コロナ禍でのOTC医薬品業界の動向と情報収集の方法
2021年12月8日
コロナ禍でのOTC医薬品業界の動向と情報収集の方法
1.コロナ禍でのOTC医薬品業界の動向
新型コロナウイルス感染症が拡大し始めてから、OTC医薬品業界はあっという間にその渦の中に飲み込まれ、その中心にいると言っても過言ではない状況が続いています。情報は刻一刻と更新され、新情報やデマ情報を含む、未知の問い合わせもお客様から多数いただきます。出所不明の新しい情報が出るたびに、お客様対応に追われている人もたくさんいることでしょう。今回は、この特殊な環境下において、どのように「適切な情報」を手に入れていくべきかをまとめていきます。
まずは、コロナ禍でのドラッグストア・薬局をとりまく状況について、まとめてみたいと思います。
2019年12月初旬 |
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2020年1月15日 |
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また、2020年2月、SNSを通じて私宛に、「発注が追い付かないため、現在、全国のドラッグストアで品薄・欠品になっているものを把握していただけませんか?」と依頼がありました。これを受けて、フォロワーに「現在品薄のものを教えてほしい」と呼びかけたところ、30回答ほどいただきました。
- 紙類:トイレットペーパー、ウェットティッシュ、箱ティッシュ、おしりふき、ペーパータオル、メガネ拭き
- 感染対策の商品:消毒薬、ハンドソープ、滅菌ガーゼ、ハイター、マスク、体温計、使い捨て手袋
- 食品:乳酸菌関連商品、経口補水液、ゼリー飲料、緑茶、お菓子
- 医薬品:のどスプレー、うがい薬、トローチ、鼻炎薬
これまで需要があったものを時系列でグループ分けすると、次のようになります。
- ① 新型コロナウイルスの感染予防目的の商品
- ② 新型コロナウイルス感染拡大の影響により経済がストップした場合に不足しそうな商品
- ③ 新型コロナウイルスに感染したかどうかを確認するための商品
- ④ 新型コロナウイルスの治療目的の商品
- ⑤ ワクチン接種後の副反応に対応するための商品
このようにコロナ禍においては状況が刻一刻と変わり、出回っている情報がどれだけ信頼性の低いものであっても、その都度目的の商品の需要が高まっている状況です。
それでは、このようなお客様に情報提供を求められた場合(もしくは能動的に情報提供をする場合)の情報収集のポイントを見ていきましょう。
2.情報収集のポイント
まずは個人のブログなど、「個人の一意見」に過ぎない情報よりも、次に列挙していく情報源を優先します。これはたとえ著名な医師などの専門家の「個人の一意見」であっても同じ扱いになります。ただし、客観的な「事実」を「情報ソース(情報の入手元)」と共に示し、それを踏まえて「個人の一意見」を書いた記事もあります。その場合は「情報ソース」も合わせて確認し、記事の内容に偏りがないかどうか精査します。そこまで行う自信のない方は、やはり次に列挙していく情報源から入手しましょう。
・①政府機関の情報
政府機関の出しているページのURLには、「go.jp」の文字が含まれます。
医薬関係の情報収集の場合は主に「厚生労働省」の情報を確認することになりますが、たとえば検索窓に「ワクチン 解熱剤 厚生労働省」と入れて検索してみると、以下のページがトップに出てきます。
ワクチン 解熱剤 厚生労働省
検索すると...
厚生労働省「新型コロナワクチンQ&A」
ワクチンを受けた後の発熱や痛みに対し、市販の解熱鎮痛薬を飲んでもよいですか。
https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0007.html
上記URLのmhlwは厚生労働省の略称であり、go.jpは政府機関の保有するサイトであることを示します。こちらのページの情報を以下に引用します。
ワクチンを受けた後の発熱や痛みに対し、市販の解熱鎮痛薬(※)で対応いただくことも考えられますが、特に下記のような場合は、主治医や薬剤師にご相談ください。(中略)
(※)市販されている解熱鎮痛薬の種類には、アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬(イブプロフェンやロキソプロフェン)などがあり、ワクチン接種後の発熱や痛みなどにご使用いただけます。(アセトアミノフェンは、低年齢の方や妊娠中・授乳中の方でもご使用いただけますが、製品毎に対象年齢などが異なりますので、対象をご確認のうえ、ご使用ください。)
たとえばお客様に、「ワクチンの副反応による発熱に使用できる薬ってアセトアミノフェンだけですよね?」と聞かれた場合、「厚生労働省からの情報によりますと、アセトアミノフェン以外の解熱剤もお使いいただけます。」とお伝えすることができます。こうすることでお客様も、スタッフの「個人の一意見」ではないことが分かり、安心することができます。
・②PMDAの添付文書検索
添付文書は、登録販売者や薬剤師が情報提供するにあたり、基礎となるものです。
PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)は、厚生労働省所管の機関であり、添付文書を検索することができます。以下はPMDAのリンクですが、こちらにも「go.jp」の文字が含まれていますね。
https://www.pmda.go.jp/about-pmda/outline/0001.html
リンク先に飛んでいただくと、一番上のところに「添付文書検索」と書いてあるので、OTC医薬品の添付文書を検索する場合は、「一般用・要指導医薬品」を選びます。次に表示されたページで販売名や成分名を入力すると、該当商品の検索結果が表示されます。
OTC医薬品は、パッケージや添付文書に書いてある情報(効能・効果、用法・用量、使用上の注意等)に従って使用する必要があります。「使用上の注意」など、パッケージに載せきれない情報は添付文書に記載があります。
たとえばお客様に「パモキサン錠って新型コロナウイルス感染症に効果がありますか?」と聞かれたとします。この場合、効果の有無についてはその場で分からないとしても、パモキサン錠の効能効果は「蟯虫の駆除」となっているため、以下のようにご返答することが可能です。
効果があるかどうかは確認する必要がありますが、パモキサン錠の効能・効果は『蟯虫の駆除』となっていますので、新型コロナウイルス感染症にはお使いいただくことができません。
なお、誤情報(デマ情報)への詳しい対応については、以下のリンク先をご確認ください。
事例から学ぶOTC医薬品〜誤情報対応編〜
https://www.touhan-navi.com/contents/column/cat4/001108.php
・③メーカー問い合わせ
店舗でお客様の問い合わせ内容を調べる時間がない時にとても役に立つのが、メーカーへの問い合わせです。メーカーからの情報は、お客様にとって、「信頼できる第三者の意見」となるため、ご納得いただきやすいという利点があります。商品のパッケージに「お客様相談室」の電話番号が書いてありますので、電話するときは、自分の所属している会社名・店舗名、資格、自分の名前と相談内容を伝えます。
● 問い合わせをするときの例
〇〇ドラッグ銀座店、登録販売者の村松と申します。お世話になっております。△△についてお伺いしたいのですが、よろしいでしょうか?
資格を名乗ると、相談内容によっては学術的なことが聞きたいのだと判断して、より適切な部署に回していただけることもあります。やったことがないという方は、ぜひトライしてみてください。
執筆者:村松 早織(薬剤師・登録販売者講師)
株式会社東京マキア 代表取締役
登録販売者や受験生向けの講義を中心に事業を展開
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