【登販向けに解説】ドラッグストア業界の現状課題と対策を知っておこう!

こんにちは、登録販売者転職のアポプラス登販ナビライターチームです。
ドラッグストア業界は急速に成長し、地域社会の健康を支える重要な役割を担っています。しかし、その成長に伴い、地域ごとの薬剤師偏在や人材不足、デジタル化の遅れなど、さまざまな課題が浮き彫りになっています。業界には、これらを解決するための取り組みが求められているのです。
本記事では、ドラッグストア業界が直面する課題と、解決に向けた業界の具体的な取り組みについて解説します。登録販売者として業界の変化に適応し自身のキャリアの展望を見据えるためにも、業界の現状を理解し、今後の発展に向けた取り組みについての知識を深めましょう。
目次
ドラッグストア業界が抱える課題

ドラッグストア業界は拡大を続け、地域社会の健康を支える重要な役割を果たしています。しかし、その急速な成長の裏で、さまざまな課題が浮き彫りになっています。とくに、薬剤師の地域偏在や人材不足、デジタル化の遅れなど、店舗運営に大きな影響をおよぼす問題が顕著です。ここでは、ドラッグストア業界が抱える課題を4つ紹介します。
薬剤師の地域偏在
ドラッグストアの市場拡大に伴い、店舗や薬剤師の数は増加し続けているものの、地域ごとの薬剤師数に大きな偏りがある現状です。
厚生労働省が2022年に実施した調査の結果によると、徳島県や東京都のように人口10万人あたりの薬剤師数が平均を大きく上回る地域がある一方で、沖縄県や福井県のように大幅に下回る地域も存在しているのです。
地域間のバランスを調整し、どこに住んでいても薬剤師による適切なサポートを受けられる仕組みづくりが求められています。
参考:厚生労働省「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況 3 薬剤師」
参考:薬剤師は都市部に集まりすぎ?過剰と言われている薬剤師の本当の実態とは・・?
登録販売者や薬剤師の人材不足
ドラッグストアの市場拡大に伴い店舗数は年々増加していますが、それに比例した登録販売者や薬剤師の人材確保は難航している現状があります。
2020年に株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所によっておこなわれた調査によると、薬剤師免許を持っている人のうち無職である人は11,824名、医薬品関連以外の業種で働いている人は7,638名です。合わせて薬剤師免許を持っている人のうち約6%を占め、どちらも増加の傾向にあります。こうした「潜在薬剤師」の増加がドラッグストアの人材不足にもつながっているのです。
また、人手不足が深刻化している職場では、スタッフが過剰な残業を強いられたり、希望する休日が確保できなかったりするため、働き手のモチベーションの低下や体調面への影響が懸念されます。結果として、離職者が増加し、さらに人手不足が深刻化するという悪循環を引き起こす可能性があります。
参考:株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所「令和4年度厚生労働省医薬・生活衛生局総務課委託事業 薬剤師確保のための調査・検討事業 薬剤師確保計画策定ガイドライン作成のための 調査・検討事業 報告書」
顧客管理や在庫管理のデジタル化の遅れ
ドラッグストア業界において、顧客管理や在庫管理を効率化するためのシステムの導入は重要な課題です。近年、多くの店舗がPOSシステムやデータ分析ツールを導入していますが、これらのシステムを十分に活用しきれていない店舗も少なくありません。
顧客ニーズに迅速に応えるために、購買履歴や需要傾向を把握し、適切な商品をタイムリーに提供する仕組みが求められています。しかし、現場では在庫管理が手作業に依存しているケースもあり、欠品や過剰在庫のリスクが増大するという課題が見られます。
ITリテラシーの低さ
IT技術の活用が進む中で、ドラッグストア業界では従業員のITリテラシーの低さが障壁となることがあります。新しい技術やツールを導入した場合でも、スタッフが操作方法や活用法を十分に理解できていないために、その効果が発揮されないケースが見受けられます。
年齢層が幅広い職場ではITスキルにばらつきがあり、全員が均一に対応できる環境を整えることが難しい現状があるようです。課題を解決するためには、基礎的なIT教育の充実や、段階的なスキルアップを促すプログラムを導入することが大切です。
課題解決に向けた業界の取り組み

課題を克服するため、ドラッグストア業界ではさまざまな取り組みが進められています。ITツールの導入や業務の効率化、人材確保のための待遇改善など、持続可能な発展を目指した具体的な対策が模索されているのです。ここでは、課題解決に向けたドラッグストア業界の取り組みを4つ紹介します。
地域偏在の改善に向けた取り組み
薬剤師の地域偏在は、ドラッグストア業界だけでなく医療全体における深刻な課題とされています。この問題に対処するため、厚生労働省は「薬剤師確保計画ガイドライン」を策定し、具体的な対策を進めています。2024年度から偏在是正に向けた取り組みが本格的に始まり、2036年までの12年間で地域格差の解消を目指す内容です。
具体的には、都道府県ごとに調査を実施し、各地域を「薬剤師多数区域」「薬剤師少数区域」、そして薬剤師少数でも多数でもない地域の3つに分類しました。この分類にもとづき、それぞれの地域の実情に合わせた政策が進められています。今後、3年ごとに計画の策定と実施を積み重ね、進捗状況に応じて柔軟に対応する予定です。
人材不足改善に向けた取り組み
企業・店舗単位でも人材確保のためのさまざまな取り組みが進められています。
その一つが、業務の効率化を図るためのITツールの導入です。セルフレジや高度な在庫管理システムを導入することで、レジ業務や棚卸し作業にかかる時間を短縮し、従業員が他の業務に集中できる環境を整えています。
品出しや店舗清掃といった作業を外部業者に委託することで、従業員の負担軽減も図っている店舗も見られます。
さらに、給与の見直しや福利厚生の充実などの待遇改善も重要な施策です。競合する他店舗や異業種と比べてより魅力的な労働条件を提示することで、求職者の注目を集めやすくなり、人材確保が進むと期待されています。
シフトの柔軟性を高めて従業員のライフスタイルに合った働き方を実現したり、健康診断やストレス管理プログラムを提供したりすることで、従業員が安心して働ける環境を整備する店舗も増えています。
デジタル化の遅れを改善する取り組み
デジタル化が進む現代において、ドラッグストア業界でも業務効率化やサービス向上を目指したデジタル技術の導入が進められています。とくに、ビッグデータの活用と管理システムの導入が注目されています。
ビッグデータの活用は、店舗運営や経営戦略の質を高めるための重要な手段です。販売実績や来店者数の推移、ピークタイムなどを詳細にデータ化し、分析することで効率的な在庫配置やキャンペーンの実施タイミングを見極められるようになります。さらに、多店舗展開している企業では、地域ごとの売上傾向を比較することで、エリアごとの特性に応じた対応も可能になるでしょう。
また、在庫管理のデジタル化も業務効率化を促進します。最新の在庫管理システムを導入することで、在庫状況をリアルタイムで把握できるようになり、人手不足に起因する過剰発注や欠品のリスクを軽減できます。
ITリテラシー向上に向けた取り組み
ドラッグストア業界においても業務のデジタル化や管理システムの導入が進む中、ITリテラシーの向上が重要な課題となっています。従業員間でITスキルに差があると、業務効率が下がるだけでなく、情報漏えいなどのリスクも増大します。そのため、従業員全体のITリテラシーを底あげするための具体的な取り組みが必要です。
まず、従業員一人ひとりのITスキルレベルを把握し、それに応じた段階的な研修プログラムを実施することが求められます。基礎的なパソコン操作やシステムの利用方法から始め、次第にセキュリティ意識を高めるための内容を組み込むと効果的です。
また、情報セキュリティや高度なデジタルスキルの習得には、外部研修の利用も有効です。外部研修では、専門知識を持った講師から最新の知識や技術を学べるため、効率的かつ実践的な教育を受けられます。ITリテラシーの向上は、業務効率化や安全性の確保だけでなく、従業員自身のスキルアップにもつながるでしょう。
薬機法改正や国の販売規制がドラッグストア業界に与える影響

近年、ドラッグストア業界は規制強化や新たな法改正に直面しています。とくに、薬機法改正や国の販売規制は、業界の運営方法に大きな変化をもたらすでしょう。ここでは、規制強化がドラッグストア業界に与える影響について紹介します。
販売規制の強化
ドラッグストア業界にとって、OTC(一般用医薬品)の販売規制の強化は避けて通れない課題となっています。
近年、一部のOTC(一般用医薬品)が乱用されるケースが増えており、オーバードーズ(過剰摂取)問題が社会的な関心を集めています。この状況を受けて、厚生労働省はOTC(一般用医薬品)の販売ルールを強化する方針を示していますが、規制内容が業界に与える影響は非常に大きいと考えられているのです。
2024年1月に公表された医薬品販売制度検討会のとりまとめでは、乱用が懸念されるOTC(一般用医薬品)の販売について、新たな対応が提案されています。たとえば、OTC(一般用医薬品)を「購入者の手の届かない場所に陳列する」ことや、「購入者情報を記録・保管する」ことが求められています。
しかし、店内スペースが限られているドラッグストアでは、特定のOTC(一般用医薬品)を隔離して陳列することは難しく、店舗レイアウトの大幅な見直しが必要になる場合もあるでしょう。
また、購入者情報の保管については、増加するサイバー攻撃に対するリスク管理が不可欠であり、これに伴うコストやセキュリティ対策の負担が企業に重くのしかかる可能性があります。業界内ではこうした規制案に対して慎重な意見も多く、販売規制と事業運営の両立をどう図るかが大きな課題となっています。
参考:厚生労働省「医薬品の販売制度に関する検討会 とりまとめ」
セルフメディケーションの抑制
近年の販売規制の強化によって、セルフメディケーションが抑制されることも懸念されています。WHOの定義によると、セルフメディケーションとは「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」です。
「医薬品の販売制度に関する検討会」で提案された新たな規制案では、薬剤師が販売する医薬品の購入者について、氏名を確認して過去の購入履歴を参照し、頻繁に購入していないかをチェックする方法が推奨されています。さらに、購入後にはこれらの情報を記録・保管することが求められているのです。
規制が導入されると、セルフメディケーションを実践している人にとっては、OTC(一般用医薬品)の購入が複雑化し、購入がしづらくなるという印象を与えることになりかねません。薬剤師との対話や個人情報の提供が求められることに対して抵抗感を持つ消費者も多く、結果的に必要なときに必要なOTC(一般用医薬品)を手に入れにくくなるおそれがあるでしょう。
業界の競争環境の変化
2009年の薬事法(現・薬機法)の改正により、医薬品販売規制が緩和され、OTC(一般用医薬品)の販売範囲が拡大しました。改正によりドラッグストア業界は急成長を遂げ、2014年から2023年の10年間で、販売額は4兆9,374億9,600万円から8兆5,203億9,500万円へと約1.73倍増加しています。
近年では、健康相談業務や調剤薬局の併設などを通じて、地域医療の一翼を担い、お客さまの多様なニーズに対応する体制が整備されました。これにより、従来の「薬局」から、より広範囲なライフスタイルに寄り添った小売業へと進化を遂げています。
さらに、ドラッグストアでは一般食品や日用品の販売が急激に増加しています。ドラッグストア業界は、ただの薬局という枠を超えて、消費者の生活全般を支える「生活支援型小売業」として位置づけられ、コンビニエンスストアやスーパーマーケットと競い合う形になっているのです。
参考:経済産業省「商業動態統計調査 / 参考表(年報)」(2015年)
参考:経済産業省「商業動態統計調査 / 時系列データ」(2024年)
消費者行動への影響
2022年4月に規制が緩和された「オンライン服薬指導」や、2023年1月から導入された電子処方箋制度によって、患者は自宅にいながら薬を受け取り、服薬指導を受けられるようになりました。こうした動きは、消費者のOTC(一般用医薬品)購入や薬局利用の行動に大きな変化をもたらすと予測されています。
消費者は物理的な薬局への訪問を減らし、より便利でスピーディなサービスを求める傾向が強まると予測されます。その結果、従来の立地依存型の薬局経営モデルは次第に限界を迎える可能性が高まるでしょう。
オンラインでのOTC(一般用医薬品)購入や処方箋の電子化により、消費者は場所を問わず、薬局や医療機関と簡単にアクセスできるようになるため、地域密着型のサービスだけでは競争力を維持するのが難しくなるかもしれません。
まとめ|課題克服に向けた業界全体の取り組みを把握しておこう
ドラッグストア業界は、急速な成長の中でさまざまな課題を抱えていますが、解決するための取り組みも少しずつ進められています。人材不足の解消に向けたITツールの導入や、地域ごとの薬剤師供給のバランスを取るための政策、そして業務のデジタル化が進んでおり、業界全体が持続可能な成長を目指しているのです。
今後も規制の強化や競争環境の変化に対応し、業界の発展を続けるために、新たな取り組みが求められるでしょう。
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