【現役ドラッグストア店長直伝】冬商品で接客スキルを劇的に磨く3つのコツ
ドラッグストアは秋冬商戦に向けての売場作成も終わり、あとは商戦を控えるだけとなりました。
とくに今年の冬は乾燥と寒暖差が激しく、肌・呼吸器・メンタルの相談が例年より早いペースで増えています。
※ドラッグストア市場は前年同期比6.2%増と好調、特に冬の乾燥や寒暖差による肌・呼吸器・メンタル関連商品の相談が増加。※【出典元】経済産業省2025年統計より
登録販売者としての経験が浅い方ほど、お客さまからのご相談を「医薬品」に絞ってしまいがちですが、冬はお客さまの悩みが明確だからこそ視野を広く持って商品提案ができるスキルを磨きやすい時期でもあります。
このコラムでは、現場でよくある冬の相談シーンを例に、登録販売者が自信を持って提案できるコツをまとめました。
【この記事で得られること】
- 冬のドラッグストアでは乾燥や寒暖差による肌トラブル、呼吸器疾患、メンタル不調の相談が例年より早いペースで増加し、その対応力向上が重要。
- 登録販売者は症状だけでなく生活背景を踏まえたヒアリングを行い、お客様一人ひとりに合った医薬品やサプリメント、美容製品の提案をすることが信頼獲得の鍵である。
- 医薬品や化粧品の適切な分類と使い分けを理解し、「予防」と「治療」の使い分けを明確に案内することが、接客力向上と指名される登録販売者になるためのポイントとなる。
目次
- ●医薬品:冬の王道トラブルを「症状×生活」で聞き出す
- ●なぜ冬はサプリ不足に注意?冬の不足とリスク対策
- ●化粧品:医薬品的視点を盛り込んだ提案型のボディケア
- ●まとめ:冬の接客で一歩抜け出すための得意ジャンル育成術
医薬品:冬の王道トラブルを「症状×生活」で聞き出す
冬の接客は症状そのものより「生活背景」を意識できるかで差がつきます。
医薬品は「皮膚トラブル・風邪・咳」が三本柱ですが、誰にでも同じ薬を勧めるのではなく「その方の暮らしに合わせた提案」を心がけてください。
「尿素」か「ヘパリン類似物質」か?
たとえば「消毒で手がボロボロで...仕事中でも使いやすいクリームありますか?」と聞かれることが増えていませんか。
レジ前で商品棚を見比べているお客さまに、尿素とヘパリン類似物質の違いを一言で伝えられると、グッと頼られる存在になります。
特に近年は「ヘパリン類似物質」の商品が急増しているため人気ですが、使い方に大きな違いがあるため注意が必要です。
両成分の特徴と注意点を改めて確認しておきましょう。
・尿素
濃度によって作用が異なり、10%以下は「保湿がメイン」となりハンドクリームに使われ、他の医薬品成分が入っていなければ基本的に医薬部外品です。
20%は「角質溶解作用」があるため医薬品扱いとなり、軽いザラつきや角化型の手荒れには有効ですが傷口に使用するとしみて痛みを強める可能性があります。
特に20%の商品は保湿剤として使用できないので必ずお声がけをしてください。
・ヘパリン類似物質
保湿・抗炎症・血行促進の効果があります。
軽いあかぎれや粉吹きが目立つ部位にも使いやすく、医薬品なら血行促進で症状の改善が期待できます。
ただし出血している傷口には血行促進効果による出血リスクが上がるため使用できないので注意してください。
皮膚薬全般に当てはまりますが、基剤の違いも特徴があるので接客時に患部がどこか確認しアドバイスをしてください。
軟膏...油に近いのでべたつき感があるが保護力が高いため塗り直ししにくい箇所にお勧め
クリーム...サラッとしているので保護力は低いが伸びがよく塗り直しもしやすい
乳液...最も伸びるため背中や太ももなどの広い部位にお勧め
こうした違いも成分の特徴と合わせてお伝えしましょう。
「葛根湯」のタイミングと併用注意ポイント
冬の初期風邪で真っ先に思い浮かべる人が多い葛根湯ですが「風邪のひきはじめ=葛根湯」という考え方は合っているのでしょうか?
葛根湯の効かせるコツである「風邪のひきはじめ」という表現はあいまいなので間違った使い方をされているお客さまや登録販売者も多いのです。
「風邪のひきはじめ」というのは、鼻水・のどの痛み・頭痛・発熱・咳などの風邪の諸症状が現れる前の「肩や首に何となく違和感がある」状態を指します。よくあるのが「ちょっと鼻水が出てきたので、ひきはじめ用に葛根湯をください」というケースです。しかし、このタイミングではすでに症状が出ており、本来の『ひきはじめ』とはズレています。「肩こりみたいな違和感の段階で飲むお薬なんですよ」と具体的に伝えると、納得してもらいやすくなります。
分かりやすくいうと、葛根湯は「体温を上げる漢方薬」なので汗をかくような発熱時には逆効果となります。
「中間証~実証」向けの漢方薬なので「虚証」の方には効果が望めません。
葛根湯には、麻黄が入っているため「高血圧・心疾患・甲状腺機能亢進症・糖尿病・前立腺肥大」などは注意が必要ですし、風邪薬や鼻炎薬、小青竜湯などの他の漢方薬とも併用ができません。
もし、取り扱いがあれば葛根湯から葛根と麻黄が抜いた処方の「桂枝湯」を勧めてください。
もし葛根湯を服用しながら鼻水も抑えたいというお客さまには、点鼻薬をお勧めするのが最善です。
フェキソフェナジンなどの第二世代抗ヒスタミン薬は「風邪症状」の効能効果はないのでお薦めしてはいけません。
「咳止め」の選び方のポイント
咳止めの接客時に「咳のタイプ」を聞いていない登録販売者も多いのですが、ここは必須の質問事項です。
・咳が出ている期間はどれくらいか
もし一週間を超えるような長期間の咳症状が続いているのなら「風邪の咳」ではない可能性があるので安易に市販薬を提案するのではなく、受診勧奨をおこなってください。
場合によっては心不全や逆流性食道炎が原因の場合があります。
・痰がからむか、からむなら色はついているか
痰がからんでいる咳なら基本的には止めずに痰を排出する去たん薬をお勧めします。
色がついている時は細菌感染の可能性がありますが、特に血痰や泡立っている時は受診勧奨です。
・水を飲むと楽になるか
痰のからまない乾いた咳の場合は水を飲むことで一時的に改善することがあります。
特に夜間の咳込みで睡眠が妨げられるような場合は咳止めを使用し体力の消耗を防ぎましょう。
痰がからむ「湿った咳」は体が痰を出そうとしているので止めない方が治りが早まることが多いので「去たん薬」をお勧めします。
コデインなどの強い中枢性鎮咳薬を使うと、痰が排出されず治りが遅くなるばかりでなく最悪は肺炎や、高齢者は誤嚥性肺炎リスクが高まるため注意が必要です。
また喘息の方にはコデインは使用不可ですので、咳止めや風邪薬の接客時には必ず確認をしてください。
なぜ冬はサプリ不足に注意?冬の不足とリスク対策
冬は日光不足・運動不足・偏食が重なり、体調の土台が崩れやすい季節です。
季節が移ったタイミングでの環境の変化を接客に採り入れると商品提案の幅が広がるので勉強して「なぜ今必要なのか」を伝えるスキルを身に着けてください。
「ビタミンD」冬の日光不足と免疫・メンタルの関係
秋冬は急激に日照時間が減るために「ビタミンD」の合成が落ちてしまいます。
気温も低下することで外出や野外活動の頻度も下がり、さらに拍車がかかってしまうのでビタミンD不足が引き起こすお客さまにとって関心が高いものを二点挙げておきます。
・免疫
ビタミンDはT細胞の活性化に関与し、免疫機能の正常な働きをサポートします。
風邪予防に良いというエビデンスもありますが「風邪を完全に防ぐ」わけではありませんが、ビタミンD欠乏だと効果があるため食事や生活環境によってお勧めしてみましょう。
・メンタル
「季節性うつ」との関連が指摘されており、日光不足+ストレスにより心が沈みやすくなります。ただし、ビタミンDはあくまでもサポートであり明確なエビデンスがないため「うつ対策」とは言えません。
「冬は日が短くて、外に出る時間も減るので、体の中でビタミンDが作られにくくなるんですよ」と、生活背景と結びつけて伝えましょう。
季節性は強くありませんが、骨粗鬆症リスクのある中高年女性には「カルシウム・マグネシウム」とのセットで「骨ケア+健康維持サポート」の二重訴求も効果的ですです。
ただし、この場合は使用中のサプリや持病での医薬品などを必ず確認し安全性を意識した接客を忘れないでください。
「ビタミンE」冷え性対策と血行促進の違い
冬の冷え性相談は「ビタミンE」が主役となります。
ビタミンDも医薬品で使われていますが、ビタミンEの「冷え対策」はそのまま効能効果(しびれ・冷え・しもやけなど)となっているので必ず把握しておきましょう。
またビタミンEは「天然型」と「合成型」が存在し、それぞれ市販薬やサプリメントに使用されています。
ここでは2種類の特徴を覚えておいてください。
・天然型(d-α-トコフェロール)
合成型より効果が高く抗酸化作用があるため医薬品に使われるが高価な商品が多い。
・合成型(dl-α-トコフェロール)
非常に安価でサプリメントに使用されるが抗酸化作用はなく効果も低い。
同じ「ビタミンE」でも効果が全く違うため、効能効果を求めるお客さまには医薬品をお勧めしましょう。
価格を気にされる場合は天然型と合成型の違いを説明したうえでサプリメントもご紹介してください。
ビタミンEの効果は「抗酸化作用で血管を守り毛細血管を広げて手足の血流を改善する」というものですが、これだけで「しもやけ・冷え・しびれ」が改善するほどではないので、これらの対策を別途紹介してください。
まずは「防寒・保温」対策を優先し、必要に応じてビタミンE製剤やサプリメントを補助的に提案するのが安全です。
ここからハンドクリームや皮膚薬なども提案できるため、今回のコラムをよく読んで提案力を上げておきましょう。
「亜鉛・ビタミンC」粘膜バリアの強化
冬になると口内炎ができたり風邪をひきやすい...という相談には「亜鉛+ビタミンC」をセットでお勧めする方法もあります。「味がよく分からない」「食欲が落ちる」といった声も、亜鉛不足を疑うサインとして共有しておくと接客がスムーズです。
亜鉛は穀物などの栄養素に吸収を阻害されるのですが、ビタミンCと同時摂取で阻害されにくくなるのです。
亜鉛の主な効果は「粘膜・皮膚・味覚細胞の回復」です。
粘膜の保護を促進し粘膜バリアの維持でウイルスに対する防御を高めることが期待されます。
風邪の期間を短縮する可能性も示されているので風邪症状早期から適切に使うことで症状が続く期間を短くできる可能性もあります。
あくまで補助となりますが、免疫系のサプリメントをお求めのお客さまに紹介しても効果的です。
化粧品:医薬品的視点を盛り込んだ提案型のボディケア
冬の美容系肌相談は「乾燥だけ」なのか「炎症を伴う肌荒れ」なのかを見極めるところから始まります。
医薬品と化粧品の境界を理解し、生活背景まで踏み込んだ提案をすると信頼度が一気に上がるので予め知識を持っておきましょう。
リップクリームの「第3類医薬品」と「化粧品」の決定的違い
唇トラブルは放置すると食事や会話にも支障が出るため、お客さまにも早く適切な商品を勧める必要があります。
特にご高齢のお客さまは昭和時代からあるようなメントール配合や消毒剤配合の皮膚薬を効能効果から外れた(禁忌にもなっている)唇トラブルに使用する場合があるので注意してください。
・化粧品・医薬部外品
保湿や保護、ツヤ出しが目的の日常的な乾燥対策なので「予防」の位置づけです。
組織修復成分であるアラントインが配合されているものもありますが、配合量には上限があるため症状が重い時は第3類医薬品を勧めてください。
・第3類医薬品
アラントインや抗炎症成分であるグリチルリチン酸などで治療を目的とした処方です。
すでに唇が割れていたり炎症がある場合は第3類医薬品のリップが適しています。
「笑った瞬間に裂ける」「血が滲む」など具体的症状を聞き、症状に応じて医薬品リップと化粧品や医薬部外品のリップの併用を提案しましょう。
若年層には「昼は色付き化粧品、夜は医薬品で治す」の二刀流を勧めると喜ばれます。
再発を繰り返す場合はビタミンB2・B6のビタミン剤なども案内し、必要に応じて皮膚科の受診を提案してください。
ハンドクリームの「ビタミン系」「撥水系」
恐らく冬のシーズン系商品で最も接客機会が多いのがハンドクリームです。
お客さまは「使用感」を気にすることが多いのですが、ハンドクリームもジャンル分けすることができます。
・保湿
多くのハンドクリームが保湿系となります。
あくまでも「手荒れ」の防止での使用となるので、手湿疹のお客さまにはハンドクリームでなく「ステロイド剤」をお勧めするか受診勧奨してください。
・ビタミン
色がついているハンドクリームは「ビタミンB群・E・C」などが配合されています。
血行促進や肌の修復などの意味合いがありますが、こちらも予防目的となります。
・尿素
尿素10%配合のものは肌の修復ができる医薬部外品のハンドクリームです。
ただし傷があるとしみるため接客時には注意してください。
手荒れの予防として「手を濡れたままにしない」「完全に水分をふき取る」という点も伝えると信頼性が増します。
ハンドクリームは皮膚薬と親和性が高いので、皮膚薬の接客時にハンドクリームでプラス1品を狙うことも可能です。
手湿疹レベルまで悪化してもハンドクリームで対応しようとするお客さまも多いので、皮膚薬を先にお勧めしてからハンドクリームの併用を提案することも忘れないようにしてください。
入浴剤の「炭酸ガス」と「保湿」の違い
入浴剤は冬に販売数が大きく伸長しますが、近年はさまざまな機能を持った入浴剤が販売されています。
入浴剤は「医薬部外品」が多いジャンルなので登録販売者は把握しておきましょう。
・炭酸ガス系
炭酸ガスで血管拡張をすることで温浴効果があります。
40℃弱のぬるめのお風呂に入れ、溶かしてからできるだけ早く入浴をするように勧めてください。
炭酸ガス系の入浴剤を購入するお客さまは「疲労・肩こり・腰痛」などの悩みを持っていることが多いので、ビタミン剤や湿布薬などにつなげることも可能です。
・保湿系
角層に潤いを補給する入浴剤です。
乾燥肌や敏感肌のお客さまなので、そのまま入浴後の保湿剤に接客を続けてください。
肌の悩みを持っているお客さまは保湿剤に対する抵抗も少ないため購入率は高めです。
特に乾燥敏感肌のシリーズ化している商品はシリーズで揃えると安心感が増すため、ぜひ優先して案内しましょう。
まとめ:冬の接客で一歩抜け出すための得意ジャンル育成術
冬の接客で成長するためには、今日からできる小さな行動を積み重ねることが大切です。
・医薬品
症状だけで判断せず「いつから・どんな時に」を必ずセットで聞くクセをつけてください。
咳なら「期間・痰の有無・水で楽になるか」、乾燥なら「部位・傷の有無・基剤の好み」のように、毎回同じ質問をルーティン化すると提案が安定します。
・サプリ
気温・日照・生活リズムなど「冬特有の理由」を一言添えるだけで説得力が段違いになります。
例えば「最近日が短いのでビタミンDが不足しやすいですよ」など、季節要因を必ず説明しましょう。
・化粧品
「予防」「治療」の線引きを意識し、症状があるなら医薬品、普段使いなら化粧品と明確に案内するだけで信頼が高まります。
特に医薬品の皮膚薬と相性がいいので「化粧品はビューティアドバイザー」「医薬品は登録販売者」といった決めつけや役割分担はチャンスロスに直結します。
この3つを日々の接客に組み込むだけでも、自然と得意ジャンルが育ち指名される登録販売者へと一歩近づけます。
季節性はドラッグストアにとって「武器」なので自身のものにしてください。
執筆者:ケイタ店長(登録販売者)
ドラッグストア勤務歴20年、一部上場企業2社で合計15年の店長経験を活かし、X(旧Twitter)などで登録販売者へのアドバイスや一般の方への生活改善情報の発信を行っている。X(旧Twitter)フォロワー数約5,000人。
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