能効果や用法・用量などがあらかじめ決められており、薬の使用者はその指示に従う必要があります。たとえば、小児用の咳止めシロップ剤は「小児」が使用するものであり、「大人」を対象としたものではありません。しかし、お客さまの中にはそのような指示を守らずに薬を使う方もいます。
登録販売者として、用法・用量を守った使用を促すよう指導しなければならない場面ですが、うまく説得できずに悩んでいる方もいるのではないでしょうか。このコラムでは、OTC(一般用医薬品)を正しく使わないことによるリスクと、誤った方法で薬を使うお客さまに遭遇した場合の対応について解説していきます。
目次
- ・登録販売者が知っておくべき OTC(一般用医薬品)の不適正使用によるリスク
- ・登録販売者必見!小児用シロップを一気飲みするお客さまの対応
- ・現場で使える具体的な声かけ例・NG対応例
- ・売り場づくり・POPでの不適正使用防止の工夫
- ・小児用ジキニン 大人 一気飲みに関するよくある質問
- ・まとめ|登録販売者は適正使用を推進しよう
登録販売者が知っておくべき OTC(一般用医薬品)の不適正使用によるリスク
「OTC(一般用医薬品)の不適正使用」と聞くと、「濫用等のおそれのある医薬品」を高頻度・大量に服用するような、いわゆる「薬物乱用」を思い浮かべる人も多いでしょう。
しかし、ドラッグストアで遭遇するOTC(一般用医薬品)の不適正使用は、それだけではありません。たとえば、小児用の薬を大人が使ったり、効能効果に記載のない症状に薬を使ったりすることも、不適正使用になります。ここでは、OTC(一般用医薬品)の不適正使用によって生じるリスクについて解説します。
「医薬品副作用被害救済制度」が使えなくなるリスク
OTC(一般用医薬品)の不適正使用における最大の問題点は、「医薬品副作用被害救済制度」が使えなくなることです。医薬品副作用被害救済制度は、医薬品の副作用による健康被害にあった方を、公的に救済する制度です。しかし、どのような副作用でも給付がおこなわれるわけではなく、決められた条件をクリアする必要があります。
その条件の1つが、「医薬品を適正に使用していること」です。「適正使用」とは、原則的に医薬品の容器や添付文書に記載されている用法・用量および使用上の注意にしたがって使用されることをいいます。そのため、不適正使用によって生じた副作用については、救済対象とはなりません。
万が一、OTC(一般用医薬品)の不適正使用により副作用が発生した場合、お客さまに給付金が下りず、治療費などの面で大きな経済的負担がかかることになります。また、登録販売者や薬剤師が(故意かどうかにかかわらず)お客さまに不適正使用をすすめることで、のちのちトラブルに発展するリスクもあります。十分に注意しましょう。
「薬の効果」に関するリスク
OTC(一般用医薬品)は、年齢によって用法・用量が決められています。そのため、決められた量よりも少ない服用量であれば、薬の効果が出ないこともあります。まれに副作用が不安だからといって自己判断で薬を減らして服用する方がいます。しかし、効果が出ないことを理由に何度も飲み直し、結果的に1日の最大量を超えて服用してしまうケースもあるため、注意が必要です。
一方、規定量よりも多く服用すれば、副作用が生じるリスクが高まります。さらに、OTC(一般用医薬品)には「濫用等のおそれのある医薬品」のように、依存性のある成分が含まれている商品も多く、気づかないうちに薬物乱用に陥ってしまう事例もあります。
いずれにしても、OTC(一般用医薬品)は決められた用法・用量で使用しなければなりません。
登録販売者必見!小児用シロップを一気飲みするお客さまの対応
「OTC(一般用医薬品)の不適正使用」の問題で、登録販売者からもっとも多い相談は、「濫用等のおそれのある医薬品」に該当する小児用シロップを大人が一気飲みするという事例です。たとえば、風邪薬で有名な「小児用ジキニンシロップ」の用法・用量は以下の通りです。
<用法・用量>
1日3回、食後なるべく30分以内に、下記の1回量を(添付の計量カップではかり)服用してください。また、必要な場合には就寝前の服用も加えて1日6回まで服用できますが、このような場合には約4時間の間隔をおいてください。
- 3才以上7才未満1回5mL
- 6カ月以上3才未満1回3mL
- 3カ月以上6カ月未満1回2mL
そのため、「大人」が小児用ジキニンシロップを「一度に全量服用する」という使い方は、不適正使用にあたります。しかし、お客さまの中には、このような誤った使用方法で服用し続けている方もいるのです。
ここでは、登録販売者がこのようなお客さまに遭遇したときの、具体的な対応について解説します。
対応方法① 医薬品副作用被害救済制度について伝えよう
OTC(一般用医薬品)の誤用で副作用が出やすくなることは、多くの方が知っていることでしょう。しかし、自分の身に実際にふりかかる、経済的な損失までは把握していない方がほとんどです。
前項で医薬品副作用被害救済制度について解説しましたが、小児用シロップの一気飲みは不適正使用にあたるため、副作用が生じても制度が活用できません。「お客さま側の損失」を具体的にイメージしてもらうことで、納得してくださる方もいます。ぜひ試してみてください。
対応方法② 代替品を案内しよう
小児用シロップの用途をあらためて確認することも、大事なことです。実際に風邪の症状がある場合、大人用の風邪薬に切り替える方向で調整します。このときに、「小児用シロップの一気飲み」よりも「大人用の風邪薬の適切な使用」の方が、圧倒的にコストパフォーマンスがよいことと、薬効面でも優れているものがあることをお伝えするのがよいでしょう。
具体例として、「小児用ジキニンシロップ」と「新ジキニン顆粒」の比較表を掲載します。成分や成分量はほぼ同じであるのにもかかわらず(「新ジキニン顆粒」にはプラスでジヒドロコデインリン酸塩が含まれる)、コストパフォーマンスが大きく異なることがわかります。
【「小児用ジキニンシロップ」と「新ジキニン顆粒」の比較表】
| 小児用ジキニンシロップ(1本30mL中) | 新ジキニン顆粒(15歳以上1回量中) | ||
|---|---|---|---|
| 熱・痛み | アセトアミノフェン |
300mg | 300mg |
| 咳症状 | ジヒドロコデインリン酸塩 | ― | 8mg |
| dl-メチルエフェドリン塩酸塩 | 20mg | 20mg | |
| 鼻症状 | クロルフェニラミンマレイン酸塩 | 2.5mg | 2.5mg |
| 生薬 | カンゾウエキス | 332mg | 150mg |
| その他 | 無水カフェイン | 25mg | 25mg |
| 参考価格(※) | 1本:759円 | 10包:1,150円 1回量(1包):115円 |
|
※参考価格は2024年11月29日時点のAmazon調べ
なお、風邪薬の小児用シロップを栄養ドリンク剤の代わりに使っているという場合は、とくに注意が必要です。用途がまったく異なることを説明し、栄養ドリンク剤をすすめるようにしましょう。
陳列する商品の数を限定しよう
「濫用等のおそれのある医薬品」を販売する際、お客さまに用途を尋ねると、虚偽と思われる理由で購入しようとするケースもあります。極端な例えになりますが、「子供が10人いるから、小児用シロップが10本必要である」といわれるようなケースです。
現行制度では、お客さまの自己申告が販売可否を決める重要な判断材料となり、場合によっては販売をお断りしにくい状況が発生する可能性もあります。そのため、大量購入のリスクのある商品は、店内での陳列を常に1個などに限り(もしくは空箱)、在庫はバックヤードに置いておくようにします。実際の運用については店長と相談し、複数個購入の希望があった場合の対応について、あらかじめ決めておきましょう。
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現場で使える具体的な声かけ例・NG対応例
ここでは、具体的な声かけとNG例を整理し、明日から現場で使える形に落とし込みます。
- 「子ども用だから大丈夫」と誤解を丁寧に修正する
- 不安をあおらず、具体的なリスクを一つだけ端的に伝える
- 代替案(通常の総合感冒薬・用法どおりの使用)まで必ずセットで提案する
- NG対応:「自己責任だから好きにして」は絶対に言わない
登録販売者は「ダメです」「やめてください」で会話を終えるのではなく、「なぜその飲み方をしたいのか」を質問して背景を聞き出すことが重要です。
そのうえで、「子ども用だから安全」という誤解を修正しつつ、具体的な副作用リスクを一つだけ端的に示すと、相手は受け入れやすくなります。また、代替となる医薬品や、用法どおりに服用した場合のメリットまで提案して初めて、行動変容につながります。逆に「自己責任ですから」「みなさんやってますよ」といった発言は、不適正使用を容認するNG対応です。
売り場づくり・POPでの不適正使用防止の工夫
売り場づくりは「注意喚起」だけでなく、お客さまの行動を変える仕組みとして設計することが重要です。
- 小児用シロップはレジ前・カウンター周辺に配置する
- POPは「恐怖訴求」ではなく「正しい使い方」を前面に出す
- 「相談を促す一文」を必ずPOPや棚札に入れる
- 店舗全体で統一したルールを作り、スタッフ間で共有する
売り場で不適正使用を防ぐには、「見え方」と「動線」の設計がポイントです。
小児用ジキニンなどの小児用シロップは、セルフで大量に手に取りづらいよう、レジ前やカウンター周辺など、スタッフの目が届きやすい場所に配置すると相談につながりやすくなります。POPには「一気飲み禁止」といった強い言葉だけでなく、「小児用はお子さま専用です」「大人の方はご相談ください」など、正しい使い方と相談行動を促すメッセージを入れると効果的です。また、店ごとに配置やPOPの基準を決め、スタッフ間で共有することで、専門家として一貫した対応がとれる売り場環境をつくれます。
小児用ジキニン 大人 一気飲みに関するよくある質問
ここでは、小児用ジキニン 大人 一気飲みについて、よくある質問に回答していきます。
Q1: 小児用ジキニンを大人が一気飲みしても大丈夫ですか?
A1:一気飲みはおすすめできません。大人が小児用ジキニンをまとめて服用すると、承認された用法・用量を超える可能性があり、副作用や体調悪化のリスクが高まります。小児用ジキニンは「小児を対象」として成分量や服用回数が設計されており、大人の一回量として安全性・有効性が確認されているわけではありません。一気飲みすると、眠気・めまい・胃腸障害などの副作用が出るリスクが上昇し、基礎疾患や併用薬がある場合はさらに危険です。症状がつらい場合は、大人用として承認された総合感冒薬など、適切な製品を用法・用量どおりに使用しましょう。
Q2:小児用ジキニンを大人が適量で飲むのは問題ありませんか?
A2:自己判断での服用は避けてください。どうしても使用したい場合は、必ず薬剤師や登録販売者など専門家に相談しましょう。添付文書上は「対象年齢」や「用法・用量」が明確に記載されており、その範囲内での使用が前提です。大人が「少なめなら平気」「子ども用だから安心」と考えるのは誤解で、安全性の保証にはなりません。成人の体格・持病・併用薬などによって、適切な成分や量は変わります。市販薬であっても医薬品である以上、自己判断ではなく、専門家から使用の可否や代替薬の提案を受けることが重要です。
Q3:小児用ジキニンを一気飲みしようとするお客さまに、登録販売者はどう対応すべきですか?
A3:まず理由を丁寧に聞き取り、一気飲みのリスクを説明したうえで、適切な代替薬や正しい使い方を提案することが重要です。いきなり「ダメです」と否定すると、お客さまとの信頼関係が崩れ、別の店舗で同じ行動を繰り返す可能性があります。なぜ小児用を選ぶのか(価格、飲みやすさ、早く治したい等)、なぜ一気飲みなのかを確認し、その理由に合わせて説明を行いましょう。「子ども用だから安全」という誤解を正しつつ、「大人用の総合感冒薬」「用法どおりに分けて飲む」など、現実的な代替案を提示することで、納得感のある行動変容につながります。
まとめ|登録販売者は適正使用を推進しよう
「濫用等のおそれのある医薬品」に該当するOTC(一般用医薬品)を販売する際は、確認事項が多く、接客が難しいと感じる登録販売者も多くいることでしょう。OTC(一般用医薬品)に依存性や副作用があることだけでなく、本コラムで解説した医薬品副作用被害救済制度についても知っておくことで、説得力のある接客ができるようになります。
医薬品副作用被害救済制度は、自分の身に何か起こったときに活用する「保険」のような制度です。しかもそれは、わざわざ保険料を支払う性質のものではなく、購入したOTC(一般用医薬品)を「書いてある通りに使う」だけで得られるものです。登録販売者は、医薬品副作用被害救済制度についても適切に把握し、お客さまにご案内できるようにしましょう。

執筆者:村松 早織(薬剤師・登録販売者講師)
株式会社東京マキア 代表取締役
登録販売者や受験生向けの講義を中心に事業を展開
X(旧:Twitter)、YouTube等のSNSでは、のべ1万人を超えるフォロワー・チャンネル登録者に向けて、OTC(一般用医薬品)についての情報発信をおこなっている。
- ■著書
- ・医薬品暗記帳 医薬品登録販売者試験絶対合格! 「試験問題作成に関する手引き 第3章」徹底攻略(金芳堂)
- ・薬機法暗記帳 医薬品登録販売者試験絶対合格! 「試験問題作成に関する手引き 第4章」(金芳堂)
- ・これで完成! 登録販売者 全国過去問題集 2023年度版(KADOKAWA)
- ・村松早織の登録販売者 合格のオキテ100(KADOKAWA)
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