セルフメディケーション最前線で働くには?高市政権の健康政策と登録販売者の新しい役割・キャリア戦略
はじめに
2025年10月に高市政権が発足し、従来の健康政策が大きく変わってきました。高市首相は就任直後の2025年10月と、翌年2月の所信表明演説で、いずれも「攻めの予防医療の徹底」を強調しています。
具体的には
- OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直し
- 電子カルテを含む医療機関の電子化
- データヘルス等を通じた効率的で質の高い医療の実現
などを「迅速に検討する」と明言しました。
この所信表明に基づき昨年12月には、前政権から難航していた11万床のベッド数削減(医療費削減効果1兆円)を盛込んだ改正医療法を成立させ、今年5月には長年の懸案事項であったOTC類似薬の保険適用見直しを含む改正健康保険法を成立させました。
まもなく公表される「骨太の方針2026」には、「攻めの予防医療」が盛り込まれる見込みです。登録販売者は、こうした動向を踏まえ、「攻めの予防医療」を支える現場の担い手としてスキルアップしていくことが重要です。
本稿では、高市政権の健康政策としての「攻めの予防医療」と、改正医療法・改正健康保険法のポイントを整理し、それらが登録販売者にどのように関係するのか、今後どのように関わっていくべきかを解説します。
目次
- 第1章 高市政権の「攻めの予防医療」とセルフメディケーション最前線―登録販売者に何が求められるのか
- 第2章 「健康な時間」を延ばす時代へ:セルフメディケーションと登録販売者の役割シフト
- 第3章 2つの法改正で変わるセルフメディケーション最前線と登録販売者の実務
- 第4章 セルフメディケーション最前線で求められる登録販売者の新しい役割とスキル
- 第5章 次世代の登録販売者を育成するためのプログラム
- 第6章 おわりに:セルフメディケーション最前線でキャリアを築く登録販売者へ
第1章 高市政権の「攻めの予防医療」とセルフメディケーション最前線―登録販売者に何が求められるのか
「攻めの予防医療」とは、政府与党が推進している健康政策の一つで、健康寿命の延伸を図り、皆が元気に活躍し、社会保障の担い手になっていただけるように、予防に努め、疾病を発見し、早期に適切な機関等につなげることを目指す取り組みです。
昨年10月、高市首相は、内閣総理大臣に就任した際の所信表明演説で「『攻めの予防医療』を徹底し、健康寿命の延伸を図り、皆が元気に活躍し、社会保障の担い手となっていただけるように取り組みます」と語りました。
また、今年2月の衆議院選挙後の施政方針演説でも、高市首相は次のように、「攻めの予防医療」に取り組む考えを述べています。
「データヘルスや保険者機能の強化、健康経営に取り組む地域企業への支援、がん検診・歯科健診の推進を通じ、『攻めの予防医療』を具体化させます。健康寿命の延伸を図ることで、皆が元気に活躍し、社会保障制度を含めた社会の支え手となっていただけるようにします。」
要約すると、「予防医療を徹底することで、国民の健康寿命を延ばし、社会保障を支える現役世代を増やす」という考え方です。
なぜ今、「攻めの予防医療」なのか?
なぜ今、「攻めの予防医療」が必要とされているのでしょうか。
日本のヘルスケア政策は、「2025年問題」を一つの節目として乗り越え、現在はその先にある「2040年問題(現役世代の急減と高齢者人口のピーク)」を見据えた、大きな構造転換の途上にあります。
2040年問題は団塊ジュニアが高齢者になり、人口減少と少子高齢化が同時に進み、働き手は減る一方で、超高齢化時代に突入し、医療や介護ニーズ、さらにヘルスケア産業の育成が避けられない時代です。
また、内閣府の「令和6年版 男女共同参画白書」によると、健康上の問題が原因で仕事、家事などに支障が出ている人は全国で621万人に上ります。そのうち、6割以上を女性が占めています。
一因として、男女で健康課題が異なることが挙げられます。
男性特有の病気(前立腺肥大、前立腺がんなど)は50代以降に多い一方で、女性特有の病気は働く世代に集中しています。たとえば、
- 月経障害・女性不妊症:20代〜40代前半
- 子宮内膜症・子宮筋腫:30〜40代
- 乳がん・更年期障害:40〜50代
などが代表的です。
高市政権の「攻めの予防医療」の特徴として、性差に由来した健康課題への対応があげられます。高市首相自身が長年、女性の生涯にわたる健康の課題に取り組み、昨年、「女性の健康総合センター」が設立されています。
高市首相は、同センターを司令塔として、女性特有の疾患に関する診療拠点の整備、研究、人材育成などを進め、その成果を全国に広げる方針を示しています。
今後は、男性・女性といった性差に加え、年齢層ごとに細分化した予防政策が、より一層重視されていくことは間違いありません。
日本維新の会は医療関係団体とのしがらみがなく、むしろその対極的な政党
前述の通り、高市首相が所信表明演説で「攻めの予防医療の徹底」を掲げています。
「予防医療」という言葉は以前からある言葉ですが、これまでは単なる啓発活動的な意味合いで使われてきました。
ただ高市政権になり、公明党から日本維新の会に連立を組み直してから、状況は大きく変わってきています。単刀直入にいえば、日本維新の会は、単に新しい政党というだけではありません。
日本医師会を初めとする保険医療関係者とのしがらみがないだけでなく、それらの既存政党の対極に位置する政党です。
こうした背景があるからこそ、自民党が高市政権のもとで日本維新の会と連立を組んでいることも、決して偶然ではないと言えるでしょう。「攻めの予防医療」には、そのような意味合いが含まれています。
そのために後述しますが改正医療法や改正健康保険法などにより、11万床のベッド数削減、さらにOTC類似薬の薬剤給付見直しなど、これまでできなかった関連法案を成立させることができたのです。
第2章 「健康な時間」を延ばす時代へ:セルフメディケーションと登録販売者の役割シフト
高市首相は2025年10月24日の所信表明演説で、健康政策を、経済安全保障、食料安全保障、エネルギー安全保障と並ぶ重要政策として「健康医療安全保障」を位置づけました。
これは単なる医療政策の話ではありません。国の未来を守るための「危機管理投資」の一つとして定義され、まさに高市政権の大きな特徴です。
この「健康医療安全保障」という新しい概念は、医療を"社会保障のコスト"ではなく、"国家の基盤"と位置づけるものです。まさに、2040年を見据えた発想と言えます。
わが国は新型コロナワクチンを経て、健康が経済や安全保障と切り離せないテーマであることを悟りました。
これまで医療は「命を守る」ことが中心でしたが、これからは「健康で活躍できる時間をいかに延ばすか」という方向へシフトしていきます。
つまり「寿命を延ばす医療」から「健康な時間を延ばす医療」への転換が求められているのです。
ただし、これを実際の制度や現場で実行に移すことは、多方面への影響を伴う難しい課題です。
今年6月18日に開かれた社会保障審議会の医療保険部会で参考資料として「余命にかかる医療費」(図表-1)が公表されました。これは生涯医療費2,840万円のうち、その約半分は75歳以上の後期高齢者になってからという資料です。
この医療費の中にはちょっとした風邪などの治療費から延命医療費まで含まれますが、日常的に生活習慣を改善するなど、セルフメディケーションを行うことによって多くが予防できる医療が含まれているといわれます。
本当に医療が必要な場合には公的医療費を、セルフメディケーションで予防できるものは自己負担で対応する方向に向かっています。
医療費と終末期医療をめぐる議論が、今後ますます避けて通れないテーマになることは間違いありません。
図表-1 余命にかかる医療費(令和5年度推計)
セルフメディケーション、 自己防衛型ヘルスケア社会の到来
「攻めの予防医療」は自分の健康は自分で守る、まさにセルフメディケーションの意味するところです。裏を返せば「国が全てを守る時代の終わり」を意味しているともいえます。
社会保障費の膨張が止まらない中で、医療制度は「自己防衛型」にシフトせざるをえません。
「自己防衛型ヘルスケア社会」とは、ちょっとした風邪などで保険医療を受診する場合は全額自己負担とし、若年者・低所得者・難病患者など、公的医療保険が本当に必要な人だけを保険でカバーし、それ以外は自己負担とする考え方です。まさにセルフメディケーションを前提とした仕組みと言えます。
その象徴が、今年5月に成立した改正健康保険法によるOTC類似薬の薬剤給付見直しです。
現時点では、OTC類似薬の薬代の患者負担は4分の1にとどまり、すぐにOTC薬の購入が増えるとは考えにくい状況です。
しかし、今後これが2分の1負担、さらに全額自己負担へと拡大すれば、これまで病院で処方されていた薬の一部が、ドラッグストアなどで購入される方向へシフトしていくと予測されます。
「攻めの予防医療」は病気予防から健康づくりの「攻め」への転換
"攻めの予防医療"とは、病気を防ぐための「守り」ではなく、健康をつくるための「攻め」です。
例えば、検診を受けて終わりにするのではなく、自分の体の変化をデータで可視化し、リスクを先回りして対策を打つことが重要です。これこそが、これからの予防医療の本質です。
そのために国は「医療DX」に多額の予算を投じ、2030年には電子カルテを含めたデータヘルスを推進し、医療の無駄を省き、効率的かつ個別化するための健康情報プラットフォームの構築に向けて進んでいます。
医療機関や個人のデータが安全に連携し、誰もが自分の健康情報にアクセスできるようになれば、ようやく「予防が中心の社会」が実現していくでしょう。そのためにもヘルスリテラシーの向上は避けられません。
名実ともに健康の維持・増進は「消費」から「投資」にシフト
健康を「消費」ではなく「投資」として捉える発想が、日本にも少しずつ広がりつつあります。
アメリカでは健康維持と医療費の負担を軽減するために、Flexible Spending Account(FSA)とHealth Savings Account(HSA)という二つの重要な医療費節約ツールが提供されています。これは健康への支出を"投資"として優遇する考え方です。
日本でも健康銘柄など健康に投資する人や企業が報われるような仕組みがありますが、まだまだ国民皆保険制度の恩恵が強く、健康に投資するという意識は米国に比べて低いのが現状です。
その大きな原因は軽度な体調不良の際、ドラッグストアで全額自己負担してOTC医薬品を買うよりも、医療機関を受診して処方薬(医療用医薬品)をもらう方が、保険が効くため結果的に安く済むケースが多々あるということです。
この構造が、「日頃から健康やセルフメディケーションに投資する」ことへの経済的な障壁となっているといえます。この医療機関にかかる方が「安い」という逆転現象構造を守ることが日本の医療保険制度の大原則であり、それを直接的に見直すという話自体がタブー視される傾向があります。
ただ後期高齢者も原則3割負担になれば、国全体として健康リテラシーは大きく向上するはずです。
そこに健康産業の大きな可能性があり、本当の意味で健康寿命の延伸を支援する産業が生まれてくる、登録販売者の役割も極めて大きくなる可能性が高いといえます。
第3章 2つの法改正で変わるセルフメディケーション最前線と登録販売者の実務
超高齢社会を迎えた日本において、医療・介護保険制度を持続可能なものとするための抜本的な改革が急ピッチで進んでいます。
そのなかで、地域住民の健康と安全を支える「登録販売者」に期待される役割は、単なる「一般用医薬品(OTC薬)の販売者」から、「セルフケア・セルフメディケーション推進の総合支援者」へと自ら大きく変化することです。
制度の流れは、確実にその方向へ進んでいます。ただし、その変化をチャンスと捉えて活かせるかどうかは、登録販売者一人ひとりの選択にかかっています。
医療・介護保険制度の動向と患者負担の拡大
本コラムで何度か紹介しましたが、少子高齢化により社会保障費が増大するなかで、公的な医療・介護費の負担ルールは「年齢別」から「支払能力別(応能負担)」へとシフトしています。
さらに、「選定療養」や「一部保険外療養」の導入拡大によって、患者自身が負担すべきコストが増加する方向へ舵が切られています。
以下の法改正等の動向は、その流れを決定づけるものです。
2025年12月成立「医療法等の一部を改正する法律」のポイント
本改正では、地域医療構想の見直しの一環として病床数の削減、さらに医師の偏在是正、医療DXの推進(電子カルテの全国的な情報共有)として、「オンライン診療の法制化」が明記されています(図表-2参照)。
これにより、患者の医療アクセスのあり方が多様化し、身近な不調に対してはオンラインで相談するか、地域の薬局・ドラッグストアで対応するかの選択がより明確になります。
図表-2 医療法等の一部を改正する法律ポイント
2026年5月成立「健康保険法等の一部を改正する法律」のポイント
この改正は、現役世代の保険料負担を抑制しつつ、制度の持続可能性を高めるための「給付と負担の見直し」が柱となっています。
特に登録販売者の実務に直結するのが、一丁目一番地に位置している「OTC類似薬の薬剤給付の見直し(一部保険外療養の創設)」です(図表-3参照)。
見直しの内容:
花粉症の薬、胃薬、痛み止め、湿布薬など、市販のOTC薬でも代替可能な医療用医薬品について、処方時の薬剤費の4分の1(25%)を患者が「特別の料金」(一部保険外療養費)として全額自己負担することになります。
これに通常の保険自己負担(3割など)が加わるため、患者の実質負担額が増加します。
後期高齢者の金融所得勘案:
高齢者であっても、株式配当などの金融所得がある場合は窓口負担割合が高くなるなど、負担の公平化が図られています。
これは公布後5年以内の施行ですので、今後、具体的な政策が検討されることになります。金融所得はマイナンバーを使う方向ですが、それが強制的にどのように可能にするかなど、今後の制度改正が必要になります。
図表-3 健康保険法等の一部を改正する法律ポイント
第4章 セルフメディケーション最前線で求められる登録販売者の新しい役割とスキル
2030年、2040年を前にして、健康づくりに関する制度は大きく変化せざるを得ない状況です。
その変化の中で登録販売者がどう関わっていくか、それは登録販売者がどのように時代の風を読み、その流れに対応していくかにかかっています。まだ法改正は概要が決まった段階で、具体的な制度改正はこれから検討されます。ただし、
- セルフメディケーションの推進
- 患者の自己負担の拡大
- 公的保険外サービスの拡充
といった方向に進むことは間違いありません。
そこに登録販売者がどう関わっていかなければならないか、今回はその方向を紹介します。
「なぜ負担が増えるのか」に対する制度説明と納得感の醸成
顧客は、「病院でもらう薬と同じ成分なのに、なぜ市販薬を勧められるのか」「なぜ病院に行くと高くなるのか」といった疑問や不満を抱えて来店する可能性があります。
具体的な実務:
OTC類似薬の保険外負担は、2027年3月に施行される予定です。この制度変更の背景には、
- 医療保険制度を将来にわたって持続させること
- 限られた財源を、より重症な患者さんの治療に優先的に回すこと
といった目的があります。
お客様へご説明する際には、こうした背景を踏まえつつ、お気持ちに寄り添いながら分かりやすく伝えるスキルが求められます。単に「国の方針なので」と突き放すのではなく、
・「ドラッグストアで同じお薬を全額自己負担で購入されている方との公平性を保つための制度変更です」
といった形で、丁寧に説明することが大切です。
このようにお伝えすることで、お客様の納得感を引き出しやすくなります。
高度なトリアージ機能(受診勧奨の適切な見極め)
医療費負担を避けるために、本来であれば医師の診察が必要な重症患者までがOTC薬で済ませようとするリスクが高まります。
具体的な実務:
顧客の症状を丁寧にヒアリングし、「セルフメディケーションで対応可能な範囲」と「ただちに医療機関を受診すべきレッドフラッグサイン」を正確に見極める(トリアージする)責任が重くなります。
たとえば、単なる胃痛か、それとも他の重篤な疾患のサインかを判断するための的確な問診(症状の持続期間、痛みの性質、既往歴、併用薬の確認)を徹底し、必要に応じて迷わず受診勧奨を行います。
現在は保険医療の方が低価格ですので、多くはちょっとした風邪でも病院に行くほどですが、今後、自己負担が増加すればそうは行きません。
つまり、これからは本当の意味での受診勧奨が制度的に必要になってくるということです。掛け声だけの「受診勧奨」は意味がなくなります。
医療用医薬品からOTC薬へのスムーズな移行提案
顧客が求める「病院で処方されていた薬」と同等、あるいは最適な成分を含むOTC薬を選定し、提案する能力が求められます。
具体的な実務:
登録販売者であっても「おくすり手帳」の確認などを通じて、これまでどのような処方薬(成分)を服用していたかを把握できる制度改正が必要だといえます。その上で、店頭のラインナップから最適なOTC薬の提案が可能になります。
OTC類似薬の多くが第2類医薬品ですので、登録販売者でも処方せんで服用していたOTC類似薬を把握できるようにしておくことが必要です。
また、単に薬を販売するだけでなく、生活習慣の改善アドバイスや、セルフメディケーション税制の活用方法(レシートの保管方法や申告のメリット)についても情報提供を行います。
第5章 次世代の登録販売者を育成するためのプログラム
前述した新たな実務を確実に遂行するためには、従来の「医薬品の成分・効能の暗記」を中心とした学習だけでは不十分です。各企業や職能団体は、以下の4つの柱を盛り込んだ、実践的な教育・研修体制を構築する必要があります。
社会保障・医療保険制度に関する基礎教育
対象となる知識:
高額療養費制度の見直し、一部保険外療養(OTC類似薬の追加負担)の仕組み、セルフメディケーション税制の詳細、オンライン診療の現状など。
研修の目的:
顧客からの制度に関する質問に対して、正確かつ分かりやすく回答できるリテラシーを身につける必要があります。制度改正の主旨をきちんと把握しておかないと、お客さんが納得できる説明はできません。
専門家は、自らの資格に関わる制度改正を十分に理解しておくことが大切です。最新の医療行政の動向を定期的にアップデートする継続研修が必須です。
本コラムでもできるだけ、それらの情報を提供したいと思っています。そのために本コラムのご購読、ご意見をお寄せください。
臨床推論に基づく実践的トリアージ研修
対象となる知識:
主な疾患(感冒様症状、アレルギー性鼻炎、胃腸炎、疼痛など)における受診推奨基準(レッドフラッグサイン)の習得。
登録販売者は、顧客の「病気そのもの」を自分で抱え込んではいけません。それは、セルフメディケーション推進を支援する専門家としての一番の鉄則です。
臨床推論に基づくレッドフラッグサインはもともと医師用語ですが、総合診療医の岸田直樹氏が、登録販売者などが活用できる『総合診療医が教える よくある気になるその症状-レッドフラッグサインを見逃すな!』((株)じほう)が上梓されています。
その中で医師以外の者が、例えば登録販売者が受診勧奨のレッドフラッグサインを判断できる法的な範囲、可能な手法を公にされています。これらの情報は登録販売者が必要になる知識になるのは言うまでもありません。受診勧奨は、一方では「受診勧奨をしない」ことと対になっています。
場合によっては「受診勧奨をしない」という判断は、医師の診断ともとられかねませんので、十分な注意が必要です。ちなみに日本医師会は医師以外の者による受診勧奨を正式に認めていません。原則、全て受診勧奨するというのが原則です。
それは単なる風邪と見えても、その風邪症状に何らかの重篤な疾病が隠されている可能性がないとも言えないためです。
研修の目的:
ロールプレイやケーススタディを通じて、「どのような質問を投げかければ危険な兆候を見逃さないか」を訓練します。
特に、小児や高齢者、妊婦、基礎疾患を持つ患者への対応フローを標準化し、現場の誰もが一定水準のトリアージを行えるようにします。
これらはすべての顧客に対応するのではなく、必要な顧客に必要な対応を行うことが大切です。
すべての顧客に対応すると、それ自体が目的化する可能性が高くなるためです。トリアージが必要な顧客を見極めることこそが、登録販売者という専門家に求められる技術になります。
顧客の納得を引き出すコミュニケーション・トレーニング
対象となる知識:
傾聴スキル、アサーティブ・コミュニケーション、行動変容を促す面接技法(動機づけ面接など)。
研修の目的:
顧客の経済的負担や不安に寄り添いながら、専門家としての提案を理解・納得してもらうためのコミュニケーション力を養います。
単なる「商品案内」ではなく、顧客の「健康への価値観」を引き出し、セルフケアのモチベーションを高めるコーチングの手法を取り入れることが有効です。
地域医療連携・デジタルツールの活用研修
対象となる知識:
地域の医療機関(クリニック、調剤薬局、オンライン診療プラットフォーム)の機能把握と、電子カルテ情報共有サービスなどに代表れる、医療DXの基礎。
研修の目的:
顧客を適切に医療機関へつなぐための地域連携のルート作りや、健康管理アプリ等のデジタルツールを活用した生活習慣アドバイスの提供方法を学びます。
第6章 おわりに:セルフメディケーション最前線でキャリアを築く登録販売者へ
これからの日本において、「自分の健康は自分で守る」というセルフメディケーションの理念は、単なるスローガンではなく、制度的な強制力を伴って国民の生活に定着していきます。
登録販売者の皆様は、生活者に最も近い場所でその変化を支えるキーパーソンです。
制度改正による負担増の波を、単なる「販売のチャンス」として見るのではなく、地域の健康インフラを担う専門職としての価値を高める好機と捉えることが重要です。
最新の制度知識と高いトリアージ能力、そして豊かな人間性を兼ね備えた登録販売者こそが、持続可能な社会保障制度を支える強力な推進力となるでしょう。
ぜひ、日々の研鑽を通じて、次世代の地域医療に貢献するプロフェッショナルとしての道を切り拓いてください。
著者情報:
医薬ジャーナリスト 柴田 龍
プロフィール
1982年、医薬専門誌・紙企業に勤務、厚労省記者クラブ、医療分野の記者を経て、1998年、団体職員に転向、以後、医薬関係団体等の理事を務め、厚生労働省の検討会委員、厚生労働科学研究・医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業、スイッチOTC医薬品関連に関する研究などの研究協力員および作業チームに参加、現在に至る。
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