【現役ドラッグストア店長直伝】登録販売者のスキマ時間活用法<登録販売者のキャリア>
【現役ドラッグストア店長直伝】登録販売者のスキマ時間活用法<登録販売者のキャリア>
7月に入りドラッグストア業界も夏季商戦に突入しました。
今年も猛暑になりそうなので店舗勤務の登録販売者の皆さんも多忙を極めていると思います。
こうなると登録販売者としてスキルアップするための学習時間を捻出するのも一苦労している方も多いはずです。
私もいわゆる「勉強」嫌いだったため、四苦八苦して自己流で勉強法を試していました。
今回は毎日の業務でのスキマ時間活用法をお伝えします。
ひとつでも皆さんの知識を増やす力になれば幸いです。
目次
好奇心を作り上げるためには
学生時代もそうですが、ほとんどの方は「好奇心」がないとなかなか知識が頭に入らないか入っても定着しません。
この好奇心を持てない時は、身近なものと結びつけるのがオススメです。
その方法を少し取り上げてみましょう。
奉仕の心を好奇心に変換する
「成分」に興味が持てなくても、人を助けるという大義名分があれば興味を持てることもあります。
それは家族でも友人でもお客さまでもかまいません。できればリアルに悩んでいる事があればその方が身に付くはずです。
「危機感」や「親密」な思考は否が応でも好奇心をかき立てるトリガーになり得ます。
「お母さんのために血圧が上がりにくい成分を勉強しよう」
「パートナーの持病で使ってはいけない成分を覚えよう」
ただ闇雲に成分や商品の勉強をするのではなく、こうした動機付けをすることで知識の吸収スピードは間違いなく上がります。
好奇心を積み上げるには
一部でも好奇心を掴んだらそれを横展開してみましょう。
一気におこなうとせっかく膨らんだ好奇心が萎んでしまうので少しずつ横展開をおこないます。
これは具体的な商品と合わせて覚えていくべきです。
「血圧が高いお母さんは食生活で困っているだろうからサポートできるトクホを選ぼう」
「このトクホってどんな成分なんだろう、どんな作用をするんだろう」
「市販薬で同じような働きをする成分ってないのかな」
「どうして市販薬のこの成分は高血圧の人は禁忌なんだろう」
「具体的にどんな商品群がダメなんだろう」
これはあくまで一例ですが、商品や成分が覚えられないスタッフを見ているとこのような「思考の横展開」が苦手な方が多いと感じます。
実はドラッグストアは「雑多な思考の横展開」が有効な業界でもあるのです。
ネガティブイメージで語られがちな思考が逸れがちな方にとっては逆に優位でもあると考えます。
1を2に。2を3に。
一気に10にするのではなく関連付けて横展開をおこなうことで好奇心と知識は積み上がり、経験となって実力につながるのです。
ペルソナを設定して仮想接客をおこなう
皆さんは「ペルソナ」という言葉をご存じですか?
様々な業界で使われている言葉ですが、ビジネス領域では「商品やサービスを提供する際、主にどのような顧客に向けたものであるか、その具体的な人物像を設定すること」という意味です。
よくわからない...という方もいると思いますが、皆さんが勤務している会社も経営上の「ペルソナ設定」を必ずしています。
仮想の個人を設定し、その人をメインターゲットとして商品選定や棚割や販促を設定するのです。
おそらく
「メインターゲットは36歳女性。家族構成は夫が38歳会社員、子供が2名で中学1年生男児と小学4年生女児。収入は共働きで世帯年収700万円」
といった具体的な設定があるはずです。
この「ペルソナ」を学習の際に設定するのも有効です。
(例)
「50歳女性、糖尿病と不眠で通院していて薬を処方されているAさん」
このAさんのQOL(生活の質)向上に向けてドラッグストア店頭にある商品で仮想接客をおこないます。
といってもこれを元に机に向かって勉強しましょう!という話ではありません。
日々の「スキマ時間」にAさんのQOL向上に向けた思考をおこないます。
10秒を積み重ねる方法
ではどうしたら「スキマ時間」を捻出できるのでしょうか。
仕事中もプライベートも、そんな時間がない方がほとんどでしょう。
改めて机に向かうのではなく、日々の業務の中で思考を少し変えてみましょう。
納品作業は知識の宝庫
皆さんは「納品作業」をしますよね。
勤務時間で納品しない方も、補充作業や前出しや期限チェックなど、必ず何らかの形で商品を手に取ることがあるはずです。
この「強制的に商品に触れる」のは最強のインプットのチャンスなのです。
だってそうでしょう?誰が興味もない商品を手に取りますか?
これはドラッグストア店員に与えられたチャンスなのです。活かさない手はありません。
ここで出てくるのが「身近なひと」であり「ペルソナ設定」なのです。
必ず納品作業時にはこの「仮想の相手」と一緒に作業をおこないます。
そう、脳内で会話をしながら作業をおこなうのがベストです。
余裕があれば商品の成分欄を見るとなおさらよいですが、知識との答え合わせをおこないながらでも可能です。
「この胃薬は抗コリン作用があるからダメだよね」
「こっちの風邪薬は抗ヒスタミン剤が入っていなかったはずだからお母さんも大丈夫」
「糖尿病のAさんにもこの飲料は大丈夫なんだ」
「お母さん、このスナック菓子は思いのほか塩分が凄いから止めた方がいいね」
商品ジャンルは医薬品やサプリメント以外でも何でも可能です。
「この洗剤は敏感肌のお父さんに合っているかも」
「この入浴剤は冷え性のおばあちゃんに向いているかも」
「具体性」と「好奇心」は知識の吸収を何倍にも高め、机に向かう学習の数倍の効果を生み出すことも可能です。
妄想力を発揮せよ
このように、様々な業務を通じて知識を吸収するのに便利なのが「妄想力」です。
シチュエーションに応じて登場人物を変化させると、実際の接客機会においても
「これはお母さんの事例だ」
「リアルAさんだ!」
となる機会も現れます。
行動と体験を伴う事で、記憶は吸収され定着します。
ここでいう「妄想」は記憶定着のための手段なので、記憶が苦手な方はぜひ実践してみてください。
なお、必ず心の中で呟いてくださいね。
作業中の独り言にならないように気をつけてください。
レジでの声掛けは最強
中にはレジ業務が多くてそれどころではない、という方も多いはずです。
もちろん、レジ業務の中でも学習は可能です。
レジ業務の利点は「リアルのお客さま」と「半強制的」に接客できることです。
混雑時は避けるべきですが、レジが途切れそうな時はぜひお客さまに話しかけてみましょう。
とくに「濫用等のおそれのある医薬品」対応時は大チャンスです。
数人にひとりは話が膨らむので「リスクが少ない薬を紹介できるかもしれないので症状をお聞かせいただきませんか?」と聞けば話していただけます。
ここでの注意点はただ一つ「お客さまの購入品についていきなり話題にしないこと」です。
必ずワンクッション挟んでお客さまの心のハードルを下げる必要があります。
「ポイントカードをお持ちですか」
「雨の中ご来店いただきありがとうございます」
メーカーから提供のサンプルや販促品(お子さま用のうちわなど)をお渡しして話のきっかけにするのもいいですね。
ここからお客さまの需要を引き出します。
殺虫剤でも、洗剤でも、食品でも、お客さまの悩みを引き出してみて下さい。
解決しなくても聞くだけでOKです。
お客さまは話して満足感を得ることができますし、あなたは悩みの実例を知ることができます。
その悩みの解決法を考え、知識の血肉とするのです。
インターネットの活用法と注意点
現在、調べ物はインターネットが主流で活用できれば非常に効率がいいのですが、問題点も多々あります。
それぞれの活用法と注意点を見ていきましょう。
オンラインのメリットとデメリット
オンラインでのインプットの最大のメリットは利便性とコストです。
スマホで検索すればすぐ答えらしきものが出てきますし、有料サイトに登録さえしなければ無料です(通信費は除く)。
それに対しオフラインは本を購入したり借りたりする必要がありますし、資格者に質問しようにも相手の時間を奪ってしまいます。
対してデメリットは情報の信頼性です。
とくに健康情報は誤っていたり不正確な情報が溢れていたりします。
発信者が薬剤師でも医師でも教授でも、正確とは限りません。
これは例えば警察官や弁護士が全員法令順守するとは限らないことと同じです。
情報の受け取り側が取捨選択をできるかどうかが大きな問題です。
誤った情報を掴まないようにするコツを挙げていきます。
SNSの活用法
TwitterやInstagramなどが盛んで最近も新しく公開されたThreadsが話題になるなど、各SNSが生活には必需となっています。
ここから薬を含む健康情報を得ようとするのは間違ってはいませんが、危険性もあります。
Twitterを例にとり説明すると、あなたのスマホに表示される情報は「話題のツイート」「フォローした人」「フォローした人が反応したツイート」などだからです。
つまり、あなたがフォローした専門家全員が100%正確な情報を発信していても、あなたがフォローしている人が反応した「誤った情報」が、あなたのTwitterタイムラインに表示されてしまうということです。
人は衝撃的な情報や、自分にとって都合のいい情報を記憶し信じてしまう特性があります。
これを「確証バイアス」と呼びます。
「高血圧で減塩療法が辛い」と感じているときに「塩を摂取すると健康になれる」などという情報を目にするとそれが正しい...と思い込んでしまう、といったものです。
あなたはお客さまから見たら「資格を持った発信者」なので、科学に基づく事実を発信し、お客さまのQOLを向上させる責務があります。
ここでの情報の取捨選択方法は「複数の情報の発信源をたどる」ことです。
どんな情報でもそれが正しいのなら、複数の発信がされているはずです。
その情報の発信源をたどりましょう。
たとえ権威がある発信者でも間違いは存在します。
正確な情報は元をたどると論文にたどりつきます。
これが複数存在したら信頼度は上がります。
その論文が理解できるか...ではなく、論文自体が存在するかどうかを確認しましょう。
SNSは間違いも非常に多いプラットフォームです。
情報の取捨選択力を上げるとインプット力は格段に上がります。
YouTubeは除外すべし
動画媒体という面ではYouTubeも人気です。
しかし健康情報の勉強ではYouTubeは向いていません。
これはYouTubeというプラットフォームの性質が原因です。
なぜなら、YouTubeは広告事業なのです。
動画を視聴すると広告が流れる事で発信者に収益が入ります。
YouTubeと発信者は動画を視聴されないと儲からないため、インパクトのあるサムネイルや内容で煽るのです。
このため、広告収益の拡大を狙う動画は、再生数を稼ぐため大げさな表現になりがちです。インパクトを重視しすぎた結果、虚偽の内容が混ざることもあります。
しかし、登録販売者を始めとした医療従事者向けに作られた動画なら、視聴するあなた自身の知識で、内容の真偽を見分けることができるので、有用な情報を選別して受け取ることができます。
YouTubeの内容は「発信者がすべて」です。
虚偽・誇大表現動画を鵜呑みにしないようにしましょう。
最強は「即、アウトプット」
今回はスキマ時間を活かした知識のインプット方法をお伝えしました。
しかしインプットだけでは知識は定着しません。
知識はアウトプットしてこそ定着します。
お客さまでも、プライベートでも、SNSでも構いません。
頭に入れた知識は、即アウトプットを行ってください。
そしてアウトプットをした相手の反応から、新たなインプットの要因が生まれるのです。
これを繰り返す経験こそが、真の実務経験だと感じます。
私は店頭で20年勤務をしていますが、お客さまに聞かれて全くわからないことはほぼありません。
それはある程度のお客さまの悩みのパターンを今までに経験しているからで、私が賢いわけでも優れているからでもないのです。
経験は一朝一夕では成し遂げられません。
皆さんが一歩、半歩でも前に進める事を願っています!
執筆者:ケイタ店長(登録販売者)
ドラッグストア勤務歴20年、一部上場企業2社で合計15年の店長経験を活かし、Twitterなどで登録販売者へのアドバイスや一般の方への生活改善情報の発信を行っている。Twitterフォロワー数約5,000人。
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