【登販向け】高血圧の人が飲んではいけない薬は?市販薬のすすめ方と注意点

高血圧のお客さま対応は、とくに新人の登録販売者が迷いやすい部分です。服用中のお薬などを確認したり、高血圧の人の服用が禁止されている成分を選ばないようにしたりと、考えなくてはならないことが多くありますよね。このコラムでは、高血圧に関する基本的な知識や、高血圧に注意が必要な成分、そして、高血圧のお客さまが服用可能な商品について解説します。少しずつ知識を増やして、落ち着いて対応できるようになりましょう。
目次
- ・登録販売者が知っておきたい高血圧に関する知識
- ・登録販売者必見!高血圧に注意が必要な成分
- ・登録販売者の接客に役立つ!高血圧のお客さまにおすすめできる商品
- ・まとめ|高血圧のお客さまに自信を持って対応できる登録販売者になろう
登録販売者が知っておきたい高血圧に関する知識

高血圧が引き起こす病気や高血圧の症状、治療など、高血圧に関する基本的な知識を確認しましょう。
高血圧が引き起こす病気
高血圧は様々な病気を引き起こしますが、その中で一番重大なものは、血管や心臓の病気です。たとえば、高血圧状態が長く続くことで、血管が硬くなって弾力性が失われ、動脈硬化を引き起こします。動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や脳梗塞などにつながることもあります。また、高血圧によって、血液を送り出すポンプの役割を担う心臓に負担がかかると、心不全になってしまうこともあるでしょう。
高血圧の症状
高血圧では、少し血圧が高いくらいでは自覚症状がほとんどありません。そのため、高血圧は別名「サイレントキラー(静かな暗殺者)」と呼ばれています。血圧がかなり高い場合、頭痛やめまい、肩こりなどが起きやすくなります。しかし、このような症状は血圧とは関係なく現れることが多いので、症状の有無に関わらず、検査・治療を受けることが大切です。
高血圧の原因
高血圧には、原因のはっきりしない本態性高血圧と、他の疾患や薬剤の副作用が原因で起こる二次性高血圧があります。日本人の高血圧の約90%が本態性高血圧で、遺伝や食塩の過剰摂取、肥満などさまざまな要因が組み合わさって起こります。一方、二次性高血圧は、ホルモン分泌異常や腎臓などの病気が原因で起こるものです。
高血圧の治療
高血圧の治療の基本は、食事療法・運動療法です。それらをきちんとおこなったうえで、血圧の下がり具合が不十分であれば、薬を使います。高血圧の治療薬には非常に多くの種類がありますが、医療用医薬品による治療が基本となることは覚えておきましょう。OTC(一般用医薬品)の中には「高血圧症に伴う諸症状」を効能効果として持つものもありますが、高血圧そのものへの治療効果はないため、注意してください。
登録販売者必見!高血圧に注意が必要な成分

添付文書の「使用上の注意」において、「高血圧」に関する記載のある成分について解説します。高血圧でとくに注意したい成分には、アドレナリン作動成分やイブプロフェン、ベクロメタゾンプロピオン酸エステル、グリチルリチン酸などがあります。
アドレナリン作動成分
アドレナリン作動成分は、主に鼻詰まりに用いられ、かぜ薬や鼻炎薬によく含まれている成分です。交感神経興奮作用により血圧を上昇させ、高血圧を悪化させるおそれがあるため、プソイドエフェドリン塩酸塩は「してはいけないこと」、それ以外のアドレナリン作動成分は「相談すること」になっています。
イブプロフェン
イブプロフェンは、商品によって高血圧の人への使用が禁止されているものがあるので注意が必要です。たとえば、イブプロフェンがアセトアミノフェンなどの他の解熱鎮痛成分と一緒に配合されている商品や、イブプロフェンの1回服用量が200mgの商品では、高血圧の人は「してはいけないこと」として記載されています。商品によって記載内容がまちまちであるため、判断しかねる時は添付文書を確認しましょう。
ベクロメタゾンプロピオン酸エステル(点鼻薬)
ベクロメタゾンプロピオン酸エステルは、点鼻薬に配合されるステロイド性抗炎症成分です。ステロイド点鼻薬は、アレルギー性鼻炎の第一選択薬として使われます。
ベクロメタゾンプロピオン酸エステルは、高血圧の人は「してはいけないこと」とされているため、注意が必要です。なお、同じステロイド性抗炎症成分のフルチカゾンプロピオン酸エステルは、「使用上の注意」に高血圧に関する記載がありません。そのため、高血圧の方にステロイド点鼻薬をすすめる場合、フルチカゾンプロピオン酸エステルが配合された「フルナーゼ点鼻薬<季節性アレルギー専用>」を選びましょう。
グリチルリチン酸
グリチルリチン酸は、抗炎症成分です。大量に使用すると、偽アルドステロン症(ナトリウム貯留・カリウム排泄促進により、むくみなどを引き起こす副作用)を引き起こすリスクがあるため、高血圧の人は「相談すること」になっています。また、漢方薬にはカンゾウという生薬が含まれることが多くありますが、カンゾウにもグリチルリチン酸が含まれるため、同様に注意が必要です。
高血圧に関する「使用上の注意」のまとめ
ここまでの情報をまとめると、以下の通りになります。
<してはいけないこと>
薬効群、成分 | 理由 |
---|---|
プソイドエフェドリン塩酸塩 | 交感神経興奮作用により血圧を上昇させ、高血圧を悪化させるおそれがあるため |
イブプロフェン | 血圧を上昇させて、高血圧を悪化させるおそれがあるため |
ベクロメタゾンプロピオン酸エステル |
<相談すること>
薬効群、成分 | 理由 |
---|---|
アドレナリン作動成分が配合された鼻炎用点鼻薬 | 交感神経興奮作用により血圧を上昇させ、高血圧を悪化させるおそれがあるため |
メチルエフェドリン塩酸塩、トリメトキノール塩酸塩水和物、フェニレフリン塩酸塩、メトキシフェナミン塩酸塩等のアドレナリン作動成分 | |
マオウ | |
グリチルリチン酸二カリウム、グリチルレチン酸、カンゾウ等のグリチルリチン酸を含む成分(1日用量がグリチルリチン酸として40mg以上、又はカンゾウとして1g以上を含有する場合) | 大量に使用するとナトリウム貯留、カリウム排泄促進が起こり、むくみ(浮腫)等の症状が現れ、高血圧を悪化させるおそれがあるため |
登録販売者の接客に役立つ!高血圧のお客さまにおすすめできる商品

「使用上の注意」の「してはいけないこと」や「相談すること」に、高血圧の人に関する記載のない商品を把握しておきましょう。ただし、医療用医薬品を服用中の方は、薬の飲み合わせを確認する必要があります。販売前に、店舗の薬剤師やかかりつけの医師・薬剤師に相談するようアドバイスしてください。
ここでは、かぜ薬、解熱鎮痛薬、鼻炎用内服薬、ステロイド点鼻薬の各薬効グループにおいて、高血圧の人に関する記載のない商品をピックアップし、表でまとめました。
かぜ薬
- 商品名
- 成分
- ストナファミリー
- アセトアミノフェン、クロルフェニラミンマレイン酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物、グアイフェネシン
- パイロンPL錠ゴールド
- アセトアミノフェン、サリチルアミド、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物、ブロムヘキシン塩酸塩、無水カフェイン
- パブロンSゴールドW錠
- アセトアミノフェン、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジヒドロコデインリン酸塩、アンブロキソール塩酸塩、L-カルボシステイン、リボフラビン(ビタミンB2)
- パブロン50錠
- アセトアミノフェン、グアヤコールスルホン酸カリウム、麦門冬湯エキス
解熱鎮痛薬
- 商品名
- 成分
- タイレノールA、カロナールA
- アセトアミノフェン
- イブ、リングルアイビー
- イブプロフェン(1回服用量150mg)
鼻炎用内服薬
- 商品名
- 成分
- クラリチンEX
- ロラタジン
- アレグラFX
- フェキソフェナジン塩酸塩
- アレジオン20
- エピナスチン塩酸塩
ステロイド点鼻薬
- 商品名
- 成分
- フルナーゼ点鼻薬<季節性アレルギー専用>
- フルチカゾンプロピオン酸エステル
まとめ|高血圧のお客さまに自信を持って対応できる登録販売者になろう
高血圧のお客さま対応では、「高血圧の方が服用できない成分」と「服用できる商品」を押さえておくことが非常に大切です。自信がない時は、まずは落ち着いて添付文書を確認し、それでも判断できなければ、先輩の登録販売者や薬剤師に相談してくださいね。
参考:日本臨床内科医会 「高血圧」
参考:NPO法人日本高血圧学会 「高血圧の話」

執筆者:村松 早織(薬剤師・登録販売者講師)
株式会社東京マキア 代表取締役
登録販売者や受験生向けの講義を中心に事業を展開
X(旧:Twitter)、YouTube等のSNSでは、のべ1万人を超えるフォロワー・チャンネル登録者に向けて、OTC医薬品についての情報発信をおこなっている。
■著書
- 医薬品暗記帳 医薬品登録販売者試験絶対合格! 「試験問題作成に関する手引き 第3章」徹底攻略(金芳堂)
- 薬機法暗記帳 医薬品登録販売者試験絶対合格! 「試験問題作成に関する手引き 第4章」(金芳堂)
- これで完成! 登録販売者 全国過去問題集 2023年度版(KADOKAWA)
- 村松早織の登録販売者 合格のオキテ100(KADOKAWA)
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