【現役ドラッグストア店長直伝】登録販売者のモチベーションアップ方法<登録販売者のキャリア>
【現役ドラッグストア店長直伝】登録販売者のモチベーションアップ方法<登録販売者のキャリア>
医薬品販売に関する業界の動きが活発になっていますが、皆さんはモチベーションを保てているでしょうか?
私が自店で勤務する登録販売者に意見を聞いたところ、モチベーションが下がっている方もいました。
今回は過去に私が実店舗で登録販売者や受験者にアドバイスを行った内容を踏まえて、モチベーションアップにつながった事例や方法を紹介していきます。
目次
本人の志から考える
皆さんは登録販売者になった、登録販売者を目指す理由はありますか?
さまざまな登録販売者と話をしていて、この登録販売者になったきっかけがその後のモチベーションに大きな影響を及ぼしていると感じました。
理由は人それぞれなので別に見ていきましょう。
あなたはどんな理由で登録販売者を目指しましたか?
時給アップのため
最も多いのがパートやアルバイトとして時給アップのために登録販売者を目指した、というものでしょう。
登録販売者の資格を取得することによって採用されやすかったりシフトを優遇される、という方も多いはずです。
登録販売者になれば時給のアップや、明示されていなくてもたとえ店舗が閉店となって登録販売者は他店に優先的に異動されるといったメリットが存在します。
私も受験を勧めるときはこのメリットを説明しています。
登録販売者は働く本人と店舗、双方にメリットがある資格なのです。
会社指示
こちらは正社員の方が多いかと思いますが、会社指示で資格取得が義務だった場合です。
本人の希望とは関係なしに業務の一環として資格取得し、医薬品販売を登録販売者の「仕事」として行っている方も多いはずです。
時給アップ目的にしろ会社指示にしろ、資格取得目的の行きつく先は収入に直結します。
指示されたことを実行していればこの目的は達成されるのでモチベーションという概念がない方もいました。
資格取得も業務の一環として指示されたことを行っているだけ...
登録販売者としてお客さまの生活の一助となるモチベーションより、仕事だからやっているのです...
とおっしゃる方もいました。
こうして経緯だけ書くとモチベーションが上がりにくいように見えますが、どうでしょうか。
資格取得理由とモチベーションは一致するか?
お客さまのため、というより仕事だから業務をこなしているだけ。
だから業界のことも関係ない。
だけどここ最近の変化に疲れているんです...
こんな声を店舗の登録販売者から受けたのですが、少し視点を変えて考えてみましょう。
世の中の仕事は結局「他人のため」か「自分のため」のどちらか、または両方に分別されます。
それは医師も警察官もプロスポーツ選手も、公務員もサラリーマンも自営業も全て同じです。
ビジネス目的で免許を取得する医師もいますし、市民や国民のためではなく自身の安定を求めて公務員になる方もいます。
それ自体は全く否定されるものではなく、むしろ生きるために必要なことです。
「他人のため」でも「自分のため」でも、行う業務に違いはありません。
登録販売者資格を取得するきっかけはさまざまですが、行う業務は一緒なのです。
「登録販売者になったのはそんなに高い志があったわけではないので...」
という言葉を店舗の登録販売者から言われたことがあります。
医薬品を販売するためだけに言われるがまま資格を取得し、シフトの穴を埋めるための存在と感じている方も多いと思います。
そして状況は登録販売者の働き方に大きな変化をもたらそうとしています。
これは私見ですが、医薬品販売業界は確実に登録販売者の需要が大きくなると考えています。
それはドラッグストアの登録販売者需要は今までと大きく変わらず、登録販売者の働くステージが増えると予想されるからです。
もしかしたら需要の増加に伴い時給も上昇するかもしれません。
そうなると登録販売者の人気も上がり需要がさらに増え、登録販売者の「スキル」が求められる可能性も考えられます。
そのためには今一度、「登録販売者としてどう働くべきなのか?」ということを考えておく必要があります。
資格取得の理由は人それぞれですが、これからの動きを考えるとモチベーションは高く保つ必要があります。
それは「他人のため」でも「自分のため」でもあるからです。
そして、その「他人」は「お客さま」に他なりません。
お客さまのためにモチベーションを高くする方法
では「お客さまのため」にモチベーションを高く保つにはどうしたらいいでしょうか。
使命感が強い方はいいのですが、「お客さまのため」と思い資格を取得したものの、理想と現実のギャップに苦しんでモチベーションが行方不明になっている方も多い印象です。
パニックになっている方は、少し状況と頭を整理してみましょう。
身近な人を助けてみよう
毎日品出しと売場管理やレジに追われてお客さまのことまで気が回らない方もいるはずです。
業務に手一杯となってしまい自己研鑽をおこなうモチベーションも枯渇してしまっていませんか?
勉強には根性論も必要ですが、モチベーションが下がった時の根性論は心理的に大きな負担がかかります。
ここでモチベーションを上げるいい方法があります。
それが「身近な人を助ける」というものです。
家族でも、友人でも、仕事仲間でも、健康に関する悩みを抱えている人が皆無...なんてことはあり得ないので、ぜひ身近な人を助けてあげてください。
いくら「お客さま」とはいえ、所詮は他人です。
綺麗事をいっても、これではモチベーションは動かない方もいるはずです。
身近な人の健康の助けになってみてください。
例えば家族に血糖値が高めの方がいたら
- 血糖値の吸収を抑えるサプリメントとその仕組みを勉強する
- 血糖値を上げてしまう成分を覚える
- 血糖値を上げない市販薬を覚えてアドバイスする
例えばダイエット中の方がいたら
- ダイエットに向いているサプリやプロテインを勉強する
- ダイエット中の食生活について勉強する
- 身体の代謝などについてもう一度復習する
この勉強方法だと、自身と身近な人にとって有益なのでコスパが良いですし、その方の生活の一助となります。
何より、お客さまだったら接客が終わってからの経過が分からないのに対して、身近な人なら経過が追えるというメリットもあります。
身近な人は「仮想お客さま」でもあるので、自分のアドバイスがどう感じたかを聞くこともできます。
もちろん、身近な人が自身でも構いません。
実体験に基づいた接客は強い説得力があるため、自身を含めた身近な人を助けてください。
身近な人が相手ならモチベーションも上がりやすいのでお勧めです。
人間関係だって、きっとより良くなるはずです。
固定客をつくってみよう
皆さんの店舗でも固定客はいるはずです。
接客はしなくても「この方、よく来るな」「いつもこの商品を買うな」という方がいるはずですが、こうしたお客さまへの接客もモチベーションを上げる良いトレーニングになります。
「固定客をつくる」と書きましたが、ここでいう「固定客」とは、リピーターになってもらうのではなく、すでにリピーター化してるお客さまをターゲットにして接客をしてみる、ということです。
- いつもこの商品をご購入ですがお客さまがお使いですか?
- 他の商品って使ったことありますか?
- どんな症状ですか?
こうしてお声がけを行い、お客さまの心理や行動からまずは「相談相手」になりましょう。
この目的は推奨品を販売することではないので(最終的にはそれでも問題ありませんが)深入りせずにまずは世間話からでもいいので、お客さまにとって「話しやすい相談相手」となってください。
これはスキルアップのためなので、以下の点に注意してください。
- 週に1回は来店頂いているお客さまから選ぶ
- 自分にとって話しかけやすい人にする
- キャパシティーや診断結果の問題があるため通院している方は避ける
- パニックになるので必ず「1名限定」で行う
こうすることで頭が整理され、「あのお客さまのために」勉強するモチベーションになります。
勉強をしながらお客さまにも覚えられ、信頼感の向上にもつながります。
注意点は「受診勧奨」を必ず行うことです。
やる気で加速しすぎてお客さまの健康や人生を損なうことがないようご注意ください。
レジで一言フォローアップしてみよう
『お客さまを助ける』気持ちで話す接客スキルを身に付けるには、レジで場数を踏むのが最適です。そしてレジでのフォローアップは、あなた自身とお店にとって大きなメリットがあります。
ところで皆さんはレジ業務をどうお考えでしょうか。
誰でもできる最低限の仕事? それともお客さまと接する重要な場所?
もちろん、後者です。
これはさまざまな媒体でも言われ、私も学生アルバイトにも採用初日に必ず使えていることなのですが、レジ業務はただの会計業務ではなく、接客業において「最も重要な業務」です。
お客さまと必ず接するのがレジ業務であり、最後に接するのもレジ業務だからです。
レジ業務は店舗の印象を全て決めるといっても過言ではありません。
店内で失礼な接客をしてしまってもレジ者が懇切丁寧な接客を行えば、お客さまは満足して退店されることもあります。
ただし、逆もまた然り、となります。
店内でどんな素晴らしいアドバイスを行っても、レジ者で印象が悪くもなるのです。
このレジ業務は「接客を行えなかったお客さま」もフォローできる場所です。
医薬品をご購入のお客さまにはぜひ「お薬のご説明はよろしいですか?」とお声がけください。
やってみると分かりますが、9割以上は「大丈夫です」で終わります。
しかし数時間レジを行うと必ず数名は「聞きたかったけど話せる従業員がいなかった」「こちらから尋ねるほどでもないけど、店員に言われたから話だけでも聞いておこう」というお客さまがいらっしゃいます。
ここを取りこぼすのは自身にとっても店舗にとっても損失です。
必ず相談にのってください。
おそらく2時間レジをして1~2人いるかどうかですが、週単位、月単位で考えると数十人に登ります。
非常に意味のあるお声がけですし、さまざまなパターンでお客さまの商品選びの一助となります。
私は1日に数時間はレジに入りお客さまと強制的に接する時間をつくるようにしていますが、ここ1週間でも以下のようなお客さまと「レジ業務で」接しました。
- 血便を整腸剤で対応しようとしていた⇒受診勧奨
- キズ薬に消毒用エタノールを使っていた⇒禁忌
- 鎮痛剤と風邪薬を同時服用していた⇒禁忌 ...など
事例によってはお客さまの人生に影響するようなものもあります。
個人的な考えですが、登録販売者は積極的に「レジ業務」を行うべきです。
そのためには会社や店舗の責任者は資格者を接客応需のため、お客さまとの接点が増える業務指示を出し、そのための体制を整えるべきだと考えています。
求められる登録販売者となるには
今後の業界がどうなるかは誰にも分かりません。
誰にも分からないとはいえ、今後起こりうる可能性に対応するために準備する必要があるのは明白です。
何をすれば良いのか最後にまとめておきましょう。
登録販売者のスキルの向上
登録販売者としてのスキルは上げ続けないといけません。
それを強制的な業務と捉えるか、自身の能力アップのためと捉えるかが大きな差と考えています。
学生時代の勉強と同じで社内研修などで指示されたことをこなすのではモチベーションアップになりませんし、平均化されたスキルしか身に付きません。
会社は従業員に対して教育を行う責務があるので社内研修を行いますが、それに加えて積極的にスキルアップを行う必要があります。
今回のコラムを参考にしてぜひ小さなことからでいいので積み上げてみてください。
コミュニケーション能力の向上
お客さまとは「接客業」としてコミュニケーションスキルは必要です。
いきなり多弁になる必要はありませんが、苦手な方はまずよく来店されるお客さまへの「心配」を言葉と態度で示してみてください。
断られたら心配するほどの症状ではない...と思い、あまり気にかけないようにしましょう。
接客や相談を待っている「無言のお客さま」はレジ業務の項で書いた通り、かなりいらっしゃいます。
「無言のお客さま」を探していれば、必ずコミュニケーションスキルは身に付きます。
私も私生活ではほとんど友人はいませんが、業務ではお客さまと話すのが上手だとよく言われます。それは元々そうなのではなく、純粋に「数」の問題です。
慣れない方はレジ業務を中心に、お客さまへのお声掛けの数を増やしてください。
モチベーションアップ
知識をインプットする喜びは他には代えがたいものです。
知的好奇心を持つにはお客さまに喜ばれ、必要とされることが近道です。
まずは身近な人から始め、徐々にお客さまへシフトチェンジしていきましょう。
モチベーションアップの方法も、このコラムで引き続き書いていこうと思います。
個人的には登録販売者の時代は今からだと考えています。
必要とされる登録販売者を目指してください!
執筆者:ケイタ店長(登録販売者)
ドラッグストア勤務歴20年、一部上場企業2社で合計15年の店長経験を活かし、X(旧Twitter)などで登録販売者へのアドバイスや一般の方への生活改善情報の発信を行っている。X(旧Twitter)フォロワー数約5,000人。
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