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【登販の接客術】増加する10代のOTC医薬品濫用。濫用のおそれのある医薬品の服薬指導

【登販の接客術】増加する10代のOTC医薬品濫用。濫用のおそれのある医薬品の服薬指導

 【登販の接客術】増加する10代のOTC医薬品濫用。濫用のおそれのある医薬品の服薬指導

近年、10代の若者によるOTC(一般用医薬品)の濫用が増えており、社会問題になっています。関連ニュースが増えるにつれて、「オーバードーズ(Overdose)」という言葉も有名になりました。「オーバードーズ」とは、1回あたりの薬の服用量(dose)が過剰である(over)ことを意味し、ODと略されることもあります。本コラムでは、10代の若者による薬物濫用の実態や、濫用のおそれのある医薬品を購入しようとするお客さまへの対応方法について解説しています。接客に悩んでいる登録販売者の方は、ぜひ参考にしてください。

目次

濫用のおそれのある医薬品に関する法令

濫用のおそれのある医薬品に関する法令

まずは、本コラムの基礎となる、濫用のおそれのある医薬品に関する法令について確認しましょう。

濫用のおそれのある医薬品の種類

濫用等のおそれのある医薬品は、次のように指定されています。

【平成26年厚生労働省告示第252号】
濫用等のおそれのあるものとして厚生労働大臣が指定する医薬品は、次に掲げるもの、その水和物およびそれらの塩類を有効成分として含有する製剤とする。

成分
ⅰ) エフェドリン
ⅱ) コデイン
ⅲ) ジヒドロコデイン(鎮咳去痰薬に限る)
ⅳ) ブロモバレリル尿素
ⅴ) プソイドエフェドリン
ⅵ) メチルエフェドリン

なお、以前は記載のあった「鎮咳去痰薬に限る」、「鎮咳去痰薬のうち、内用液剤に限る」といった文言は、2023年1月の告示改正により削除されました。現在は、上表の通り、薬効分類や剤形に関わらず、これらの成分が入った商品はすべて「濫用等のおそれのある医薬品」の指定対象となっています。

濫用のおそれのある医薬品の販売方法

医薬品医療機器等法施行規則(以下、「規則」)に定められた、濫用等のおそれのある医薬品の販売方法は次の通りです。

【濫用等のおそれのある医薬品の販売方法 規則第15条の2ほか】
薬局開設者、店舗販売業者又は配置販売業者は、一般用医薬品のうち、濫用等のおそれのあるものとして厚生労働大臣が指定するものを販売し、又は授与するときは、次の方法により行わなければならない。

①当該薬局、店舗又は区域において医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師又は登録販売者に、次に掲げる事項を確認させること。

ⅰ) 当該医薬品を購入し、又は譲り受けようとする者が若年者である場合は、当該者の氏名および年齢
ⅱ) 当該医薬品を購入し、又は譲り受けようとする者および当該医薬品を使用しようとする者の他の薬局開設者、店舗販売業者又は配置販売業者からの当該医薬品および医薬品以外の濫用等のおそれのある医薬品の購入又は譲受けの状況
ⅲ) 当該医薬品を購入し、又は譲り受けようとする者が、適正な使用のために必要と認められる数量を超えて当該医薬品を購入し、又は譲り受けようとする場合は、その理由
ⅳ) その他当該医薬品の適正な使用を目的とする購入又は譲受けであることを確認するために必要な事項

②当該薬局において医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師又は登録販売者に、①の規定により確認した事項を勘案し、適正な使用のため必要と認められる数量に限り、販売し、又は授与させること。

【①の表の補足】
ⅰ)に記載のある「若年者」とは、高校生や中学生などを指します。
ⅱ)の文章が示しているのは、他店での購入履歴について確認するということです。
ⅲ)の「適正な使用のために必要と認められる数量」とは、原則として、薬効分類ごとに1人1包装単位です。

登録販売者が知っておくべき、10代のOTC医薬品濫用の実態

登録販売者が知っておくべき、10代のOTC医薬品濫用の実態

薬物濫用に陥る10代の若者の特徴とは、一体どのようなものでしょうか。対応策について学ぶために、まずはOTC(一般用医薬品)濫用の実態について確認していきましょう。

10代の薬物依存症患者の主な薬物

厚生労働省の資料に記載されている、[全国の精神科医療施設における薬物依存症の治療を受けた10代患者の「主たる薬物」の推移]によれば、2020年にはOTC(一般用医薬品)がもっとも高い割合を占めています。具体的には、2014年のOTC(一般用医薬品)の割合は0%でしたが、2020年には56.4%と非常に増えています。一方、危険ドラッグの割合は、2014年には48%、2020年には0%となっており、まるで「主な薬物」のメインが危険ドラッグからOTC(一般用医薬品)へと置き換わったように見えます。

参考:厚生労働省 「わが国における市販薬乱用の実態と課題 『助けて』が言えない子どもたち」6ページ

OTC医薬品を濫用した経験のある高校生の特徴

OTC(一般用医薬品)を濫用している10代の若者には社会的に孤立した傾向があり、さらに以下のような特徴があります。10代のお客さまを接客する時は、このような特徴があるかどうかを確認しつつ対応するのがよいでしょう。

  1. 1. 男性より女性が多い
  2. 2. 生活習慣での特徴(睡眠時間が短い、朝食を食べない頻度が高い、インターネットの使用時間が長い)
  3. 3. 学校生活での特徴(学校が楽しくない、親しく遊べる友人や相談できる友人がいない)
  4. 4. 家庭生活での特徴(親に相談できない、大人不在で過ごす時間が長い、家族との夕食頻度が少ない)
  5. 5. コロナ禍による自粛生活に対するストレスが高い
参考:厚生労働省 「わが国における市販薬乱用の実態と課題 『助けて』が言えない子どもたち」12ページ

10代のOTC医薬品濫用を防ぐためにできること

学生証などの提示をお願いしている店舗は多いかと思いますが、レジなどで厚生労働省作成のポスターを確認していただく方法もお勧めです。こちらのポスターは、学生証により、氏名や年齢だけでなく学校名も確認するなどかなり踏み込んだ内容となっているため、強い抑止力になることが期待されます。また、あわせて「お客さまの情報を記録させていただきますね」とお伝えし、実際に記録表も作成するとより効果的です。
なお、ポスターの内容は少し古いため、適宜変更を加えてください。

参考:厚生労働省 「濫用等のおそれのある医薬品」 6ページ

登録販売者必見!濫用のおそれのある医薬品の服薬指導

登録販売者必見!濫用のおそれのある医薬品の服薬指導

ここでは濫用のおそれのある医薬品の購入を希望しているお客さまへの服薬指導について解説します。お客さまへの説明の仕方に悩んでいる方は、参考にしてくださいね。

意図せず濫用しているお客さまへの対応

OTC(一般用医薬品)は一般の方からすると、「副作用がない」と思われがちです。お客さまによっては、単純に「OTC(一般用医薬品)に依存性のある成分が存在する」という事実を知らず、知らないうちに濫用している方もいます。私たちにとっては「当たり前」のことも、お客さまにとってはそうではないことがあります。基本に立ち返ってお話ししてみてください。

「1箱では効かないかも...」と言われた時の対応

濫用のおそれのある医薬品の購入は、原則、1人につき1箱とされており、それを超えて購入しようとする場合には、理由を聞く必要があります。その際にお客さまから「1箱では効かないかも...」と言われることがありますが、一般用医薬品を1人で1箱を使い切るまでに症状が改善しない場合、ただの風邪や咳ではなく、重大な病気の可能性もあります。したがって、「1箱を飲み切っても症状が改善しなければ、病院に行っていただくか、再度こちらへ相談しにきてくださいね。」と声かけするようにしましょう。

医薬品副作用被害救済制度の案内

医薬品副作用被害救済制度は、医薬品の副作用による健康被害を受けた方を公的に救済する制度であり、医薬品を適正使用した場合に利用できます。OTC(一般用医薬品)の濫用は不適正使用にあたるため、お客さまの身に何か起こった時に、制度が使えず経済面で不利益が発生する可能性があります。「損をすること」を嫌うお客さまの場合、このような説明により納得していただける場合があります。

医薬品販売の断り方

建設的な話し合いができない場合など、やむを得ず医薬品の販売をお断りする際の対応について解説します。このような時は毅然とした態度で対応する必要がありますので、「法令上、薬物濫用の疑いのある方には販売いたしかねます。」とはっきりお伝えしてください。お客さまの健康を守ることが最優先ですので、負い目を感じる必要はありません。ただし、本部にクレームを入れられる可能性もあるため、すぐに上司に経緯を共有しておくことをお勧めします。

登録販売者による「薬物濫用の疑いのあるお客さま」への対応

登録販売者による「薬物濫用の疑いのあるお客さま」への対応

OTC(一般用医薬品)の濫用が疑われる方を接客する際には、ゲートキーパーとしての対応方法に従うのがよいでしょう。

ゲートキーパーの役割と対応方法

ゲートキーパーとは、自殺の危険を示すサインに気づき、適切な対応を図ることができる人のことであり、「命の門番」とも位置付けられます。なお、「ゲートキーパー」という言葉は、自殺意図の有無にかかわらず、医薬品の濫用・依存に直面する人たちに対しても応用できる概念です。ゲートキーパーとしての対応は、①気づく、②関わる、③つなぐ、④見守るの4つのステップがあります。

①気づく
悩み・相談を抱えた当事者(患者、住民、家族)に気づく

②関わる
声をかけ、共感的な態度で話を聞き(傾聴)、信頼関係を構築する

③つなぐ
薬物問題の専門的支援につなぐ

④見守る
当事者との良好な信頼関係を維持し、その後を見守る

ステップ①気づく

悩み・相談を抱えたお客さまに気づいたら、声をかけます。

【声かけの例】

  • 最近、眠れていますか?(2週間以上続く不眠は「うつ」のサイン)
  • 何かお困りのことや悩み事はございますか?もしよろしければ伺います。
  • 何かお力になれることはございますか?
参考:
政府広報オンライン 「あなたもゲートキーパーに!大切な人の悩みに気づく、支える」
厚生労働省 「わが国における市販薬乱用の実態と課題 『助けて』が言えない子どもたち」 23、24ページ

ステップ②関わる

本人の気持ちを尊重し、共感的な態度で相手の話に耳を傾けます。この時に、話しやすい環境作りをおこないましょう。例えば、隅の方などできるだけ人に話を聞かれない場所に移動する、声の大きさに注意する、などの方法があります。そして心配していることを伝え、悩みを真剣な態度で受け止めます。傾聴する際は、誠実に尊重して、相手の感情を否定せずにおこなってください。

ステップ③つなぐ

薬物問題の支援をおこなっている専門家に、早めに相談するよう促します。この場合、以下のような支援機関があります。

1.依存症専門病院
依存症専門病院を探す時は、「依存症対策全国センター」のサイトがおすすめです。病院だけでなく、精神保健福祉センターや保健所なども一緒に検索できるので非常に便利です。

2.精神保健福祉センター
精神保健福祉センターは、精神保健の向上と精神障害者の福祉の増進を図るための機関であり、薬物濫用に関する個別相談や家族相談、受診相談などの取り組みもおこなっています。ご案内の際には、お客さまに最寄りの施設に連絡し、連携を図るようお伝えしてください。

ステップ④見守る

温かく寄り添いながら、じっくりと見守ることが大切です。したがって、接客のクロージングの際に、「必要があれば相談に乗りますので、また来てくださいね」などと声かけをするのがよいでしょう。

まとめ|登録販売者は法令遵守とコミュニケーション能力が大事

登録販売者は「薬の番人」でもあるため、法令順守はもっとも大切な業務の1つです。また、濫用のおそれのある医薬品を購入しようとする方や、薬物濫用が疑われる方に対しては、ていねいなコミュニケーションが非常に重要になります。お客さまの状況を詳しく聴き取り適切に対応できるよう、日々の生活の中で傾聴スキルなどのコミュニケーション能力を磨くようにしましょう。

執筆者:村松 早織(薬剤師・登録販売者講師)

執筆者:村松 早織(薬剤師・登録販売者講師)
株式会社東京マキア 代表取締役
登録販売者や受験生向けの講義を中心に事業を展開
X(旧:Twitter)、YouTube等のSNSでは、のべ1万人を超えるフォロワー・チャンネル登録者に向けて、OTC医薬品についての情報発信をおこなっている。

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