2025年改正薬機法の「一般用医薬品・遠隔管理・受渡制度」とは|登録販売者の仕事・雇用はどう変わる?今からできる対策ガイド
はじめに|2025年改正薬機法で何が変わる?──一般用医薬品「遠隔管理・受渡制度」と登録販売者へのインパクト
今回のコラムでは、一般用医薬品販売における「遠隔管理の解禁」についてご紹介します。これは、登録販売者の方々に激震が走るかもしれない大きな変化です。
2025年(令和7年)5月に改正された薬機法(※)により、一般用医薬品を遠隔管理で販売・受渡しする制度が新たに導入されました。この新制度は、2027年(令和9年)5月20日からの施行が決定しています。
(※正式名称:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)
デジタルを活用した遠隔管理の薬機法改正は、2024(令和6)年1月12日、厚生労働省の「医薬品の販売制度に関する検討会のとりまとめ」に基づいています。
このとりまとめの2ページ冒頭では、デジタルを活用した遠隔管理について、大きく2つのポイントが挙げられています。
1つ目は、「将来的な人口減少により、周囲に薬局や店舗販売業がない地域が増加すると想定されるが、そうした地域でも適切に医薬品を提供する体制が必要である」という点です。
2つ目は、「店舗に薬剤師や登録販売者が常駐していない場合でも、デジタル技術を活用し、実地・対面と同等以上の質で対応できるようになれば、業務の効率化や人材の有効活用が期待される」という点です。
これによって、医薬品のデジタル活用による遠隔販売の基本的な考え方は、「過疎地対策」と「夜間・早朝のアクセス改善」がその背景にあるといわれています。
そもそも、この一般用医薬品の遠隔管理という議論は、規制改革推進会議から始まりました。
新制度の表向きの理由は、「過疎地や深夜帯における医薬品アクセスの確保」や「デジタル技術を活用した新たな提供体制の構築」などとされています。しかし、その本質は「登録販売者不要論」にも繋がりかねない規制緩和策の一環であることは間違いありません。
そのため登録販売者は、この医薬品の遠隔管理について十分に把握し、次なる対応を打っておく必要があります。
目次
- 第1章 2026年6月の省令公布で制度の全体像が確定──登録販売者が今から押さえるべきポイント
- 第2章 一般用医薬品「遠隔管理・受渡制度」はこう変わる|薬局・ドラッグストア・コンビニに求められる新ルール
- 第3章 一般用医薬品の「遠隔管理・受渡制度」の仕組み──薬局・ドラッグストア・コンビニはどう関わるのか
- 第4章 受渡管理者・登録受渡店舗・責任者の役割整理──登録販売者はどこで関わるのか
- 第5章 登録販売者が押さえるべき6つの重要ポイント──条文だけでは見えない実務上の注意点
- 第6章 2027年施行までに登録販売者が準備すべきこと──キャリアを守り・活かすために
第1章 2026年6月の省令公布で制度の全体像が確定──登録販売者が今から押さえるべきポイント
施行に先立ち、厚生労働省は2026年(令和8年)6月30日に「改正薬機法の施行に伴う省令の整備等に関する省令」を公布しました。
この記事では、同省令によって定められた制度の全体概要を整理するとともに、実務上解釈が難しく「見えにくい」とされる6つの重要項目(研修内容、面積要件、OTC自販機、第1類医薬品の遠隔販売要件、指定濫用防止医薬品の遠隔販売要件、常時勤務要件)について深く掘り下げて解説していきます。
第2章 一般用医薬品「遠隔管理・受渡制度」はこう変わる|薬局・ドラッグストア・コンビニに求められる新ルール
今回の省令をもって、一般用医薬品販売の遠隔管理・受渡に関する具体的なルールが明文化されました。
その骨格は「委託する側の薬局・店舗販売業」と「受託する側の登録受渡店舗」の双方に対する厳格な管理体制の構築です。
言うまでもなく管理するのは都道府県薬務課ですが、一般のコンビニ、スーパーマーケットなど医薬品販売業の許可がない一般小売を、薬務課がどのように管理・指導するかは大きな問題です。
そのために今回公布された省令には、地方自治体により管理・指導方法が一番の柱になっています。以下にその概要を紹介します。
第3章 一般用医薬品の「遠隔管理・受渡制度」の仕組み──薬局・ドラッグストア・コンビニはどう関わるのか
一般用医薬品の受渡しを他店舗(コンビニエンスストアやスーパーマーケットなど)に委託して遠隔管理を行う薬局・店舗販売業者は、事前に都道府県知事等への申請が必要になります。
申請には、使用する遠隔通信システムの仕様、情報のセキュリティ対策、委託先との契約内容などの添付が求められます。
また、行政側はこれらの情報を「許可台帳」として整備し、どの薬局・店舗販売業者が、どの受渡店舗を遠隔管理しているかを、一元的に把握・管理する仕組みを構築しなければなりません。
第4章 受渡管理者・登録受渡店舗・責任者の役割整理──登録販売者はどこで関わるのか
一般用医薬品販売の遠隔管理のイメージを、厚生労働省が作成した資料から以下に紹介します。
まず薬局・店舗販売業者側を「受渡管理店舗」(遠隔から受渡を管理する店舗)といい、そこの管理者を「受渡管理者」(薬剤師・登録販売者に限定)といいます。店舗管理者と受渡管理者は別人でなければなりません。
両方兼務できないのが大原則です。ただ僻地対策として都道府県知事が、必要と認める場合は例外的に兼務できるという建付けです。
一方、薬局・店舗販売業者が受渡を委託する店舗を「登録受渡店舗」(医薬品販売業の許可不要)といい、そこの管理者を「登録受渡店舗責任者」(薬剤師・登録販売者である必要なし)といい、登録受渡店舗を運営する法人を「登録受渡業者」(登録受渡店舗の経営者)といいます。
はじめに、この受渡しを委託する薬局・店舗販売業者側と、そこから一般用医薬品販売の受渡を受託する「登録受渡店舗」側の関係をよく理解しておきましょう。現実的にはドラッグストアなどが登録受渡店舗になる可能性もあることから、「登録受渡店舗が薬局・店舗販売業」ということは十分考えられます。
1)薬局・店舗の受渡管理者の遵守事項
委託元の薬局・店舗販売業には、遠隔から医薬品販売の管理を行う「受渡管理者(薬剤師または登録販売者)」を設置する義務があります。受渡管理者の遵守事項は図表-2の通りです。
2)登録受渡店舗の登録規定と登録証
受渡しを実際に担う店舗(以下、登録受渡店舗)は、新たに都道府県等への「登録」が必要となります。
登録要件を満たした店舗には「登録証」が交付され、これを店内の見やすい場所に掲示することが義務付けられます。これは、無許可の店舗が医薬品の受渡しを行うことを防止するための措置です。
3)登録受渡店舗責任者の要件・業務・遵守事項
登録受渡店舗には、医薬品の物理的な管理(情報提供は不可)を行う「登録受渡店舗責任者」を置かなければなりません。
この責任者は登録販売者などの専門資格を有する必要はありませんが、医薬品の取り扱いに関する一定の要件を満たす者であることが求められます。
登録受渡店舗の登録受渡店舗責任者の主な業務と遵守事項は図表-3の通りです。
4)登録受渡業者の遵守事項
登録受渡店舗を運営する法人(登録受渡業者)に対しても遵守事項が設けられています(図表-4)。
5)登録受渡店舗における掲示および陳列の規定
店舗内に明瞭に掲示しなければならない事項は図表-5の通りです。
また陳列に関しては図表-6の通りです。
第5章 登録販売者が押さえるべき6つの重要ポイント──条文だけでは見えない実務上の注意点
次に省令の条文を追うだけでは意図が読み取りにくい部分が存在しています。ここでは、業界内で特に議論の的となっている6つの項目について、その背景と運用上の考え方を解説します。
1)受渡委託店舗と登録受渡店舗の管理者の研修内容について
省令では、委託元の受渡管理者と、受託側の登録受渡店舗責任者の双方に研修の受講を義務付けていますが、その「内容」についてはまだ明らかになっていません。厚労省の担当者は「現時点でいえるのは施行に間に合うまでに通知で明らかにする」としています。
ただ、これまで検討内容等から類推されるのは、委託側の受渡管理者(薬剤師等)に対する研修は、主に「非対面でのアセスメント技術」「遠隔通信システム特有のセキュリティおよびトラブルシューティング」「データに基づく服薬指導と健康相談」に重点が置かれると予測されます。
画面越し、あるいはテキストベースでのコミュニケーションから、患者の潜在的なリスクを見抜くスキルが求められることになります。
一方、登録受渡店舗責任者(無資格者等)に対する研修は、「医薬品の物理的・衛生的な管理手法」「購入者の本人確認と受渡時のエラー防止策」「システムダウン等の緊急時における対応フロー」「個人情報の取り扱い」が中心になると予測されます。
特に、医薬品に関する質問をされた際に「自分では答えず、必ず委託元の専門家(モニターや電話)に繋ぐこと」を徹底するための倫理・コンプライアンス教育が必須とされる見込みです。
この研修は、省令で①受渡管理者、②受渡委託に従事する薬剤師・登録販売者と、③登録受渡店舗責任者、④登録受渡店舗の受渡しに従事する者と4者に対して必要になります。
なお、この研修は登録販売者の継続的研修、追加的研修と違い、第3者の外部研修実施機関の必要はありません。自社の研修で対応できる方向で進められています。
2)登録受渡店舗の「6.6㎡」の面積要件の考え方
登録受渡店舗において、医薬品の受渡や陳列のために「6.6㎡以上」の専用面積を確保することが規定されています。
この「6.6㎡」という数字は、従来の薬局や一般販売業の構造設備規則における試験室に相当する広さです。これだけの広さを必要とされていますが、パブリックコメントでは特に「6.6㎡」に異議を唱える意見はなかったとのことで、構造設備規則に明記されることが決定しました。
単なる「受渡ロッカー」であればこれほどの面積は不要に思えますが、この面積規定にはスペースだけの問題ではなく、コンビニエンスストア等の日用品・食品と、医薬品を明確に区分(ゾーニング)するための要件でもあります。
具体的には、鍵付きの保管庫、購入者がプライバシーを保ってモニター等で登録販売者などの専門家と相談できるブース(またはパーテーションで仕切られた空間)、そして安全に受渡しを行うための専用カウンターなどです。
他商品との混入を防ぎ、医薬品販売という特殊な行為を行うための「店舗内の独立した聖域」を確保するための基準だといえます。
例えば、コンビニエンスストアなどで、医薬品の受渡のために6.6㎡のスペースを用意するとは常識的には思えません。むしろドラッグストアなどで、遠隔管理が活用されるのではないかと予測されます。
3)OTC自販機の店舗外設置について
本省令で最も画期的な緩和の一つが、OTC自販機(省令では「受渡しを機械のみの操作により行う設備(受渡機械設備)」といっています)の解禁です。もともと遠隔管理の話はOTC自販機から始まっています。
地区を限定して令和4年度から政府の新技術等実証制度(サンドボックス制度)の一環でOTC自販機の実証実験が行われていますが、その実験では「採算が合わない」という結果がでています。
その後もOTC自販機は一般用医薬品販売の遠隔管理の一つとして継続し、サンドボックス制とは別に制度として店舗外(屋外や駅構内など)にも置ける方向で検討が進められてきました。
これまで医薬品の自販機は厳しく制限されてきましたが、最新のIoT技術と遠隔管理体制を前提に解禁されます。ただし、単に自動で商品が出てくる機械ではありません。
設置要件として、次のような事項が想定されます。
(1) 委託元の薬局・店舗販売業と常時ネットワーク接続されていること
(2) 登録販売者等が遠隔で販売可否を判断し、システム経由でロックを解除しない限り商品が排出されない構造であること
(3) 厳格な温度・湿度管理機能(夏場の高温対策等)を有すること
(4) 堅牢な防犯構造(破壊や盗難への耐性)を持つこと
以上のような内容が求められていますが、これらを満たす高度な「遠隔制御型ディスペンサー」である場合に限り、店舗の敷地外での運用が認められる方向です。
ただし、現時点では店舗の敷地外での運用といっても、現実的には登録受渡店舗責任者などが、すぐに立ち寄れる場所、具体的には店舗外とはいっても「店舗の外壁に沿った位置などが想定される」と厚生労働省の担当者は筆者に語っています。
省令(薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令第3条第1項関係)でも「常時、登録受渡店舗責任者又は登録受渡店舗責任者が指定する当該登録受渡店舗の従事者が速やかに受渡機械設備の動作の不良に対処できる体制を備えていること。」と定義しています。
4)第1類医薬品の遠隔販売において、モニターを通じた双方向の情報提供が必須ではない根拠
今回の省令では、第1類医薬品を遠隔(登録受渡店舗)で販売する際、必ずしもモニター等を通じて薬剤師と購入者が「双方向(ビデオ通話など)で」やり取りをする必要はないとされています。
これは一見すると対面販売の原則から後退しているように見えますが、根拠は「特定販売(ネット販売)の枠組みとの整合性」にあります。
厚生労働省の担当者は、「現在、第1類医薬品もネットで購入でき、直接、モニター等による双方向での情報提供は求めていません。その建付けを変える予定はない」と、明快に回答しています。
そもそも情報提供、相談対応は第1類医薬品を含めてオンラインで可能です。誤解されている方も多いのですが、一般用医薬品のネット販売が解禁されたときに、第1類医薬品も含めて、情報提供、相談対応は遠隔管理が可能になりました。
遠隔管理が不可能なのは「医薬品の管理」と「従業員の管理」のみが、リアル管理が必要でした。
今回の遠隔管理を検討した「医薬品の販売制度に関する検討会」でも、厚生労働省側から「情報提供、相談対応はすでにネットで遠隔管理が解禁されている。
ここでの検討は医薬品と従業員の遠隔管理について検討して頂きたい」と明快に語っています(図表-7)
出典:令和5年4月10日、第3回医薬品の販売制度に関する検討会
5)指定濫用防止医薬品の遠隔販売における、専門家との双方向のやり取りが不要な条件
咳止めや風邪薬など、オーバードーズ(過剰摂取)のリスクがある「指定濫用防止医薬品」の販売は、近年極めて厳格化されています。
それにもかかわらず、今回の遠隔受渡制度で「特定販売と同様であれば双方向のやり取り(対話)が不要」とされたことには、デジタルならではの強力なシステム的担保が背景にあるといえます。
ただ、問題は第1類医薬品よりも指定濫用防止医薬品の遠隔管理の方が、年齢確認の面で難しいという点です。年齢確認はマイナンバーカードのようなデジタル身分証明証がないと、口頭での年齢確認はできません。
つまり一般用医薬品販売の遠隔管理は、年齢確認が必須の指定濫用防止医薬品の方が厳しくなるということができます。すでにネット販売による指定濫用防止医薬品の売上も正確なデータはまだ出ていませんが、減少すると予測されています。
6)受渡しを行う時間内における、登録受渡店舗責任者等の「常時勤務」について
医薬品の受渡しを自動化・遠隔化する一方で、省令は「受渡しを行う時間内は常時、登録受渡店舗責任者又は指定する従事者が勤務していること」を義務付けています。
無人店舗での医薬品販売は、現時点では認められていません。つまり完全な自動販売機までは踏み切られていません。
この根拠は「フェールセーフ(安全装置)と物理的セキュリティ」の観点にあるといわれています。第一に、医薬品の受渡しエラーや通信トラブル、機器の故障が発生した際、現場で直ちに対応・報告できる人間が必要だということです。
第二に、本人確認システムをすり抜けようとする行為(他人の身分証の不正使用など)に対する抑止力としての「人の目」を、遠隔でどのように担保するかです。
第三に、高齢者などデジタル機器の操作に不慣れな購入者に対する、端末操作のサポート(※医薬品の相談には乗らないが、通信をつなぐまでのサポート)を行うためです。
常に有資格者がいる必要はないにしても、「誰か責任の所在が明確なスタッフ」が存在しないと都道府県の薬務課は管理できないばかりか、人の存在が社会インフラとしての安全性を担保する最後の砦として位置づけられているといえます。
第6章 2027年施行までに登録販売者が準備すべきこと──キャリアを守り・活かすために
2027年5月に施行される一般用医薬品の遠隔管理・受渡制度は、国民のセルフメディケーションを推進するための巨大なパラダイムシフトになる可能性を秘めています。省令で示された要件は、利便性の向上と安全性の確保という相反する課題を、デジタル技術(認証、履歴管理、遠隔通信)と物理的要件(面積、陳列、人の配置)のベストミックスによって解決しようとしています。
一人一人の登録販売者は今回の遠隔管理の背景には前述の通り、規制改革の流れが根底にありますので、安易な取り組みはかえって規制そのものの廃止につながりかねないことを十分に認識する必要があります。
そのために登録販売者は単にシステムの問題としてとらえるのではなく、この省令に込められた「安全確保のロジック」を深く理解し、研修や自己研鑽を急ピッチで進める必要があると思います。
現在、ロキソニンなどの第1類医薬品が第2類医薬品に移行する新スキームが始まっています。その中で登録販売者がどう対応していくかが非常に注目されています。
一般用医薬品販売の遠隔管理は登録販売者にとっては脅威ですが、登録販売者が医薬品の適正使用を推進していると断言できる日々の活動が極めて重要になっていることは間違いないといえます。
著者情報:
医薬ジャーナリスト 横田 敏
プロフィール
1982年より医薬関連出版社に勤務し、編集長等を歴任。1998年以降は関係団体に転向し、日本チェーンドラッグストア協会や日本薬業研修センター等の理事を務める。2026年6月より消費者庁客員研究員。厚生労働省の検討会委員や、スイッチOTC医薬品関連の厚労科研研究協力者など多数の実績を持ち、現在に至る。
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