【現役ドラッグストア店長直伝】登録販売者のお客さま満足度アップ方法<登録販売者のキャリア>
【現役ドラッグストア店長直伝】登録販売者のお客さま満足度アップ方法<登録販売者のキャリア>
これまでのコラムで何度か接客のコツをお伝えしてきました。
今回は具体的な事例を用いて、お客さまから信頼される接客をシミュレーションしてみましょう。
接客時は事前知識を用意しておくと非常に便利ですし、お客さまへの提案もスムーズになります。
ぜひ参考にして自分オリジナルの台本を作成してください。
目次
お客さまに聞くべき項目
まずわたしたち登録販売者が取り扱うのは「医薬品」です。
それは健康被害を引き起こす可能性もある商品なので細心の注意が必要です。
必ず聞いておくべき項目を確認しておきましょう。
必須の項目
必須の項目は優先順に以下の通りです。
- 症状
- 誰が
- いつから
- 持病
- 飲んでいる薬
「1.症状」だけを聞いて接客している方もいるかもしれませんが、危ないので必ず「2.~5.」もお聞きして下さい。
そしてここで忘れがちなのが「2.誰が」です。
基本的に来店されるのは体調が良い方ですが、市販薬を求めるのは体調が悪い方です。
例えば風邪症状や胃腸の症状などでは本人以外の家族の方が代理で来店される事も多いのが実情です。
目の前のお客さまがご家族の症状をすべて把握している訳ではなく、登録販売者からの質問でようやく気にされる事もあります。
- 15歳以上と思ったら小児だった
- 男性と思ったら女性だった
- 何か話が嚙み合わない
発言している方が張本人ではない場合も多く大前提が崩れる場合も多いので、最初に必ず確認しておきましょう。
可能な限り聞く項目
お客さまはお急ぎの場合もありますので、必要な事項と分けて追加で聞くべき項目も把握しておきましょう。
可能なら聞いて対応することでお客さまの満足度は格段に上がります。
- (現在使用している市販薬があるのなら)効果を感じているか
- 服用できる剤型
- アレルギーの有無
- (女性の場合)妊娠や授乳の有無
必ずお聞きするのが理想ではありますが、現実的にはお客さまや店舗の状況によって聞けない事も多々ある項目です。
時間に余裕があったりお客さまの都合に応じて可能なら聞くべきです。
基本的にわたし達が取り扱うのは「指定第2類医薬品」までのお客さま自身が選択し使用する商品です。
大前提としてお客さま自身で選択し購入することができるものですが、できるだけ多くのお客さまに正しい商品を提供する手助けをおこなう責務を全うしてください。
他の事例などを用いた共感
接客の際には「共感」が必要です。
共感力を高めるためのコラムを執筆してるので、まずはご覧ください。
【現役ドラッグストア店長直伝】登販が共感力を磨く必要性<登録販売者のキャリア>
共感力を高める方法としては登録販売者としての経験を積むことがもっとも重要ですが、書籍やネットからの情報も採り入れるべきです。
このアポプラスキャリアのコラムにも多くの実例が掲載されているので「自分ならどうするか」を考えながら読むのもおすすめです。
現場で活かす知識|登録販売者の求人・転職・募集ならアポプラス登販ナビ
共感力が低い...と自覚している方も心配はありません。
この共感は共感力がすべてではなく、知識を使っての共感もできるのです。
様々な事例を記憶しておくことで、それはあなたの知識にもなります。
その事例に対しての自分の答えを持っておくと共感となり得るので簡単な方法を挙げておきます。
例えば事前知識としてこのコラムを読んで学習していたとします。
【登録販売者の接客】症状別・市販目薬のおすすめの仕方を解説!
この記事には目薬の販売ポイントが解説されていますが、このコラムを読んだだけでは抽象的な知識としてインプットされるだけに留まってしまいます。
これを具体的な事例に昇華してこそ、共感を呼ぶ知識になるのです。
方法としては、記事を熟読し自分なりのおすすめ商品をピックアップするのがもっとも効率的です。
例えば上記の目薬のコラムにある「血管収縮成分に注意」という箇所を読んだとします。
ここで必ず自分の中でのおすすめ商品を選定しておくのです。
記事中に掲載されている商品と合わせて勤務する店舗で取り扱っている商品を選定しましょう。
様々なシチュエーションで商品を知識として記憶することで、お客さまから相談を受けたときに「あの商品!」というゴールが見えるのです。
あとはゴールまでの道のりをたどるように、お客さまからの情報に注意しながら接客をおこないましょう。
お客さまの悩みからの提案候補
ここまではお客さまへの接客をおこなう前の行動でしたが、ここからは肝心な接客中の考え方を見ていきましょう。
臨機応変に対応できない方はポイントを押さえておくとお客さまからの支持が得られやすくなります。
お客さまからの希望商品の有無
お客さまから質問を受けた際の接客で注意すべきポイントを先に押さえておきましょう。
それは「既に商品を選んでいる」時の接客です。
このパターンは頻繁に起こりますよね?
- 「いつも〇〇を使ってるけど△△と比べてどうなの?」
- 「いつも〇〇を使っているけど、もっと効く薬はないの?」
という相談です。
この場合はもしお客さまが選んだ商品が間違っていたりより良い商品があっても、まずは肯定しましょう。
- ×「○○はお客さまの症状には効きませんよ。それより△△が効きます」
- 〇「その症状で〇〇を選ばれたのですね、以前に使われて効果があったのですか?」
絶対的に後者の方が会話が膨らみますし、好印象を持たれます。
いきなり否定から入る人の説明を素直に聞こうとする人は存在しません。
必ずどんな形であってもまずは「肯定」から入ってください。
肯定することでお客さまは心の障壁を下げて話を受け入れて下さいます。
実際にお客さまの認識間違いや誤解があることも多々ありますが、そのときは「〇〇だから△△と思われたんですね」「お話を聞いただけでもお辛いのがわかります」「わたしもお客さまの立場だったらそう感じると思います」などとワンクッション置いたうえで事実の説明をおこなうのがベターです。
お客さまに共感などを示さないのは、遥かに高い心の壁を理屈で飛び越えるようなものです。
お客さまにとっても登録販売者にとっても、そして店舗にとってもメリットはありません。
自身の経験や勉強の結果を活かして、必ず共感を示しましょう。
正攻法での商品提案
ではどんな流れで接客をおこなうのかを見ていきましょう。
まず第一に超正攻法の商品紹介です。
お客さまのお悩みをダイレクトに解消する接客です。
これは登録販売者なら誰でもできる(するべき)接客で、一般的なものです。
- 頭痛に解熱筋痛剤
- 関節痛にシップ剤
- 疲れにビタミン剤
これは登録販売者試験に合格し社内教育を受けつつ経験を積めば誰でもできるのでここでは割愛しますが、基本中の基本なのでここで躓く方はもう一度社内教育ツールや参考書などで勉強し直しましょう。
登録販売者ならではの商品提案
今回のコラムでもっとも伝えたいのは、登録販売者ならではの商品紹介です。
わたし達、登録販売者は「市販薬の販売もできるドラッグストア(医薬品コーナー)」店員です。
決して「市販薬限定」でも「薬剤師の劣化版」でもありません。
必ず店舗全体を把握し、医薬品の接客でも医薬品以外の商品を念頭に置いて接客をおこなって下さい。
我々の特徴は深さよりもフットワークです。我々にとってのフットワークとは、知識量とイコールなのです。
とくにヘルス売場を担当している方は注意が必要です。
自身の担当以外の商品知識が求められるため、納品や品出しの際は接客のネタ探しのつもりでおこなってみましょう。
知識の数だけ買い上げ点数が上がり、店舗のファンも増えます。
ファンが増えると接客機会も増え、好循環となるのです。
登録販売者は、オールマイティな店員になるべきです。
ではそれを踏まえたうえで、登録販売者のお客さま満足度を上げる接客事例を考えてみましょう。
接客テンプレート
お客さまとの接客は自分の中でテンプレートとしてまとめておくと便利です。
ここでは3パターン紹介しておきましょう。
お客さまの希望通りに販売する場合
お客さまが希望商品をお求めのときは、安全性が充分確認できた場合は常に肯定するのを忘れずに接客をおこないます。
流れは以下の通りです。
- お客さまから症状と選んだ商品を聞く
- 症状が商品と合っていたら肯定と共感をおこなう
- プラスでの知識を伝える
この場合は簡単に終わるのですが、聞かれたことに答えただけではファン化できません。
ここでさりげない一言を添えるのを忘れないでおきましょう。
- 風邪の時の食事アドバイス
- 頭痛の種類の見分け方
- 錠剤と粉剤の違い...など
このパターンは短時間で接客が終わるので、その分ワンポイントアドバイスをおこなう余裕があるはずです。
この一言でお客さまからの「ありがとう」が大幅に増えるのです。
店舗の中分類(風邪薬・胃腸薬・皮膚薬などのカテゴリごと)に、それぞれのワンポイントアドバイスを覚えておくとスムーズな接客がおこなえます。
お客さまの希望とは異なる商品を提案する場合
ではお客さまが選んだ商品が症状と合っていなかったときはどうするのでしょう。
わたしは以下のように対応しています。
- 客「のどが痛いからこの風邪薬でいいですか?」
- 店「他に症状はありますか?」
- ~他の症状、持病、服用中の薬の有無をお聞きします~
- 店「それならこの風邪薬で対応は可能です、よく効く成分が入っているんです」
- 客「ならこれにします」
- 店「ただ、今回の症状だったらこちらの薬でも同じ効果が期待できるんですよ」
- 客「どう違うんですか?」
- 店「この薬にはお客さまの症状には必要がない成分が入っていないんです」
- 店「だからこの風邪薬と比べて効果は同じで副作用リスクが少なくなるんです」
- 客「じゃあこっちの方がいいですね」
- 店「その分価格が安くなるのでドリンクを追加で購入するのが合理的ですね」
こうすると否定の言葉は最小限で商品を変更できますし、追加で商品を販売できます。
ちなみにこの事例は冬に活躍し、各社推奨品になりやすいドリンク剤も販売しやすい話法なので実践してみてください。
プラスαで商品を複数個提案する場合
上の例でも追加で商品を提案していますが、医薬品以外でもおすすめは可能です。
いくつか例を挙げてみましょう。
- 花粉症のお客さまに、床清掃用品
- 痔疾患のお客さまに、お尻用清浄剤
- 疲れ目のお客さまに、ホットアイマスク
- 肉体疲労のお客さまに、入浴剤
- 乾燥肌のお客さまに、ボディーソープ(クリーム)
- 睡眠導入剤のお客さまに、GABA系お菓子...など
挙げればいくらでも出てきます。
「それくらい知っている」と思う方、実践できていますか?
知識は頭に格納しているだけでは、宝の持ち腐れです。
アウトプットや実践をおこなって、漸く意味を持ちます。
お客さまとの接客時に「プラス1品」という付加価値を付けるだけで、ファン化は可能です。
そして「1品」は商品とは限りません。知識でも可能です。
- 客「じゃあこの薬にします」
- 店「あ、そうだお客さま、この薬は対症療法なので原因を少しでも少なくする商品があるんですよ」
- 客「そんなのがあるんですか?」
- 店「少々お待ちください、持ってきますね!」
(実際に持ってくると興味を持ってくれますよ)
このような商品の見つけ方のコツは「逆算」です。
他の部門の前出しや納品時に「付加価値」のある商品を見つけたら、その商品と医薬品を紐付けるのです。
上記の例も売場で逆算すると簡単に見つかります。
最近は健康志向の商品が多く「食品」「雑貨」「化粧品」のどれでも案外簡単に見つかるので視野を広く持って作業をおこないましょう。
目先の数百円の売上を追うのではなく、お客さまの意識をあなたや店舗に結びつけるのが
真の目的なのです。
明日から始めてみましょう!
「お客さま、あとこれもおすすめですよ!」
執筆者:ケイタ店長(登録販売者)
ドラッグストア勤務歴20年、一部上場企業2社で合計15年の店長経験を活かし、Twitterなどで登録販売者へのアドバイスや一般の方への生活改善情報の発信を行っている。Twitterフォロワー数約5,000人。
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