【2025年改正】登録販売者が注意すべきOTC販売ルールとは?違反事例と対策を解説

2025年5月に改正薬機法が公布され、今後は順次、必要な政令や省令の改正、通知の発出がおこなわれる予定です。今回の改正薬機法は、登録販売者の業務への影響も大きい内容となっているため、このタイミングで法令遵守の重要性について理解しておきましょう。
このコラムでは、改正薬機法の概要や、過去に実際にあった違反事例について解説します。登録販売者が現場でとくに注意すべき点について、今一度整理し、ご自身の販売方法を見直すようにしましょう。
【この記事で得られること】
- 2025年5月の改正薬機法では「指定濫用防止医薬品の販売規制強化」「一般用医薬品の受渡しに関する事項」「要指導医薬品のオンライン販売の解禁」などについて定められている。
- 登録販売者は、違反事例の多い「第一類医薬品の販売」や「濫用等のおそれのある医薬品の販売」について、とくに法令順守を徹底する必要がある。
目次
登録販売者の業務にも影響あり!改正薬機法の内容

これから改正薬機法が順次施行される予定ですが、登録販売者にとくに関係のある内容は、大まかに次の3点です。
改正薬機法① 指定濫用防止医薬品の販売規制強化
「濫用等のおそれのある医薬品」の名称は「指定濫用防止医薬品」に変更され、販売規制がさらに強化されます。
若年者への販売がより厳しくなり、また、書面での情報提供などが法律で義務付けられるため、情報提供を拒否するお客さまなどに対し、現在よりも強い法的根拠を持って販売をお断りすることができるようになります。
新しいルールの施行日は、令和8年5月1日とされています。
改正薬機法② OTC(一般用医薬品)の受渡しに関する事項
この改正薬機法は、一般的に「OTC(一般用医薬品)のコンビニ販売」と呼ばれることがあります。コンビニのような薬剤師・登録販売者が不在の店舗において、資格者からのオンラインでの情報提供後に、OTC(一般用医薬品)を受け渡すことが可能になります。
改正薬機法③ 要指導医薬品のオンライン販売の解禁
適正に使用するうえで、とくに取り扱いに注意が必要な「要指導医薬品」は、薬剤師からの対面での情報提供・指導が義務付けられていましたが、今後はオンラインで情報提供をおこなった後に販売が可能になります。ただし、すべての要指導医薬品が該当するわけではなく、今まで通り対面販売を求める「特定要指導医薬品」が新設されます。「特定要指導医薬品」としては、緊急避妊薬が指定される可能性があります。
要指導医薬品:オンラインでの情報提供後に販売が可能
特定要指導医薬品:対面販売のみ可能
これにより、店舗で一緒に働く薬剤師の業務に影響が出ることも考えられるため、登録販売者の皆さんも必ず押さえておきましょう。
なお、改正薬機法②と③については、執筆時点では施行日が決まっていません。
参考:厚生労働省「令和7年の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)等の一部改正について」
登録販売者必見!薬機法の違反事例から対応方法を学ぼう

登録販売者は法令に基づいた店舗運営が必須です。ここでは、現行の薬機法の違反事例をピックアップし、登録販売者がとくに現場で注意すべき点について解説していきます。
違反事例① 登録販売者による第一類医薬品の販売
一つ目は、長崎県にある店舗(店舗販売業)での事例です。
こちらの店舗では、約1年間にわたり、登録販売者による第一類医薬品の販売をおこなっていました。第一類医薬品は「薬剤師に販売させなければならない」と定められており、この行為は薬機法の第36条の9に違反します。
また、「店舗管理者が果たすべき、店舗に勤務する従事者を監督し、及び店舗の医薬品の管理をおこなう業務を怠った」という点でも、薬機法第29条第1項に違反します。
これらの違反を受け、県は当該店舗に対し、「5日間の医薬品販売業務の停止」の行政処分を下しました。
OTC(一般用医薬品)は、誰が情報提供をおこない販売できるのかが、法令で定められています。万が一、登録販売者が販売した第一類医薬品でお客さまに健康被害が出てしまった場合、お客さまから賠償請求される可能性もあります。
また、たとえ会社側から販売の指示があったとしても、法令に反する販売方法については拒否するようにしましょう。
参考:長崎県「医薬品医療機器等法違反に係る行政処分について」
違反事例② 濫用等のおそれのある医薬品の不適正な販売
次は大阪市にある薬局での事例です。
こちらの薬局では、濫用等のおそれのある医薬品を販売する際、薬剤師に他の薬局等からの購入状況などを確認させていませんでした。さらに、お客さまが「適正な使用のために必要と認められる数量」を超えて購入しようとする場合に、理由なども確認せず、そのまま販売していました。
これらの行為は、薬機法第9条第1項に基づく、同法施行規則第15条の2に違反します。
こちらの薬局では、処方箋の交付を受けていない者に対して正当な理由なく処方箋医薬品を販売するなど、他にも多数の違反行為がありました。そのため、大阪市は当該薬局に対し、
- 45日間の業務停止
- 薬局の業務の改善命令
の行政処分を下しました。
参考:大阪市「報道発表資料 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律違反者に対する行政処分を行いました」
「濫用等のおそれのある医薬品」の確認事項はいくつもあるので、中には重荷に感じている登録販売者もいるかもしれません。しかし、これらのルールは、OTC(一般用医薬品)乱用の問題が広がっている状況を踏まえ、法令で定められているものです。そのため、お客さまに情報提供する際には、話し始める前に法令で定められている旨を伝えてください。
また、1人1個の販売ルールに対して理解が得られないお客さまについては、その理由を具体的に伝えることも大切です。
【1人1個の販売ルールの理由の例】
- 不適正な使用のおそれがある場合には、その使用によって依存が生じる可能性があること
- 若者のオーバードーズが社会問題となっていること
- 対策のために販売数の制限が法令で定められていること
なお、今回の改正薬機法が施行されると、これらのルールはより一層細かく、そして厳しくなります。OTC(一般用医薬品)の乱用問題に対し、現行の薬機法で歯止めが効いていないからこそ、こういったルールの厳格化につながっていることを理解して行動しましょう。
参考:厚生労働省「ゲートキーパーとしての薬剤師等の対応マニュアル」
厚生労働省による抜き打ちの調査により、改善指導を受けるケースも
厚生労働省は、令和6年9月に「医薬品販売制度実態把握調査」の結果を公表しました。
この調査では、薬局・店舗販売業の許可を得た店舗が、医薬品の販売に際し、店舗やインターネットで消費者に適切に説明をおこなっているかどうかを、調査員が一般客を装って確認をおこなったものです。
店舗・インターネット販売において複数の調査項目があり、
登録販売者がかかわる部分では、
=======
「濫用等のおそれのある医薬品を複数購入しようとしたときの対応が適切であった」
→80.9%
=======
と報告されており、遵守率の低い結果が問題視されています。
販売ルールが遵守されていない店舗の名称が個別に公表されることはありませんでしたが、厚生労働省は各自治体との連携により、事業者に対する実態確認、改善指導をおこなっています。
医薬品の不適正使用につながる販売は、お客さまの健康を損なう「負のループ」の温床となってしまいます。
極端な話ですが、「濫用等のおそれのある医薬品」の確認を適切におこなわず、そのお客さまが自宅で不審死をとげ、捜査の結果、販売者として自分の名前が書かれたレシートが自宅から何枚も出てきたとしたらどう感じるでしょうか?皆さんの接客の延長線上にお客さまの未来があることを心に留め、引き続き販売ルールの遵守の徹底を心がけていきましょう。
参考:厚生労働省「「医薬品販売制度実態把握調査」の結果を公表します」
まとめ|登録販売者は法令遵守を意識して業務に取り組もう
医薬品の販売は、薬機法において細かい取り決めがなされています。
今回は実際に行政処分が下された事例を取りあげましたが、現場では、行政処分とまでは行かないまでも、口頭での注意や始末書などでの対応で済んでいる事例がたくさんあります。多数の違反行為があったり、違反を繰り返したりすることで、行政処分にいたってしまうリスクが高まります。
店長や店舗管理者だけでなく、スタッフ全員で法令遵守を意識することで、最悪の事態を免れることができるのです。日ごろから「誰に見られているかわからない」という意識を持って、業務に取り組むようにしましょう。

執筆者:村松 早織(薬剤師・登録販売者講師)
株式会社東京マキア 代表取締役
登録販売者や受験生向けの講義を中心に事業を展開
X(旧:Twitter)、YouTube等のSNSでは、のべ2万人を超えるフォロワー・チャンネル登録者に向けて、OTC(一般用医薬品)についての情報発信をおこなっている。
- ■著書
- ・医薬品暗記帳 医薬品登録販売者試験絶対合格! 「試験問題作成に関する手引き 第3章」徹底攻略(金芳堂)
- ・薬機法暗記帳 医薬品登録販売者試験絶対合格! 「試験問題作成に関する手引き 第4章」(金芳堂)
- ・これで完成! 登録販売者 全国過去問題集 2023年度版(KADOKAWA)
- ・村松早織の登録販売者 合格のオキテ100(KADOKAWA)
- ・やさしくわかる! 登録販売者1年目の教科書(ナツメ社)
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