【2025年薬機法改正】市販薬がコンビニで受け取り可能に?登録販売者への影響も解説

2025年5月に、改正薬機法が可決、成立しました。これにより、今後は薬剤師や登録販売者が不在のコンビニなどでもOTC(一般用医薬品)の受け取りが可能になります。しかし、この薬機法改正案が発表された頃から、「登録販売者の需要が減ってしまうのでは?」という不安の声も多く見られるようになりました。
この記事では、コンビニ受け取りに関する改正薬機法の内容、そして「本当に登録販売者は不要となるのか」という点について、薬剤師の視点で解説します。とくに、登録販売者不要論に不安を感じている登録販売者の方は、読んでみてくださいね。
目次
- ・登録販売者必見!「市販薬のコンビニ受け取り」に関する薬機法改正の概要
- ・登録販売者が知っておくべき 薬機法改正がおこなわれた理由
- ・登録販売者が不要になるって本当?
- ・登録販売者の働き方も変わる?今回の薬機法改正のメリット
- ・登録販売者としての価値を高める方法
- ・まとめ|登録販売者としての能力を磨き、環境変化に負けない自分になろう
登録販売者必見!「市販薬のコンビニ受け取り」に関する薬機法改正の概要

まずは、OTC(一般用医薬品)のコンビニ受け取りに関する法改正の概要について解説します。 この法改正は、簡易的に「コンビニ受け取り」と表現されることが多いため、
「資格者不在のコンビニで、手軽に薬が買えるようになるらしい」
「この形態の店舗が増えれば、登録販売者が不要になるのでは?」
といった認識を持つ方が多く見受けられます。この認識は、半分正しく、半分間違っているので、新制度の仕組みを整理しましょう。
まず、この法律は、「独立した資格者不在の店舗を作れる」というものではありません。実際には、「オンラインで専門家から情報提供をおこなった後、資格者不在の店舗(登録受渡店舗)で商品を受けわたす」というものです。
「資格者不在の店舗」は、独立した存在ではなく、その店舗を管理する「薬局・店舗販売業」と紐づいています。「薬局・店舗販売業」が「親」、「資格者不在の店舗」が「子」のような関係を想像してください。
「薬局・店舗販売業」には薬剤師・登録販売者が在籍しており、お客さまにオンラインで情報提供や服薬指導をおこなった後、商品を販売します。
商品の販売、つまり、決済そのものは「薬局・店舗販売業」がおこないますが、実際の商品の受けわたしは「資格者不在の店舗」でおこなわれます。販売に関する一連の責任は、原則として委託元の薬局や店舗販売業者が有することになります。
また、「資格者不在の店舗」には、販売機や店頭端末の設置、店頭スタッフの配置などが想定されています。
ここまでの説明で、システムが割と複雑でハードルが高そうだと感じた方もいると思います。そのイメージ通り、販売システムの構築や安定した運営には、それ相応のコストと労力が必要になることでしょう。

登録販売者が知っておくべき 薬機法改正がおこなわれた理由

次は、今回の法改正がおこなわれた理由について解説します。
理由① 少子高齢化による医療崩壊を防ぐため
近年、日本では少子高齢化が進んでいます。これは、「医療を受ける人(高齢者世代)」が「医療を提供する人(現役世代)」を上回っている状態です。現行制度のままでは、資格者の不足によって十分に医療を供給できなくなるおそれがあります。そこで、専門的な知識を有する薬剤師などを医療において有効活用できれば、医療崩壊を防ぐことができますよね。
さらに、医療制度の安定化のためには、セルフメディケーションも欠かせません。OTC(一般用医薬品)の遠隔販売により、薬剤師や登録販売者を効率的に配置できれば、薬剤師はより医療側に注力でき、登録販売者はOTC(一般用医薬品)の専門性を活かして対応することができます。
理由② 離島や山間部に市販薬を供給するため
現行制度では、OTC(一般用医薬品)を販売する店舗に必ず薬剤師や登録販売者を置かなくてはなりません。離島や山間部などでは資格者の確保が難しく、薬局やドラッグストアがほとんどない地域もあります。遠隔地域では高齢化が進んでいるケースもあるため、今回の法改正で利便性が向上します。
理由③ 24時間営業のコンビニでも市販薬が買えるようになるため
コンビニはその多くが24時間営業です。一方、薬局やドラッグストアは早朝や深夜に閉店している店舗が多く、その時間帯にコンビニでOTC(一般用医薬品)が入手できるようになれば、地域の人たちの安心にもつながります。
ただし、現状のコンビニの売場面積を考えると、あくまでも在庫は「主力商品」に限られる可能性もあります。コンビニ業界の今後の事業展開にもよりますが、品ぞろえでは不利な面もあるかもしれませんね。
登録販売者が不要になるって本当?

「資格者不在の店舗」と聞いて、「登録販売者の需要が減るのではないか?」と不安に思われる方もいることでしょう。しかし、あえて断言しますが、日本の医療供給の安定化を図るうえで、登録販売者は欠かせない存在です。
かつての日本では、OTC(一般用医薬品)を安全かつ十分に供給するうえで、薬剤師が不足していました。そこで誕生したのが、OTC(一般用医薬品)の専門家である「登録販売者」の資格です。
しかし、少子高齢化が加速する日本では、薬剤師や登録販売者の人材不足も今後ますます進んでいくと考えられます。そのため、全国民のセルフメディケーションをこの制度一つで賄うのは、容易なことではないでしょう。
また、新しい制度が定着するまでには膨大な時間がかかることも知っておきましょう。ドラッグストアでは、今でも「登録販売者」の資格を知らないお客さまが多くいます。登録販売者制度は2009年に誕生し、すでに15年が経過していますが、いまだに一般消費者への周知が行き届いているとはいいにくい状況です。
今回の法改正も、厚生労働省は安全を第一に考え、まずは厳格な条件下でスタートし、徐々に緩和されて広まっていくと推測されます。セルフレジでのトラブルも多発している中で、今すぐに高齢者が皆オンラインでのやり取りをスムーズにおこなうようになる状況は想定しづらく、少しずつ環境が整っていくイメージを持つとよいでしょう。
しかしながら、登録販売者の在り方が今まで通りでよいのかといえば、そうではありません。本コラムの最後の項目では、登録販売者の価値を高める方法について解説しているので、ぜひ参考にしてくださいね。
登録販売者の働き方も変わる?今回の薬機法改正のメリット

今回の法改正では、登録販売者に対するデメリットばかりが強調されることもありますが、メリットもあります。OTC(一般用医薬品)の遠隔販売が可能になると、OTC(一般用医薬品)の情報提供の業務をメインでおこなう登録販売者の需要が増えることが予想されます。
通常の店舗で働いている場合、医薬品と無関係なレジなどの業務を中心に任されるケースもありますが、遠隔販売をおこなう店舗では、薬に関する業務を引き受ける機会が増えるでしょう。登録販売者の専門性を磨く、よい機会になりそうですね。
登録販売者としての価値を高める方法

最後に、登録販売者としての価値を高める方法を紹介します。これを参考にして、環境変化に強い登録販売者になりましょう。
正しい知識で丁寧に接客することが重要
近年、OTC(一般用医薬品)の乱用の問題もあることから、今後は登録販売者の「適切な接客」の重要性が高まっていくと考えられます。つまり、「どれだけ丁寧かつ正しい知識で対応できるか」が、登録販売者の存在価値を高めるポイントになります。
「お客さまからうまく情報を聞き出せるように、質問の仕方を工夫してみよう」
「売れ筋商品の特徴をしっかりと頭に入れておこう」
「今日はお客さまからの相談に上手に対応できなかったから、復習をしよう」
といった日々の自己研鑽が、その存在価値を高めていきます。
ドラッグストアの運営企業も、行政指導が入ると信用にかかわるため、販売にかかわるトラブルは未然に防ぎたいと考えています。今後、企業からの需要が高まる人材は、「OTC(一般用医薬品)を正しい知識で適切に販売できる登録販売者」になっていくことを意識しましょう。
「対面接客ならでは」の強みを活かそう
対面接客とオンライン接客では、やはり受け取る情報量に差があります。顔色や呼吸の乱れ、体臭の変化など、お客さまのちょっとした違和感に気づきやすいのも、対面接客といえるでしょう。
また、ドラッグストアでは、薬だけでなく化粧品や健康食品など、幅広い商品を取り扱っています。そのため、お客さまの症状や不安な気持ちを解消するために、薬以外の商品を実際に見てもらい、あわせておすすめすることも可能です。オンライン接客ではなかなか実現が難しい販売方法も、対面ではスムーズにできるので、ぜひ強みにしてください。
「あのドラッグストアに行けば、登録販売者が優しく丁寧に相談に乗ってくれる」と認識されれば、その店舗の売り上げにも自然とよい影響を与えます。顔なじみのお客さまから「あの人は地域の健康アドバイザーだから」と認められるような存在になれれば、それは間違いなく「強く生き残れる登録販売者」です。
お客さまのお悩み解決に役立つ、登録販売者の接客術についてさらに詳しく知りたい方は、ぜひ以下のコラムも参考にしてください。
【現場で役立つ登録販売者の接客術】覚えておくだけでOK!自然な声かけフレーズ5選まとめ|登録販売者としての能力を磨き、環境変化に負けない自分になろう
法改正による医薬品販売の効率化は、一見すると、登録販売者の存在価値が下がる制度のように思えるかもしれません。しかし、OTC(一般用医薬品)を取り巻く制度において、「医薬品の適正使用」が必須であることは今後も変わりません。登録販売者は、法改正後も薬剤師をサポートする存在として求められ続けるでしょう。
ただし、登録販売者としてどのような展望を描いていけるかは、皆が同じというわけではありません。もし「登録販売者として強く生き残っていきたい」と望むならば、日々の接客の中から課題を見つけ、正しい知識と効果的な接客方法を身につけていく必要があります。
環境変化に戸惑うこともあると思いますが、大きな法改正はこれが初めてではなく、過去にも繰り返しおこなわれています。そのたびに皆、衝撃を受けながらも、少しずつ新しい環境に適応しているのです。
登録販売者の皆さんによりよい未来が訪れるよう、これからも応援しております。

執筆者:村松 早織(薬剤師・登録販売者講師)
株式会社東京マキア 代表取締役
登録販売者や受験生向けの講義を中心に事業を展開
X(旧:Twitter)、YouTube等のSNSでは、のべ2万人を超えるフォロワー・チャンネル登録者に向けて、OTC(一般用医薬品)についての情報発信をおこなっている。
- ■著書
- ・医薬品暗記帳 医薬品登録販売者試験絶対合格! 「試験問題作成に関する手引き 第3章」徹底攻略(金芳堂)
- ・薬機法暗記帳 医薬品登録販売者試験絶対合格! 「試験問題作成に関する手引き 第4章」(金芳堂)
- ・これで完成! 登録販売者 全国過去問題集 2023年度版(KADOKAWA)
- ・村松早織の登録販売者 合格のオキテ100(KADOKAWA)
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