【現役ドラッグストア店長直伝】登録販売者が端境期にリピーターを生み出す具体的な方法<登録販売者のキャリア>
【現役ドラッグストア店長直伝】登録販売者が端境期にリピーターを生み出す具体的な方法<登録販売者のキャリア>
地域にもよりますが花粉症対策商品の販売ピークが落ち着いてきたと思います。
ここから「水虫治療薬」の小さな山はありますが、初夏の「虫刺され治療薬」の需要が始まるまでは特定ジャンルの販売ピークがない「端境期(主力商品の入れ替わり時期)」となります。
ここでの需要は年間通してのお悩みである可能性が高くなるため、お客さま対応次第でリピーターとなる可能性が高くなるのです。
こうした時期でも来店してくれるお客さまとは? お客さまに満足していただき店舗の売上を最大化するにはどうしたらいいのか?
この2点を具体的に考察していきましょう。
目次
お客さまの年間トータルの需要を考える
ドラッグストアはここ数年で寡占化が進み、一店舗当たりの売上も頭打ちになってきました。
今後はさらに新規顧客獲得より「リピーター顧客」を増やさないと生き残れない状況となります。
言い換えれば、リピーター顧客を作ることができる登録販売者は高スキルということです。
ではどうすればリピーター率を高めることができるのでしょうか。
年間需要がある商品が重要な理由
リピーターとは、何回も店舗に足を運んでいただけるお客さまのことです。
お客さまは当然ですが目的がないと来店されません。
その目的を増やすことがリピーターを増やすことにつながります。
目的は様々で食品や洗剤などもありますが、他の業態で取り扱えない部門がヘルスケア部門です。
競合は様々存在しますが、まずは他の業態に勝つ必要があります。
そのためにはドラッグストアの本職ともいえる「ヘルスケア部門」の強化が必須なのです。
前回のコラムでも触れましたが、今回は年間トータルで需要のある商品群の知識を強化する必要性をさらに深掘りして解説します。
年間需要の高い商品は月単位での大きな売上のインパクトや需要はありませんが、年間での売上やお客さまからの信頼を蓄積できるため必ず強化しないといけないジャンルです。
これは極論ですが、知識を強化するなら季節性のある商品より年間需要のある商品を優先すべきです。
理由は以下の通りです。
【季節性のある商品】
- 瞬間的に需要が高まるため、接客ではなく商品の展開でも販売は可能
- 基本的にリピート購入は翌年⇒新商品が発売される可能性がある
【年間需要のある商品】
- 瞬間的な需要がないため、プロモーションやエンド展開がおこないにくい
- 年間通してリピート購入するため、一度の接客で年間通して購入していただける
今年の花粉症商材で接客が追いつかないタイミングはありませんでしたか?
しかしお客さまは何らかの商品を購入していただいたはずです。
推奨品が売れなかったかもしれませんが、購入にいたったことで「お客さまの要望はいくらかは満たせた」はずです。
店舗としても売上としての「機会ロス」は発生していないはずです。
そのお客さまに本当にお勧めすべき商品を提案できなかった点はありますが、店舗人員に限りがあるため仕方がない面もあります。
季節性のない商品のメリットとは
では季節性がなく年間需要がある商品はどうでしょうか。
季節性のない商品は年間を通して一定の需要があるため、閑散期にも声掛けしやすく導線を張ればリピート購入していただけます。
また年間需要があるということは登録販売者にとっても学習機会が年間通して存在することになるので、スキルアップも継続的に行えるという利点があります。
作業的にも大きな需要がないのでプロモーション作成等の売場作成をおこなう必要がなく、接客や学習などの行動のみで売上とスキルをアップさせつつリピーターを増やせるというジャンルなのです。
そう、メリットしかないのです。
SNSで例えると、大きなバズはないもののフォロワー(=リピーター)が多いため恒常的に一定数の「いいね」が貰えるようなものです。
XやInstagramなどで見かけるインフルエンサーの姿が、年間需要がある商品を販売できる店舗...と考えるとイメージしやすいと思います。
ではどうすれば店舗のフォロワーを増やせるのでしょうか。
必ず押さえておくべきジャンル
ではそんな年間需要のある「季節性のない商品」とは何なのでしょうか?
前回のコラムで紹介したジャンルは「解熱鎮痛剤」と「整腸剤」です。
今回は「整腸剤」を深掘りして解説しましょう。
この整腸剤は応用がきくため必ず学習して押さえておくべきジャンルです。
理由は以下の通りです。
【整腸剤を強化する理由】
- ①毎日使って効果を実感させるから
- ②大きな副作用がある商品が少なくQOLを低下させないから
- ③便秘薬との親和性が高いから
- ④商品によって効果の差がないから
- ⑤腸に症状のない場合もお勧めできるから
整腸剤はもちろん、便秘薬定番で悩んでいるお客さまは大きなチャンスです。
声掛けするだけで店舗とお客さまの未来が大きく変わる可能性があります。
次に具体的な行動を解説していきます。
お客さまの満足度を最大化する手段
お客さまにリピートしていただくには接客内容や購入した商品に納得していただき「ここで買い物をしてよかった」と思われることが重要です。
そしてお客さまに納得して購入していただくにはある程度のコツが存在します。
これを理解していないと離反されたり返品されたり...という大きなデメリットがあるのです。
お客さまに納得し安心して購入していただく方法を整腸剤の販売を通して解説します。
接客を求めているお客さまを見極める
お客さまには様々なパターンが存在します
- 接客は望まないお客さま
- 自身で考えてから必要なら接客を希望されるお客さま
- 最初から接客ご希望でお声掛けをしていただけるお客さま
- 接客を望んでいるが店員に声を掛けられないお客さま...など
登録販売者側も積極的な方と消極的な方がいるので、双方が合致しないと「接客機会」が生まれないことになります。
消極的な方はお客さまからの拒絶が重なり、自重してしまうパターンもあるでしょう。
接客を望んでいるパターンをある程度把握することで成功率は高まりますので、結果的に「接客を望むお客さま」を見極める必要があります。
ただお客さまの頭の中を覗くわけにもいきませんし、人によって行動は様々ですから代表例を挙げておきましょう。
接客を20年以上行っているわたしの経験則ですが、参考にしてください
【声掛けをおこなうべき行動】
- ふたつ以上の商品を比較している
- ひとつの売場に3分以上滞在している
- 店員と目が合う
- 同じ売場に何度も足を運んでいる
そして元も子もない表現ですが、もっとも重要なのは「経験」から生まれる「勘」です。
上記のお客さまに数多くお声掛けをおこない、経験を増やすことで精度を上げてください。
導入は「お客さまの忌避感の排除」
では実際にお客さまが安心して購入にいたるまではどう行動するとよいのでしょう。
接客以外でもそうなのですが、導入部分を越えないと商品提案もお客さまには届きません。
そのためには徹底的にお客さまの「忌避感」を排除する必要があります。
ではお客さまの「忌避感」とは何でしょうか。
お客さまは「効果がある商品が適正価格で購入できるか」と考えています。
これを阻害するものに対してお客さまは忌避感を覚えるのです。
接客の途中でお客さまに「忌避感」を与えるとお客さまとの間に壁が生まれてしまいます。
お声掛けから本題に入るまで、この忌避感を徹底的に排除しましょう。
安心して購入していただく方法
整腸剤のような慢性的な症状に対する商品ジャンルの接客でお客さまに忌避感を持たせない方法は「お客さまに選んでいただく」のが正解です。
もしかしたら整腸剤で推奨品があるかもしれませんが、決して特定商品を冒頭で推してはいけません。
理由は鼻炎薬などと違い「整腸剤に正解はない」からです。
【整腸剤の接客導入】
- ①乳酸菌やビフィズス菌など、善玉菌の概要を説明し有名どころの商品で何が配合されているのか説明
- ②腸内環境は人により違確認できないため、合うものを探す必要がある
- ③まずは代表的なものを1カ月程度使用し症状が改善するか見てみるのがお勧め
- ④改善しなかったら違う商品を1カ月使用し、効果があるものを探す
- ⑤改善した商品が見つかったら身体に合うということなので大容量を購入するとお得
基本はこの流れで導入はクリアできます。
このチャートで納得していただくと1カ月後に再来店していただけるのです。
「身体に合う整腸剤は必ず見つかりますが、飲み忘れると当然効果は出ないので『1日3回』を忘れないようにしてくださいね」
という一言を添えるとフレンドリーに接客が行えます。
店舗の売上を最大化する手段
店舗の売上は「客単価×客数」です。
つまり「ひとりでも多くのお客さまに来店していただき多くの商品を購入していただく」ことで店舗の売上を向上させられます。
では店舗で売上を上げるためにできることは具体的に何かを見ていきましょう。
リピーターを作る基本の考え方
しかし効果がすぐに現れるような販促(チラシや大型セール)は会社主導でおこなうため、現実的ではありません。
店舗で行えることは地道ですが「お客さまの信頼を得て繰り返し来店していただく」ことが最重要となります。
会社が「クーポン配布」や「ポイントカード施策」をおこなうのもこの一貫ですが、接客の際もしっかりとおこなうべきです。
つまり、接客の際に「次回来店のための導線」を作るのです。
先ほど整腸剤の接客導入で「正解はないから1カ月試して効果がなかったら他の商品を...」というのも、この導線に当たります。
これは風邪薬などの短期の症状を緩和する商品では使えないテクニックなので、慢性的な症状、つまり「年間需要のある商品」が重要で強化する必要があるのです。
短期集中商品と分けて考え販売する
短期的に集中して販売する商品は、お客さまが「今辛いから何か買う必要」が存在するため接客がなくてもチャンスロス自体は発生しません(推奨品は販売できなくても「お客さまが何も買えなくて退店する」という「チャンスロス」はありません)。
しかし慢性的な症状の場合は購入意思が風邪薬や鼻炎薬などよりも低いため、何度も来店し悩んだ上で購入されることも多いのです。
推奨品で「鼻炎薬は売れるけど整腸剤は苦手」という方は、この概念を理解すると売りやすくなります。
つまり、整腸剤に売りたい商品があったら数カ月前、できれば年間通してこの「下地」を作っておけば販売しやすい土壌を生成できます。
セルフで大容量購入を増やすためには
小容量から購入していただき大容量の購入に繋げるにはもうひとつ越えるべき障壁があります。
それは当然ですが「価格」です。
クーポンを使用したり販促でサンプルを添付するのも有効でぜひ活用していただきたいのですが、整腸剤以外でも医薬品で慢性的な症状に使っていただきたいのは以下の2点です。
【医薬品大容量販売の基本】
- 1日当たりの金額訴求
- 症状改善までの日数訴求
前者の「1日当たりの訴求」はテレビショッピングでもお馴染みですが、ぜひ使ってください。
この訴求は他の風邪薬や鼻炎薬でも使えるので「代表的なNB品の最小量とPB品の大容量」の1日分価格を覚えておくとインパクトがあるので、推奨品の価格は計算しておきましょう。
整腸剤でも代表的な1日分価格をPOP表記にしたりメモをしておくことで訴求力が上がります。
小容量と大容量では1日当たりで1.5倍~2倍ほどの価格差があるため、「常備薬として毎日使うのなら大容量の方がお得です」という訴求は必ずおこないましょう。
もうひとつ「症状改善までの日数訴求」は整腸剤の他にもビタミン剤などで応用可能です。
こうした商品の接客時に「試しに1週間分を...」と高確率で言われますが、これはセールストークでなく、効果が出ない確率が高いのです。
せっかく効果がある商品を短期間の「お試し期間」で見切られてしまうのは、店舗にとってもお客さまにとっても、もったいない話です。
「このビタミン剤は効果が出るまで最低限〇日間は必要です」といった小容量から中容量~大容量への訴求は結果が出やすいのでぜひチャレンジしてください。
勉強以外にも、お客さまに満足いただき店舗の売上に貢献することも登録販売者の責務です。
ひとつずつ地道にスキルアップしていきましょう!
執筆者:ケイタ店長(登録販売者)
ドラッグストア勤務歴20年、一部上場企業2社で合計15年の店長経験を活かし、X(旧Twitter)などで登録販売者へのアドバイスや一般の方への生活改善情報の発信を行っている。X(旧Twitter)フォロワー数約5,000人。
【新着】登録販売者のための業界コラム
- 2024年04月26日 【現役ドラッグストア店長直伝】登録販売者が見落としやすい接客ポイント<登録販売者のキャリア>
- 2024年04月11日 【転職成功者インタビュー】Uターン転職で地元の企業へ。登録販売者はUターン転職に向いている?
- 2024年04月11日 【登販向け】市販の睡眠改善薬のおすすめは?睡眠薬との違いも解説
- 2024年04月09日 登販が活躍できる「ドラッグストア コスモス」ってどんな会社?給料や働き方などを徹底調査!
- 2024年04月09日 登録販売者資格が役に立たないと言われるのはなぜ?取得のメリットや将来性を解説