【現役ドラッグストア店長直伝】店舗オペレーション仕組化と指導のコツ|新人登録販売者を育てる方法
新年度を迎え新入社員が店頭に立ち始める季節になり、今月から登録販売者の教育を任される方もいるのではないでしょうか。
以前のコラムでは登録販売者1年目の心構えや試験合格後の考え方について触れてきましたが、今回は「指導する側」が店舗の仕組みとして登録販売者を守る方法をお伝えします。
わたしが20年の店長経験で学んだのは、教え方よりも「仕組み」の方がはるかに重要だということです。
店長の力量に頼る教育は店長が変わると方針も変化してしまいます。また教えられる側も誰に聞くかで、得られる情報が変わってしまいます。
一方で、仕組化をすれば、誰が指導しても登録販売者が安心して働ける環境をつくることができるのです。
教育側でない方も、店舗内の情報共有の仕組みを確認してみてください。
目次
- ●新人登録販売者の"うっかり違反"を防ぐ指導ルール
- ●店舗オペレーションを標準化して教え方の差をなくす
- ●新人登録販売者を伸ばす振り返り面談のやり方
- ●まとめ:店舗オペレーションで登録販売者を守るために
新人登録販売者の"うっかり違反"を防ぐ指導ルール
経験の浅い登録販売者がもっとも陥りやすいのが「知らないうちに薬機法に抵触する発言をしてしまう」ことです。
同じミスを繰り返さないためには「個人が気をつける」ではなく、店舗の仕組みに落とし込むことです。
接客でのNGワードと言い換えフレーズ集
経験の浅い登録販売者に「言ってはいけない言葉」を教えるだけでは理解できません。
「代わりに何と言えばいいか」をセットで教えなければ、登録販売者は接客そのものを恐れてしまうからです。
まずは、登録販売者が売りたいがゆえに無意識に使ってしまいがちなリスクのある表現と、適切な伝え方を確認しましょう。
NG①「これで治ります」
OTC(一般用医薬品)で「絶対」「治る」という断定表現は薬機法に抵触するおそれがあります。
市販薬は症状の緩和が主な役割であり「治す」のは本人の自然治癒力です。
「この成分はお客さまの症状に合っていますので、緩和が期待できますよ」
などの言い回しに留めましょう。
NG②「病院に行くほどではないですよ」or「(病名)です」
わたし達は医師ではないので、受診の要否を判断する権限はそもそも持っていません。
また、どれだけ確証があっても病名は出してはいけません。
「市販薬で様子をみることもできますが、○日使っても改善しない場合は受診をお勧めします」
などの受診勧奨を行いましょう。
NG③「副作用はありません」
例えサプリメントでも体質や持病によっては健康被害が起こることがあります。
「食品由来ですが体調に変化があったら使用を中止して受診してください」
どんなに安全と思えるサプリメントでも「絶対」はありません。
NG④「~と思います」
口癖になっている方もいますが、せっかく良い接客をしてもこの一言で「憶測」になってしまいます。
「これで症状は改善するはずですが、しなかったらご相談ください(受診してください)」
例えばこれらをバックヤードに掲示しておくだけで、「何を言えばいいか」が明確になります。
ポイントは「禁止」と「代替」を必ずセットにすることです。
登録販売者が自発的に学ぶ環境のつくり方
前項で示したNGワードと言い換えもを「教える」だけでは記憶には定着しません。
学びは、アウトプットをしないと定着しないのです。
わたしの店舗で実践している方法を紹介します。
①「クイズ」を出す
「高血圧のお客さまに勧めてもいいイブプロフェン単剤はどれ?」
このようなクイズを出し、回答と理由を30秒だけでも共有すると毎日続ければ月に20問以上のインプット&アウトプットになります。
慣れてきたら登録販売者自身に出題してもらうのが効果的です。
問題をつくるには自分で調べる必要があるので、最高のインプットになります。
②「なぜ?ノート」で好奇心を積み上げる
事務所に登録販売者メモを設置し、業務中の「なぜ?」を書き留めてもらいます。
いわば登録販売者の掲示板で、分かる人が回答を書き込みます。
大切なのは先輩が答えを教えるのではなく「一緒に調べる」姿勢です。
「共に学ぶ」ことで登録販売者は質問へのハードルが下がり、先輩にとっても復習になります。
②「教え合う風潮」を意図的につくる
出勤日に一回、ほんの3分でいいのでOTC(一般用医薬品)の話をするルールをつくるだけで、スタッフ同士で自然と医薬品の話が生まれるようになります。
登録販売者が自発的に「知りたい」と思える環境こそが、薬機法違反を防ぐもっとも確実な仕組みです。
慣れてくると登録販売者同士が商品を手に会話する光景が見られるようになります。
濫用対応の好事例なども店舗内で共有しやすくなるのでお勧めです。
「店舗独自ルール」の危険性
もっとも注意すべきは、マニュアルに書かれていない「店舗独自ルール」です。
- 忙しい時間帯は、濫用等のおそれのある医薬品の販売でも、書面を使わずに確認だけで済ませている
- 会社の強化品(医薬品)をレジでお勧めする際、非資格者のスタッフも詳しい説明なしに推奨している
これらは効率や成績を優先した結果、いつの間にか定着してしまったものかもしれませんが、法令遵守の観点からは非常に危険な状態です。
対策として「店舗独自ルール棚卸し」を年に一度おこなってください。
スタッフ全員に「自店だけのルールだと思うもの」や「先輩から口頭で教わった手順」を書き出してもらい、会社マニュアルと照らし合わせて確認し判断します。
そして会社マニュアルから逸脱している独自ルールは「不適切」として即座に廃止します。
わたしも異動先の店舗で実施した際、従業員が良かれと思って行われていた独自の運用が、実は重大なコンプライアンス違反に直結していたケースが見つかった経験があります。
定期的な業務の棚卸しは身を守るためにも重要です。
店舗オペレーションを標準化して教え方の差をなくす
登録販売者が不安を感じるもっとも大きな原因が「人によって言うことが違う」という状況です。
この問題を解決するのが業務の標準化です。
均一の作業にする3つの考え方
標準化とは「最低ラインを揃える」ことであり、教育やお客さま対応の均一化が目的です。
すべてをマニュアル化するのは現実的ではないので、わたしの店舗では3つの基準で対象を選んでいます。
・ミスが法令違反や健康被害につながるもの
前章のような濫用対応の簡略化や複数個販売などの法令違反は最優先で徹底します。
登録販売者以外にも「売上・効率<法律」である、という意識を植えつけます。
・ミスが金銭的な損失につながるもの
医薬品以外にも発注時の確認方法や二重チェックなど、ミスを防ぐためのチェックを習慣づけます。
「商品=金銭」である、という意識を従業員全員に持たせます。
・ミスがお客さまの信頼を損なうもの
客注の受注ミスやお客さまへの連絡ミスなどのケアレスミスはお客さまの信頼を大きく失墜させます。
「客注フローチャート」などを作成して掲示することでミスを防ぎます。
ルールは極力簡略化することで全員が遵守できます。
会社の重要なルールもこの3つに当てはめると、理解しやすくなります。
見える化で接客の事故を減らす
日常的に行う口頭指示は店舗運営においてはもっとも危険な伝達手段でもあります。
記憶に頼るため忘れられやすく、証拠が残らないためトラブル時に確認できません。
以前のコラムでも「万が一の時に登録販売者個人が責任を負うことを避けるためにツールやマニュアルの使用は必須」とお伝えしましたが、口頭指示はその対極にあります。
わたしの店舗では、業務連絡は連絡ノートに記載し出勤時に必ず確認する、期限チェックは専用シートに記録し実施者のサインを残す、濫用対応の手順はレジ横に掲示する、といったルールを徹底しています。
もしワークスケジュールを「レジ担当・クリンリネス・発注」などのオペレーションだけの記入だとミスがおこりやすくなります。
指示を受けた本人以外の従業員も確認できるためにも、ワークスケジュールは活用すべきです。
見える化を始めるとオペレーションに関するクレームは減りますし、会社指示などの抜け・漏れも減るはずです。
ルールの意味を明示すべき理由
マニュアルが守られない最大の原因は「なぜそのルールがあるのか」を理解していないからです。
理由がわからないルールは必要性を感じないため、守られなくなってしまいます。
対策は簡単で、ルールに「理由」を添えて説明するだけです。
【例】
「濫用等のおそれのある医薬品は必ず資格者が対応すること」
理由:法令義務であり、違反時は店舗と個人の両方に行政処分が及ぶ可能性があるため
「医薬品の期限チェックは〇カ月前の使用期限を撤去」
理由:用法用量や使用頻度を考えるとサプリメントと同等の撤去期限では使用期限内に使いきれないため
それぞれのルールの「なぜ」をスタッフに説明できる能力こそ、教育側の必須スキルです。
人は「やれ」と言われるより「なぜやるべきか」を理解した方が主体的に行動できるため、「ルールの理由」を添えて教育してください。
新人登録販売者を伸ばす振り返り面談のやり方
仕組みという土台の上に、人と人とのコミュニケーションがあって初めて登録販売者は成長します。
わたしが確信しているのは、「叱る指導」より「振り返る指導」の方が圧倒的に効果が高いということです。
月1回10分の面談テンプレートと3つの質問
わたしは登録販売者と月1回の10分面談をしています。
バックヤードで3つの質問をするだけです。
- 質問①「この1ヶ月で、もっとも印象に残った接客はどれですか?」
本人がもっとも心に残っている体験を聞くことで、何にやりがいを感じ何に不安を感じているかが見えてきます。- ステロイド点鼻薬が売れるスキルが身につきました
- 濫用対応時に禁忌も確認できるようになりました
- 質問②「今、もっとも困っていることは何ですか?」
「特にありません」と返される場合は、「たとえば濫用対応で困ったことはない?」と具体的な場面を提示すると話しやすくなります。- 未成年と思われるお客さまへの濫用対応が難しい
- 胃薬の接客で何を聞いたらいいか分からない
- 質問③「来月はどんなことにチャレンジしたいですか?」
自分で目標を言葉にすることで、登録販売者は主体的に動くようになります。ポイントは面談を「評価の場」ではなく「対話の場」にすることです。- プラス1品をスムーズに提案できるようになります
- 濫用対応で禁忌の確認を必ずおこないます
指導者の役割は「正解を教えること」ではなく、「登録販売者が自ら正解を見つける」ための伴走者になることだと考えています。
一人の失敗を「店舗の財産」に変えるには
登録販売者の失敗を個人の責任で終わらせてはいけません。
「失敗から学ぶ」のはアウトプット以上に有益なので、店舗として成長する機会と捉えましょう。
-
①事実の確認:感情を入れずに「何が起きたか」を確認する
(例)
- 濫用対応で1日に2回同じお客さまに販売してしまった
- 客注商品の入荷後に連絡をしていなかった
-
②原因の深掘り:ミスの原因が仕組みか過失か確認する
(例)
- 登録販売者が認識していたが共有していなかった
- 全員入荷は把握していたが誰が連絡をするか決めていなかった
-
③改善:注意力に頼る対策より仕組みとして防ぐ方法を考える
(例)
- 依存を疑われる方が購入した時はレジ裏の該当商品に付箋を貼り、閉店時に撤去する
- お客様連絡は当日開店時のメインレジ担当がレジを外れたタイミングで実施する
こうして生まれた改善策を「失敗ノート」に蓄積すれば、店舗の貴重な財産になります。
失敗を仕組みの改善につなげる文化が根付くと、登録販売者は失敗を隠さなくなりお客さまへの健康被害リスクも下がるのです。
小さな成功体験でモチベーションを維持する方法
登録販売者のモチベーション維持でもっとも効果的なのは「自分が成長している」と実感できることです。
わたしは登録販売者に「今月の一歩」を確認しています。
月末に「今月できるようになったこと」をひとつだけ付箋に書き、バックヤードや事務所の掲示板に貼り出すだけです。
「初めてひとりで鼻炎薬の接客ができた」
「漢方薬の五苓散を覚えた」
「濫用対応でクレームなく対応できた」
些細なことに見えますが、文字にすることで本人は成長を客観視できますし、店舗としても登録販売者の頑張りも見えて好循環が生まれます。
「まだ成長できている」と実感できることが、長く現場で働き続けるための原動力になるのです。
まとめ:店舗オペレーションで登録販売者を守るために
今回は「仕組みで登録販売者を守る」をテーマに、店舗オペレーション指導のコツをお伝えしました。
- ・NGワードの言い換え共有と学習仕組みで「うっかり違反」を防ぐ
- ・店舗独自ルールの棚卸しでコンプライアンスリスクを排除する
- ・業務を標準化し「健康・お金・信頼」に関わる業務を統一する
- ・口頭指示をやめて見える化し、マニュアルに「なぜ」を追記する
- ・月1回の振り返り面談と成功体験の可視化で成長を促す
今日あなたが仕組みをひとつ整えれば、それは明日以降のすべての登録販売者を守る盾になります。
そしてその仕組みの先にいるのは、いつもお客さまです。
お客さまのQOL向上のために、まずは自店の仕組みを見直すことから始めてみてください!
執筆者:ケイタ店長(登録販売者)
ドラッグストア勤務歴20年、一部上場企業2社で合計15年の店長経験を活かし、X(旧Twitter)などで登録販売者へのアドバイスや一般の方への生活改善情報の発信を行っている。X(旧Twitter)フォロワー数約5,000人。
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