【現役ドラッグストア店長直伝】登販が共感力を磨く必要性<登録販売者のキャリア>
【現役ドラッグストア店長直伝】登販が共感力を磨く必要性<登録販売者のキャリア>
登録販売者としてお客さまと接する際に必要なのは、知識と「共感力」とよくいわれます。
共感することで寄り添う姿勢を示し、お客さまからの信頼を得ることができるからですね。
しかしこの「共感力」というのは個々で差があり、元々できる方も困難な方もいらっしゃいます。
どうしたら「共感力」が身に付くのでしょう。そして、そもそも「共感力」とは?
一緒に考えていきましょう。
目次
共感力とは?
登録販売者として薬の知識や話術を身につけ、店頭に立って接客したもののお客さまの反応がイマイチよくない。
それならと更に勉強して理論武装で接してもなかなか売れないし会話も弾まない...
こんな方も多いはずですが、恐らく不足しているのが「共感力」です。
まずは「共感」とは何か?という前提を考えてみましょう。
コンテンツから見る共感
今年前半にYOASOBIの「アイドル」が世界的にヒットしました。YouTubeでも2.7億回再生を超え、今年最大のヒットとなっています。
https://youtu.be/ZRtdQ81jPUQもうひとつ、YouTubeで「強風オールバック」という曲も約5000万回再生と大ヒットしています。替え歌がインスタント麺のCMソングにもなったのでYouTubeを観ない方も聴いたことがあると思います。
https://youtu.be/D6DVTLvOupEどちらも大ヒットしていますが、このふたつを聴いて皆さんはどう思いますか?
ここは音楽サイトではないので歌詞に目を向けると、そこには「共感力」という違いがあると考えます。
前者「アイドル」の歌詞は聞き手の共感力を刺激し、語り手も対照的な二者の感情が入り乱れています。
それに対して「強風オールバック」は『風が強くて大変』のみでその他は『外で鳩が暴れている』くらいです。
どちらもヒットはしましたが、歌詞を抜き出してみるとどちらが魅力的でしょうか?
音楽の構成やアニメーションを抜くと「強風オールバック」はコンテンツとして成立するのでしょうか?
歌詞だけでもひとつの作品として成立する「アイドル」に対して、恐らく「強風オールバック」は一般人の「X(旧Twitter)のツイート」に過ぎません。
(ちなみに私は「強風オールバック」の方が好きです)
恐らく「強風オールバック」はアニメーションやテンポの良さと一般的すぎる歌詞の相乗効果でヒットしたのだと思います(派生動画との相乗効果もあります)。
逆にいえばこのスタイルでないとこの世界観はヒットしないはずです。
そもそも共感とは
「共感」という言葉は『他者と喜怒哀楽の感情を共有すること』という意味です。
接客業においては、お客さまの辛さや喜びを共有することですね。
これが得意な方も不得意な方もいるでしょう。
実は私も共感力が不足しています。
映画を観ても小説を読んでも常に客観的な思考になり感情移入できないのです。
唯一共感できるとしたらシナリオがあるゲームです。
自分が「操作」して分身が実体験を行うコンテンツのみ、自然と共感力が出ます。
「アイドル」も中間でアイドルを羨む自虐パートがありますが、この「誰しもが感じる過去」や「実体験に基づくストーリー」は共感を得られやすいのです。
しかしそのストーリーが「強風オールバック」のようなありふれたものに振り切ると、それは特別なものではなく「風が強いですね」という説明に成り下がってしまいます。
私たち登録販売者は、お客さまのストーリーを拾い上げていく立場です。
では「アイドル」の語り手であるお客さまのストーリーを拾い上げるにはどうしたらいいでしょうか。
共感力がある人とない人の違い
では共感力がある人とない人では何が違うのでしょう。
登録販売者において最も大きいのは「問題解決志向」の有無です。
問題解決志向が強すぎる方は、自己主張も強くなりお客さまの情報や気持ちを聞き入れる間もなく話の論点が結論に向かってしまうのです。
接客時間が極端に短い方は「問題解決志向」が強く出ていないか、振り返ってみてください。
特に資格取得直後、新商品発売直後、推奨品販売時などは注意が必要ですし、自身でアウトプットしようと意気込んでいる時は注意が必要です。
正しい情報を伝えたい、よい商品をお勧めしたい、という気持ちは誰しもが持っているものです。それは正しい行動なので接客の後半に話題に出しましょう。
ヒーローは最後に得意技を出すものです。
共感力がない人の特徴
では「問題解決志向が強い人」以外の共感力が低い人の特徴を挙げつつ、どうしたら共感力が付くか考えてみましょう。
相手を否定してしまう
次に登録販売者としてありがちなのが「お客さまを否定」することです。
お客さまは様々な情報を登録販売者に提供し、アドバイスを求めに来店されます。
その情報のひとつひとつがすべてお客さまにとっては「自身に起こったこと」「自身で判断した結果」です。
結果、最終的に否定することでも頭ごなしに否定するのではなく、その経緯については寄り添った対応をすべきです。
(例)
「その薬で以前は楽になったから今回も使用したんですね! 以前の症状はよくなったから合っていたんでしょうね」
「今回も似た症状だったので使ったんですね。分かります、私もそうしてしまうと思います!」
お客さまの判断が間違っていた場合も、最初はできるだけお客さまに同調しましょう。
あなたもいきなり初対面の相手に否定されたら心に壁を作ってしまいませんか?
肯定は勢いよく、否定は徐々に行うのがコツです。
相手に感情を合わせられない
共感が苦手な人は「相手に感情を合わせられない」という特徴もあります。
これは簡単な話で、相手が喜んでいるときに喜び、悲しんでいる時に悲しむ、ということです。
喜怒哀楽の度合いは人それぞれで、そのスイッチも人それぞれなので、感情を操作することは非常に難しいのです。
私も店頭で20年お客さまからの相談を受けていますが、正直これが最も難しいですね。
初対面のお客さまの「辛さ」に心から共感するのは至難の業です。
演技すればいい...という人もいますが、それも難しいのです。
言い方は悪いですが、私のような「共感力のない大根役者」はどうしたらよいのでしょうか。
共感力を高めるには
共感力を高めていくためにはコツがあります。
これは接客だけではなく円滑なコミュニケーションを構築することにも使えるので、店舗内の人間関係にもよい影響を及ぼします。
勤務中はお客さまだけでなく仕事仲間に対しても意識してみましょう。
正論は一旦捨てる
登録販売者にありがちなのが「こうあるべき」という考え方です。
私たちが扱う商品は医薬品のため、お客さまの健康に直結します。
もちろん最終的には正論を提示しないと健康被害が起こる可能性があります。
登録販売者として「共感」と「正論」のスイッチを切り替える必要があるのです。
それはお客さまが「共感」を感じ取ったのを確認してからとなります。
正確にはお客さまにしかわかりません。
ただ、お客さまの表情や仕草から察することはできます。
これは会話の基本ですが、しっかりとお客さまの目を見て話して下さい。
よく商品を手に持ち視線を落としながら話をする方もいますが、そうではなく目の前のお客さまと会話してください。話し相手は商品ではありません。
正論を一旦捨ててお客さまの話を引き出し、共感を示すとお客さまの表情や仕草が緩む時があります。お客さまがあなたの共感を受け入れてくれた瞬間です。
商品ではなくお客さまと対話をしているとわかりますが、お客さまに受け入れられるまで正論は控えましょう。
お客さまの承認欲求を満たす
お客さまに共感することによってお客さまの承認欲求が満たされ、信頼関係が生まれていきます。
この承認欲求は実は「あいさつ」などから始まるのです。
仕事仲間では「名前で呼ぶ」ことも承認欲求に繋がっていきます。
この承認欲求の一歩手前を「存在承認」と呼びます。
わたしという「存在」が店員である登録販売者に「承認」された、という意味です。
要は、最初のあいさつから共感に繋がる感情のラリーが始まっているのです。
入店やすれ違いのあいさつも、全てが共感に繋がっているのです。
もしお客さまに共感がしにくい人も、最低限あいさつはしなければいけないといわれる理由がここにあります。
店内でお客さまの「共感」を得るチャンスは、思いのほか多いものなのです。
特にすれ違い時などはどんどんすれ違いあいさつを行いましょう。
接客の主人公はお客さまである
お客さまとの接客で熱心な登録販売者ほどその中心が「知識」になりがちなのですが、決して忘れてはいけないのは「接客の主人公はお客さま」ということです。
登録販売者でも知識でも商品でもなく、中心はお客さまなのです。
登録販売者も知識も商品も代替はありますが、お客さまは目の前にいるお客さましかいないのです。
決して履き違えてお客さまの背景を忘れ、業務としてお客さまと向き合ってはいけません。
その瞬間に「共感」は遠ざかってしまうのです。
お客さまからの情報を目を見て、正論を押さえて話を聞き、お客さまの反応を確認しながら知識でお客さまの生活を助ける補完を行うようにしましょう。
この積み重ねが、自身と店舗のファンをつくることにつながるのです。
お客さまは主人公であり「アイドル」の語り手でもあるのです。
お客さまに満足していただくコツ
では最後にお客さまに満足して頂くための具体的な方法を紹介しましょう。
お客さまからの好感度を上げるタイミングが存在するのです。
登録販売者の皆さんの助けになれば幸いです。
ピーク・エンドの法則
それが、人間は過去の記憶の中でその期間の「ピーク」と「最後」だけで判定してしまう、という法則で「ピーク・エンドの法則」と呼びます。
例えばドラッグストアでの買い物なら
「登録販売者の売場での接客がとてもよかった」
「最後のレジ接客がよかった」
というふたつの要素で今回の買い物の優劣を判断してしまう、というものです。
この場合、店内回遊中に「欠品があった」「売場が分かり辛い」などの不満点があっても、ピークとなる感情の高まりと最後のポイントの方がトータルの印象の大半を占めてしまうのです。
小売業以外を見ても花火大会は「ピーク」を「エンド」を持ってきますし、音楽もいわゆる「大サビ」はこれに当たります。
テーマパークでもいつでもできるのに閉園直前にパレードを行うのは「ピーク・エンドの法則」があるからです。
つまりドラッグストアでも「お客さまにとって最大の喜びが退店直前」だと満足度が高い、ということです。
では実際の接客においてどう「ピーク・エンドの法則」を使えばよいのでしょう?
登録販売者自身がレジに入っている場合は簡単で、最高ランクのレジ接客を行ったり、医薬品の接客をレジで行ってもよいでしょう。
もしかしたら医薬品以外でもアドバイスができるかもしれないので、レジはとても有用なポジションなのです。
もし登録販売者がレジではないのなら、余裕があればぜひ会計が終わって退店する直前のお客さまに声を掛けてみてください。
- (例)
- 「また次回来店時に効果をお聞かせくださいね!」
- 「先ほどはご相談いただきありがとうございました!」
- 「伝え忘れましたが実は~(有益情報)
こんな一言でも「ピーク・エンドの法則」でお客さまのイメージはぐっとよくなります。
そんなこと誰もやっていない...という声が聞こえてきそうですが、誰もやっていないから優位なのです。皆がやっていたら優位でも何でもありません。
ぜひ率先して行動し、お客さまの満足度を上げてください!
執筆者:ケイタ店長(登録販売者)
ドラッグストア勤務歴20年、一部上場企業2社で合計15年の店長経験を活かし、Twitterなどで登録販売者へのアドバイスや一般の方への生活改善情報の発信を行っている。Twitterフォロワー数約5,000人。
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