【現役ドラッグストア店長直伝】店頭で分からないときの対応<登録販売者のキャリア>
【現役ドラッグストア店長直伝】店頭で分からないときの対応<登録販売者のキャリア>
登録販売者として市販薬の接客で「分からないこと」があって焦ったことはありませんか?
成分が分かってもどの商品に配合されているか分からない...
一通り勉強はしたけど初めて聞いた症状で対応方法が分からない...
症状が複数あって対応する商品が分からない...
現場でお客様の対応をしていると、多くの「分からない」に遭遇するはずです。
今回はその「分からない」を乗り越える方法を考えていきましょう!
目次
最も避けなければいけないこと
お客様が登録販売者に相談する時や、登録販売者がお客様にお声がけする時には決まって「お悩み」が存在します。
最もしてはいけないことは「お客様の期待を裏切る」ことですね。
それは「お悩み」をどう解決していくか、その道筋がお客様に納得して頂けるのか、ということです。
お客様にとって不利益にならないために、「してはいけないこと」を考えてみましょう。
知っているふりをする
最もしてはいけない事は「知っているふりをする」です。
知らない事や分からない事を隠そうとして知ったかぶりをする事は健康被害を招きかねませんし、店舗の信用を大きく落とすことになります。
私も店舗勤務を20年経験して頻度はかなり少なくなりましたが、分からない事は正直に言えばお客様も納得して頂けます。
ただの一度たりともお叱りを受けたことはありませんので安心してください。
分からない時は「勉強中でお客様に不確かな事は申し上げられませんのでお待ち頂けますか?」とお伝えし、調べたり聞いたりしてお客様にはより正しい情報をお伝えしてください。
分からない事は分からないと伝える事はお客様にとっても安心材料になりますし、必ず顔も覚えて頂けます。
その後に「勉強して詳しくなったね」と、お褒めの言葉を頂くことだって可能です。
憶測で対応する
そして根拠がない憶測や「こじつけ」解釈も厳禁です。
これは意図的でなくても誰でも起こり得ることなので特に注意しなければいけません。
特に次のような勘違いや思い込みに注意してください。
- この商品には〇〇が配合されているから効能効果に△△が記載されているだろう
- お客様がおっしゃっているのはご自身の事だろう
- その薬は確か取り扱っていないはず
お客様との会話で注意しなければいけないのは「先入観」「思い込み」や「勘違い」です。
特にお客様の状況は思い込みや先入観が発生しやすいので注意する必要があります。
ご相談内容はご自身の事か?
持病や服用中の薬は本当にないのか?
私も持病はないと言われ「血圧や血糖値は大丈夫ですか?」と聞くと実は高血圧だった、ということは数えきれないほど経験があります。
念には念を入れて聞いておく必要があります。
横断歩道を渡る時も「右・左・右」と確認をしますよね?
車が来ないと思った時こそ、確認してみましょう。
こんなところにも「ヒヤリハット」は存在します。
言ってはいけないワード
様々な情報をクリアし無事にお客様に情報提供できても、思いがけない言葉で信頼度が下がることがあります。
それが「と思います」です。
「お客様の疲れの原因は〇〇だと思います!」
「このビタミン剤が効くと思います!」
実際に声に出して言ってみてください。
どうでしょう、説得力ありますか?
私が客として資格者にこう言われたら内容は入ってきません。
「憶測で勧めてくるのか?」と感じます。
上記の内容なら、
「お客様の疲れの原因は〇〇の可能性が高いですね」
「それならこのビタミン剤が効きます、なぜなら〜...
どうでしょう、同じ内容でもこの方が説得力がありますよね?
「思います」が口癖になっている方が多いのでぜひ直してください。
私も異動のたびに勤務する登録販売者全員に直すよう指示しています。
自信を持った口調で堂々と接客してみてください。
雰囲気でも説得力は増すものです。
分からない時の反応方法
経験によって差はあるでしょうが、当然分からない時も出てきます。
お客様との会話の中で、未経験であったり想定外の相談を受けたりすると頭の中が真っ白になってしまう方もいるのではないでしょうか。
そんな時の対応方法を考えてみましょう。
分からないことは「悪」ではない
自分には分からないという事をお客様に伝えられない方もいるはずです。
とても気持ちは分かります。
しかし「分からない」「知らない」は悪ではありません。
資格者にとっての悪は「すぐに調べない」ことなのです。
- 後で調べよう
- 帰ってから調べよう
これらは忘れてしまう可能性もありますし、お客様から聞いた悩みの鮮度が落ちるため記憶が定着しにくいのです。
接客経験がある方なら分かると思いますが、お客様のお悩みを直接聞いた上で辿り着いた知識は受験勉強より覚えているのではないでしょうか?
登録販売者は試験勉強と実務内容がなかなかリンクしませんが、それは登録販売者だけではなく他の資格も同様です。
実務経験が長いのに実力がないと感じている方も、問題ありません。
ひとつでも知識や経験が増えれば、それは成長です。
成長速度は個人差が大きいので気にせずに進みましょう。
お客様に素直に伝える
分からない時の対応は「正直にお伝えする」他にはありません。
その後は「調べる」か「他の資格者に聞く」となります。
常に分からなかった時に備えて自分の中でフローチャートを準備しておくのがお勧めです。
調べるツールを会社が用意している方は手元に置くかデジタルツールであればショートカットを作成しておきましょう。
ツールがない方はできるのであれば会社PCに大手製薬会社のHPをブックマークしてください。対応可能な時間であれば、メーカーの相談ダイヤルも活用できます。
相談できる資格者が他店にいるのなら、店舗の電話番号を仕事用メモに書いて携帯してください。必ず役に立ちます。
どちらもショートカットはお客様をお待たせさせないためでもあります。
お待たせしない姿勢と正確な情報を伝えるため、という誠実さが伝われば不満を持たれる事はありません。
分からなかったら「正直に伝える」「すぐ調べる」は最重要です。
最善は「安全策」
分からないことは伝えて正確な情報をお伝えするためにしっかりと調べるという事は、お客様に損害を与えてはいけないという事に他なりません。
お客様への健康被害を防ぐ事を最優先に考えれば分からない事をごまかす等の行動は出ないはずです。
店舗では推奨品等の実績を追う責務があるため全てが理想通りに進むわけではないのですが、それでもドラッグストアがセーフティーネットとしての役割がある以上はお客様の安全を最優先にする義務があります。
全ては「お客様のQOL向上の手助けをする」という事を念頭に置いてお客様対応をすべきです。
失敗をポジティブに受け取る方法
しかしそうは言っても失敗は付きものです。
お客様へのヒアリング不足や純粋な知識不足などが原因で、もっと効果的な商品やリスクの少ない商品があったのに...と悔やんだ経験がある方も少なくないはずです。
失敗は失敗として受け入れ反省し、次に活かすための考え方を紹介します。
生きた疑問は最強の学び
登録販売者の皆さんは全員試験勉強を経験し合格したのですが、この試験勉強は完全な「受動的」な学びです。
「受動的な学び」とは、自分の意思ではなく他の力で動かされている学びのことです。
「いや、登録販売者は自分の意思で受験した」という方もいるでしょうが、ここでの受動的という言葉は「試験に勉強させられている」という意味です。
どんな事も、受動的だと記憶が定着しないですし血肉となりません。
学びは「能動的」にしないといけません。
「能動的」とは「自分から積極的に行動を起こす」という意味です。
つまり、自分自身の意思で学ばないと知識は定着しにくいのです。
お客様との接客の中でひとつでも多くの「なぜ?」を集め、目の前のお客様のQOLを向上させるために「生きた疑問」を解決することが「能動的な学習」であり、お客様から支持される登録販売者となるための正しい努力なのです。
これは会社指示の教育や参考書ではなかなか身に付かないものです。
職人のような日々の積み重ねが実力となっていくのです。
誰でも素人から始まる
どんなジャンルでもそうですが、誰でも素人の期間は存在します。
医師でも薬剤師でもそうなのです。
どんな資格者も現場に出た時は「受動的な学び」しかしていないので実力不足になってしまいます。これは仕方がありません。
医師や薬剤師はそれを予め防ぐために実習がありますが、我々登録販売者には実習は実質的にはありません。
だから「能動的な学習」が必要となるのです。
現場に出たら誰でも初心者なので必要以上に心配することはありません。
自動車運転もそうですし学校でも勉強内容もそうですが、勉強内容はあくまでも骨組みであって血肉ではありません。
経験し学ぶことで血肉となるので気にしなくても大丈夫です。
経験が短くても長くても、一歩ずつ確実に前進する必要があります。
私も毎日店舗で「なぜ?」を探して解決しています。
20年経っても、探し続けているのです。
自己成長の極意
最も自分が成長するために必要な方法は何でしょうか、考えてみましょう。
ここでは具体的に2つの方法を紹介します。
最も刺さる質問方法
私も店舗スタッフから質問される時が多々ありますが、質問が上手なスタッフと苦手なスタッフがいます。
質問が上手なスタッフは実績も上がりますし、接客を聞いていても上達していくのが実感できるのです。
そんな質問上手なスタッフに共通しているのは「具体的な質問をすること」なのです。
例えば次月の推奨品の特徴を聞くとします。
<質問が苦手なスタッフ>
「来月推奨品の〇〇の売り方を教えて下さい」
「〇〇ってどう売ったらいいんですか?」
これだと私も困ってしまいます。どう答えていいか質問の幅が広すぎて分からないのです。
質問するときは相手の時間を奪っているという自覚を持って、具体的かつ端的に聞かないといけません。
<質問が上手なスタッフ>
「来月推奨品の〇〇は△△が配合されているので☆☆の症状がある人に勧める、という事ですか?」
「〇〇って△△が配合されているので☆☆の方にお勧めしようと思うのですが、店長はどんな方にお勧めしますか?」
こう質問されると、答える側もあなたがどんなところに疑問を持っていてどこが分からないかが把握できます。
相手の時間を奪わないというメリットは様々な効果があります。
- 相手が質問に応じてくれやすくなる
- お客様との接客時にも具体性をもった問いかけができる
- 自分の中で疑問が具体化できる
最後の「疑問の具体化」は特に重要で、記憶に定着しやすくなる上にこの次に挙げる「アウトプット」が容易になるのです。
最も記憶が定着する方法
最も記憶が定着するのはこのコラムでも再三書いていますが「即アウトプット」です。
せっかく知識という武器を手に入れたのですから、使いましょう!
先に書いた具体化された疑問は能動的であるためアウトプット向きなのです。
逆に受験勉強の知識は受動的な知識のためアウトプットには向いていません。
受動的な知識、つまり受験勉強の知識は「骨」に当たるため、お客様に向けるものではないのです。
骨の上に能動的な知識をかぶせる努力を行うのが最も実力が付きます。
お客様の立場に立ち共感の上で考えるということは非常に能動的な考え方なので、これを繰り返す事で学ぶ力も付くのです。
毎日来店して頂けるお客様の中でも接客機会があるのはほんの一部です。
せっかくお声掛け頂いたお客様とこちらからのお声掛けに応じて頂いたお客様のためにも、ひとつでも多く生きた知識を身につけて下さい!
執筆者:ケイタ店長(登録販売者)
ドラッグストア勤務歴20年、一部上場企業2社で合計15年の店長経験を活かし、Twitterなどで登録販売者へのアドバイスや一般の方への生活改善情報の発信を行っている。Twitterフォロワー数約5,000人。
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