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【現場で使える!漢方】登販向け:ダイエットのご相談への対処法

【現場で使える!漢方】登販向け:ダイエットのご相談への対処法

次第に温かくなり、これから薄着の季節になりますね。
「ボディラインが気になる!」
「しばらく節制しても全然体重が変わらない...!」
という方も少なくありません。
店頭でダイエットのご相談をいただく機会が増えた方もいるのではないでしょうか。

最近では「ダイエット」と聞いて、「漢方」を思い浮かべる方が少しずつ増えてきました。

しかしSNSなどで、商品名ばかりが先行し、その方のご体質や証に合っていないにもかかわらず、流行に乗って漢方薬を服用してしまうケースがあります。その結果、かえって調子が悪くなってしまったというご相談も少なくありません。

今回のコラムでは、お客さまがダイエット目的で手に取った漢方に対して、その方に適したものかどうかを判断できるよう処方への理解を深めていきましょう。

●扱う漢方
防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)
防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)

目次

流行りに乗るのは注意!ダイエットを漢方でケアするメリット

流行りに乗るのは注意!ダイエットを漢方でケアするメリット

漢方で考えるダイエットとは、「減量を一番の目的とする」というよりも
「その方の体質をケアすることによって、結果的に代謝が上がり適切な体重に落ち着く」
というイメージです。体調が整うことが漢方でのダイエットの大きなメリットであり、健康的美に繋がります。

例えば、血流が悪い(瘀血:おけつ)、水分を溜め込んでいる(水滞:すいたい)など、お身体の中に渋滞のサインがある場合は、それらをしっかり巡らせ、老廃物を出すことが大切になります。

一方で、気血(きけつ)の不足といって、そもそもエネルギーが不足していること(気虚:ききょ)により、代謝が落ちてしまっているような場合には、エネルギーを補うような漢方薬を使います。

「巡らせる」のか「補う」のか、しっかり見極めることが重要ですので、漢方薬でのダイエットのご相談と、その対応は非常に奥深いものになります。

今回の記事では、その一歩手前となる、お客さまがパッケージを手に取りやすいダイエットの漢方に着目し、接客時に気を付ける点を中心にお伝えをさせていただきます。

ダイエットで手に取られやすい漢方。防風通聖散と防已黄耆湯

ダイエットで手に取られやすい漢方。防風通聖散と防已黄耆湯

今回のコラムでは、ダイエットのご相談で有名な、防風通聖散と防已黄耆湯について扱っていきます。

防風通聖散について

ダイエットと聞いて、防風通聖散を思い浮かべる方は少なくないと思います。
しかし、防風通聖散は、どんな方でも服用して良い、という漢方ではありません。

防風通聖散を用いる体の証

防風通聖散は主に【熱証・湿熱(ねっしょう・しつねつ)】の方に使います。

体の証
状態
熱証(ねっしょう)
体に余分な熱がこもりやすく、のぼせやすい
湿熱(しつねつ)
余分な水分や老廃物が体にたまり、脂肪や便秘の原因にもなる

防風通聖散が適している方

防風通聖散は、運動やトレーニングなどでしっかりした筋肉がついていて、生活環境の変化により筋肉の上に脂肪がのったようながっちり体型の方に処方します。お腹はいわゆる太鼓腹と表現されるような方が適しています。

線の細い、若い女性が防風通聖散を服用されているのがSNSなどで散見されますが、適切な使用ではないといえます。

特徴

  • お腹周りに脂肪がつきやすい(ぽっこりお腹)
  • 便秘しやすい
  • 皮膚が脂っぽく、吹き出物が出やすい
  • のぼせやすく、顔が赤くなりやすい
  • 食欲旺盛で、油っこいものや甘いものが好き
  • 汗をかきやすいが、すっきりしない

防風通聖散の主な作用

瀉下(しゃげ)作用
便通を促し、老廃物を排出
清熱(せいねつ)作用
体にこもった余分な熱を取り除く
利湿(りしつ)作用
余分な水分を排出し、むくみを改善

防風通聖散の成分

防風(ボウフウ)荊芥(ケイガイ)麻黄(マオウ)連翹(レンギョウ)黄芩(オウゴン)山梔子(サンシシ)桔梗(キキョウ)薄荷(ハッカ)石膏(セッコウ)大黄(ダイオウ)芒硝(ボウショウ)白朮(ビャクジュツ)甘草(カンゾウ)生姜(ショウキョウ)滑石(カッセキ)当帰(トウキ)川芎(センキュウ)茯苓(ブクリョウ)

防風通聖散の注意点

防風通聖散には、下剤の成分が含まれますので、便秘がちではない方が使うと、お腹に過度な刺激を与えることがあります。

排便により、一時的に体重が減少するかもしれませんが、体質に合っていないにもかかわらず体重の減少を目的とした使い方を続けていると、お身体に負担をかけたり、体内から水分が失われてしまったりします。

そして、大黄製剤などは長期間服用することによる大腸メラノーシス(※)の報告があります。
また、服用を中止すると腸への刺激がなくなり、かえって便秘がちになってしまうというご相談もよくいただきます。
お客さまがそうしたデメリットを知らないまま長期にわたって使用し続けることも避けたいです。

お客さまが防風通聖散をご購入される際は、これらの注意事項をしっかりとお伝えする必要があります。

一般的な使用上の注意についても、きちんと確認しましょう。

(※)大腸メラノーシス:大腸粘膜に褐色~黒色の色素沈着を起こす状態

防己黄耆湯について

防己黄耆湯も「むくみ太り」というパッケージにひかれて手にされるお客さまが多い漢方です。コッコアポに含まれることでも一般の方に使用されやすい漢方といえます。

防己黄耆湯を用いる体の証

防己黄耆湯は主に、【気虚・水滞(ききょ・すいたい)】の方に使います。

体の証
状態
気虚(ききょ)
体のエネルギー(気)が不足し、疲れやすい
水滞(すいたい)
体内の水分代謝が滞り、むくみやすい

防己黄耆湯が適している方

防己黄耆湯は「体力があまりなく、水分代謝が悪くてむくみがち」という人にピッタリな漢方です。

防己黄耆湯は、いわゆる水太りタイプの方に使う漢方薬です。防風通聖散が太鼓腹の方に使う包材なのに対して、防己黄耆湯はお腹をつかむと、むちむちして柔らかい、女性らしい脂肪の付き方をした人に適した処方です。水分代謝を促す漢方ですので、浮腫から体重増加につながりやすい方などにも適しているといえます。

特徴

  • むくみやすい(特に下半身)
  • 疲れやすく、動くと息切れしやすい
  • 汗をかきやすい、またはダラダラ汗をかく
  • 体が重だるい、水分を摂るとむくみやすい
  • ぽっちゃり体型で、筋肉が少なく水太りしやすい

防己黄耆湯の作用

利水作用
余分な水分を排出し、むくみを改善
補気作用
気を補い、疲労感を軽減、汗のかきすぎを防ぐ

防己黄耆湯の成分

防已(ボウイ)黄耆(オウギ)蒼朮(ソウジュツ)大棗(タイソイウ)生姜(ショウキョウ)甘草(カンゾウ)

防己黄耆湯の注意点

防己黄耆湯は水分代謝を促す漢方ですので、漫然と服用することで返ってお身体が乾いてしまうことがあります。難しい弁証についてはこのコラムでは割愛いたしますが、定期的に購入されるお客さまへは、唾液の量やおりものの量が減っていないか、寝汗やほてりの症状がでていないか、などインナードライの状態になっていないかを確認するとよいでしょう。
一般的な使用上の注意についても、きちんと確認しましょう。

ダイエット漢方を選ぶ際に注意が必要なポイント

これら以外にもダイエットの漢方薬がありますが、お客さまからのご相談に対しては、その方の体質に沿った処方の提案が大切です。

例えば、漢方で【陽虚(ようきょ)】という体質の方は、非常に冷えが強く低体温気味で、熱を産む力がない状態です。この体質の方には、熱量を上げることによって代謝を上げるサポートが効果的だといえます。

また、全身の血流が悪い【瘀血(おけつ)】という体質の方には、血流をケアして全身の代謝をサポートする漢方薬を使用します。

これらの詳しい説明は割愛させていただきますが、まずは一般的に浸透しているダイエットの漢方に関して、お客さまがご自身で選んで健康を害さぬよう、販売に関わる人はしっかりとその違いを理解し、アドバイスができるようになると良いでしょう。

SNSなどで韓国系のダイエット漢方などが流行ったこともありますが、その中身がしっかりと明記されていない点や、高い頻度で動悸の副作用がある点などから、非常に強い生薬が多量に入っているものと考えられます。

漢方の考え方は、お身体に負担をかけるのではなく、ご自身の根っこの状態から立て直して、健康的に整えていくというものです。その世界観を大切にアドバイスしていただければと思います。

プラスαの養生提案でよりお客さまに愛される登販に!

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漢方の効果に頼るだけでなく、生活習慣の見直しをおこなうことで、ダイエットのより高い効果が期待できます。

防風通聖散と合わせておこないたい養生

防風通聖散が適切な人は湿気と熱を溜め込んだ状態ですので、お身体の余分な湿気や熱を追い出すような養生提案をしましょう。

  • 身体に熱を発生しやすい、味付けの濃い物や香辛料の多いものは控えめに
  • 夏野菜などの、余分な熱を冷ます食材を意識する
  • 疲れすぎない程度に、筋トレがおすすめ
  • 防風通聖散がなくても排便コントロールができるように心掛ける

防己黄耆湯と合わせておこないたい養生

防己黄耆湯が適切な人はエネルギー不足と水の停滞がある状態ですので、お身体の余分な水分を貯めずに、水分代謝が上がるようにエネルギーを補うような養生提案をしましょう。

  • 水分は一度に多量に飲むのではなく、こまめに摂取する(食事中の水分は控えめに)
  • 過度な運動よりも、ウォーキングやストレッチなど、負荷がかかりすぎない程度の運動を心掛ける
  • 湯船でのマッサージや適度な発汗を心掛ける
  • じゃがいもやかぼちゃのように、加熱してほくほくする食材がおすすめ

まとめ

ダイエット漢方が流行っていますが、専門家としてきちんとお客さまに合った漢方を提案できることが大切です。一時しのぎ的な減量ではなく、養生も合わせて「身体によい事」となるようにサポートしてくださいね。
今回は、初めの一歩である、防風通聖散と防己黄耆湯について触れましたが、ダイエットのご相談は非常に奥深く証を正しく判別する必要があります。ご興味がある方は、臨床漢方カウンセリング協会のホームページをご覧ください。

執筆者:猪子英恵(いのこ はなえ)

執筆者:猪子英恵(いのこ はなえ)
薬剤師・国際中医専門員
臨床漢方カウンセリング協会理事
神奈川ME-BYOスタイルアンバサダー
集英社LEEキャラクター

首都圏を中心に全国の医療機関で漢方外来を受託。
「現場で使える」漢方とカウンセリングスキルの講座を
薬剤師・登録販売者に向けて開催。
臨床漢方カウンセリング協会

【執筆、監修など】
  • わかさ出版ムック本 ハトムギ水 執筆、監修
  • セントラルメディエンスコミュニケーションズ出版 月刊雑誌「からだにいいこと」2020年1月号 ハトムギ美容記事 執筆、監修
  • 株式会社ハルメクホールディングス出版 月刊雑誌「ハルメク」2021年1月号ハトムギ美容記事 監修
  • 第一三共ヘルスケアダイレクト株式会社 化粧品「RICE FORCE」web ボディシミに注意!記事執筆
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