家庭用殺虫剤の選び方と接客マニュアル|登録販売者が指名されるコツ【現役店長解説】
すっかり虫の活動が活発になる季節がやってきました。
ここから秋にかけて、殺虫剤売り場の動き(売れ行き)が大きくなっていきます。
さて、皆さまは登録販売者として「殺虫剤」の知識や接客経験はありますか?
「とにかく強そうな商品をすすめておけば大丈夫」と思っていませんか?
店頭の殺虫剤には医薬品や医薬部外品も数多く存在するため、登録販売者として知識を身につけておく必要があります。
殺虫剤のような季節商品は、お客さまがワンシーズンで1~2個しか買わないことも多く、その「最初の1個」をどう選んでいただくかが肝心です。
近年は種類も増え、一度の来店で「忌避から殺虫まで」まとめて求められる方も増えています。
ここを的確にご案内できれば、「あの人に聞けば間違いない」と翌シーズンも頼られ、リピーターづくりと店舗の信頼にそのままつながっていくのです。
「虫が苦手で...」という登録販売者も多いですが、成分の仕組みや形態など最低限の知識は身につけておきましょう。
殺虫剤は「害虫の種類」と「使用環境」を意識するだけで、接客の精度がぐっと上がります。
今回はこの二つの軸で殺虫剤の知識を整理していきましょう。
目次
- ●家庭用殺虫剤の「選び方」の前に|衛生害虫と不快害虫を押さえる
- ●登録販売者なら押さえたい!殺虫剤の医薬品・医薬部外品・雑貨品の違い
- ●型別・家庭用殺虫剤の選び方|スプレー・くん煙・ハチ駆除の接客ポイント
- ●まとめ|家庭用殺虫剤を使った接客で「選ばれる登録販売者」になる
家庭用殺虫剤の「選び方」の前に|衛生害虫と不快害虫を押さえる
殺虫剤の接客は、商品知識から入ると意外と難しいものです。
まず「相手」を知ることからはじめましょう。
殺虫剤の基本「衛生害虫」と「不快害虫」を把握しておこう
害虫は大きく「衛生害虫」と「不快害虫」の二つに分けられます。
・衛生害虫とは
感染症の病原体を運んだり、吸血・刺咬などで激しい皮膚炎やアレルギーを起こしたりして人の健康を直接脅かす害虫のことです。
代表的なのは蚊・ハエ・ゴキブリ・ノミ・トコジラミ(ナンキンムシ)・ダニ類などです。
たとえば蚊はデング熱や日本脳炎を媒介しますし、ゴキブリは赤痢やサルモネラの病原体を運ぶうえ、死骸や糞の微粒子が喘息の原因にもなります。
「ただ気持ち悪い」では済まされない、健康被害に直結する虫たちなのです。
・不快害虫とは
ユスリカ・チョウバエ・カメムシ・アリ・ムカデ・クモなどを指します。
これらは感染症を媒介するわけではなく、見た目や大量発生、悪臭などで人に不快感を与える虫です
ただ専門用語をお客さまに覚えてもらう必要はありません。
必要なのは登録販売者が分類を理解したうえで、お客さまの言葉を「対象害虫」と「使用環境」に置き換えて、適切な商品につなげることです。
この区別は、後で説明する「法律上の区分」にも関わってくるので、接客の土台として押さえておきましょう。
「蚊」と「ユスリカ」は同じ殺虫剤でいい?売場で多い勘違いと正しい提案
では、売場でもっとも誤解が多い例を見てみましょう。
それが「蚊」と「ユスリカ」です。
玄関やベランダに吊るすタイプの虫よけ剤を「蚊よけ」のつもりで使っているお客さまがとても多いのです。
ところが、こうした吊り下げタイプの多くは、本来「ユスリカ・チョウバエ」などの不快害虫向けの商品なのです。
つまり、ユスリカ対策の商品を蚊対策だと思って使っている―これが「蚊対策」で最も起きやすい誤解なのです。
蚊とユスリカはまったく別の虫です。
蚊は雨水マスや植木鉢の受け皿といった止水(停滞した水)で繁殖し、人の呼気(二酸化炭素)を察知して近づいて吸血し、病気を運ぶ衛生害虫です。
ユスリカは河川や用水路などの流水で発生し、血を吸わず病気も運ばない不快害虫です。
光に集まる性質があり、夜の街灯や玄関灯に群がって「蚊柱」をつくり、死骸が砕けて漂うとアレルゲンになることもあります。
ユスリカ用の吊り下げタイプ忌避剤を蚊よけのつもりで使っても、期待どおりに蚊を防げるとは限りません。
商品紹介のとき販売側が理解していないと、お客さまが「効かない」と感じてしまうのです。
これを避けるためにも「刺す蚊ですか?それとも玄関の明かりに小さな虫がたくさん集まる感じでしょうか」とお聞きしてみましょう。
蚊とユスリカでは根本的に対策商品が異なってくるので先に確認すべきです。
そして「吊り下げタイプの商品は、すべてが蚊に効くわけではありません。商品によって対象の虫が違うので、パッケージの適用害虫を確認してみましょう」とお伝えするとお客さまにも納得してもらいやすくなります。
対象害虫を聞き出す質問術|「効かない」と言われないための接客の基本
殺虫剤は「強そうな商品を選べばよい」わけではないのです。
ゴキブリ用・ダニ用・ハチ用・不快害虫用では、それぞれ成分・剤型・使い方・注意事項が異なり、害虫ごとの生態に合わせて最適な成分や形状が設計されているからです。
パッケージの「適用害虫」表示を必ず確認してください。
家庭用殺虫剤の適用害虫は効力試験で有効性が確認されたものしか書けないと定められています。
「各種の不快害虫」といった曖昧な表示も禁止されています。
つまり適用害虫の欄は、その商品が何に効くかを確認する重要な手がかりなのです。
売場では、次の順番で確認すると案内しやすくなります。
①お客さまが困っている虫を確認する
「何の虫でお困りですか」だけでなく、「刺されますか」「飛んでいますか」「どこに出ますか」まで確認します。
虫の名前が曖昧でも、発生場所や被害の内容から絞り込めます。
②パッケージの適用害虫を確認する
商品名や売場のPOPだけで判断せず、必ず裏面や側面の適用害虫を見ます。
お客さまが困っている虫と、商品に表示された対象害虫が一致しているかを確認しましょう。
③使用場所と注意事項を確認する
同じ害虫向けでも、屋内用・屋外用・すき間用・空間用などで使い方は異なります。
また、妊婦・乳幼児・喘息のある方・ペットの有無も重要です。
とくに観賞魚・爬虫類・小鳥がいる家庭では、ピレスロイド系成分やくん煙剤の使用に注意が必要です。
④適用害虫と使い方をセットで伝える
「こちらはユスリカ・チョウバエ向けなので、刺してくる蚊の対策とは別になります」
「この商品はパッケージに蚊が対象と書かれているので、蚊対策に使えます」
というように、対象害虫と使い方を合わせて案内すると誤購入を防ぎやすくなります。
接客は、商品名や剤型を見る前にお客さまが困っている虫を確認し、パッケージの適用害虫と照らし合わせる。
さらに使用場所・注意事項まで確認してから案内する。
この流れを徹底することで、「買ったのに効かなかった」という不満を減らすことができます。
この順番をぜひ徹底してみてください。
登録販売者なら押さえたい!殺虫剤の医薬品・医薬部外品・雑貨品の違い
市販の殺虫剤には「医薬品・医薬部外品・雑貨品」があります。
この違いをしっかり理解し、登録販売者として適切な接客ができるように備えましょう。
なぜ衛生害虫向けは承認が必要?登録販売者が押さえるべき薬機法の考え方
規制の重さは、害虫の種類そのものではなく「人の健康にどれだけ関わるか」で決まります。
衛生害虫は感染症を媒介し、人の健康を直接脅かすので、衛生害虫に「効く」と薬剤で表示する商品は、効果が確かで安全であることを国が事前に確認する必要があるのです。
これが薬機法で定められた「承認」です。
家庭用の殺虫剤だと以下のようになります。
- ・蚊取線香、電気蚊取(マット式・液体式)...防除用医薬部外品
- ・ゴキブリスプレー(エアゾール)...成分により防除用医薬部外品または第2類医薬品
- ・くん煙剤・くん蒸剤...防除用医薬品(第2類医薬品)
空間に薬剤を一気に充満させるくん煙剤のように作用が強い剤型は医薬品、日常的に扱う蚊取りのように比較的穏やかなものは医薬部外品、というのが大まかな基準となります。
これら防除用医薬品・医薬部外品は、わたしたち登録販売者が販売・情報提供すべき商品なのです。
雑貨品・生活害虫防除剤とは?「どこまで説明していいか」の線引き
では、雑貨品とは何でしょうか。
先ほどの「衛生害虫・不快害虫」の分類を、そのまま法律上の区分に当てはめてみましょう。
雑貨品は不快害虫向けの殺虫剤です。
クロアリ・ユスリカ・チョウバエ・カメムシ・ムカデ・クモ・ナメクジ、シロアリなどの木材害虫やイガなどの衣類害虫が対象となります。
薬機法の対象外で、基本的には業界の自主基準のもとで管理されています。
ただし、薬機法が規制するのは殺虫成分による殺虫剤のため、粘着剤でくっつけて捕らえるトラップは薬機法の対象外です。
つまり区分は次の二つのルールで決まります。
- ①対象が衛生害虫か、不快害虫か
- ②薬剤で効能をうたうか、物理的に対処するだけか
衛生害虫を薬剤で殺虫・忌避するなら医薬品か医薬部外品、不快害虫向けなら雑貨品、衛生害虫でも物理的に捕まえるだけなら雑貨品です。
登録販売者は「市販薬の専門家」なので複雑に見えますが整理して理解しましょう。
雑貨品を「蚊よけ」と言ってしまうリスク|登録販売者が避けたいNGトーク
先ほど触れた「吊り下げタイプの虫よけプレート」を思い出してください。
これらの多くは対象がユスリカ・チョウバエなどの不快害虫で、薬機法上「蚊」を対象と書けない商品も多いのです。
もしこの吊り下げタイプを、お客さまに「蚊よけになりますよ」とすすめたらどうなるでしょう?
これは本来、承認が必要な領域に踏み込んでしまっています。
承認を受けていない雑貨品で蚊への効果をうたえば薬機法に抵触し、さらに実際よりも著しく優良に見せれば景品表示法の優良誤認にもあたります。
私たちは薬機法は意識しますが、景品表示法は意識が薄くなりがちです。
しかし景品表示法の規制対象となる「表示」には、セールストークや実演も含まれるのです。
実際、2015年には大手メーカー4社の空間用虫よけ剤(ユスリカ・チョウバエ向け)について、消費者庁が措置命令を出しました。
風通しの悪い室内の実験データしかなく、実際の使用環境での効果を裏付けられなかったためです。
違反となれば措置命令や課徴金の対象にもなりえます。
もちろん、防除用医薬部外品として承認された吊り下げ式なら、はっきり「蚊」を対象にできます。
要は、その商品が表示できる効能の範囲を超えて案内しないことが、登録販売者としての責任なのです。
では、お客さまから「これは蚊にも効きますか」と聞かれたらどう返せばよいのでしょうか。
パッケージに蚊の表示がない商品であれば、次のように案内します。
「こちらの商品は、パッケージ上はユスリカ・チョウバエが対象です。刺してくる蚊への効果は表示されていないので、蚊対策なら蚊が適用害虫に入っている商品を選んでください」
避けたいのは、「蚊にも効きます」「虫なら大丈夫です」「吊るすだけで蚊よけになります」といった断定です。
店頭では、効く・効かないを自己判断で広げるのではなく、パッケージに書かれた適用害虫をもとに案内するのが雑貨品をあつかう時の基本です。
剤型別・家庭用殺虫剤の選び方|スプレー・くん煙・ハチ駆除の接客ポイント
殺虫剤は様々な剤型が存在するため、誰がどこで使うか―という使用環境も大切です。
同じ商品でも、使う人や場所によって声がけが変わってくるのです。
スプレー・エアゾール剤の特徴と注意点|家族構成・ペット確認のコツ
スプレータイプは目に見える害虫へ直接噴射でき、即効性が期待できるのが特徴です。
蚊・ハエ・ゴキブリなどを見つけてすぐに殺虫したいときに便利ですね。
当然、可燃性ガスを使っているため、コンロや蚊取り線香などの火気の近くでは使えません。
換気の悪い場所で吸い込むと喉や呼吸器を刺激することもありますし、妊婦・乳幼児・喘息のある方も注意が必要です。
特に気をつけたいのが観賞魚・爬虫類で、スプレーに多いピレスロイド系の成分は、魚など水生生物や爬虫類に非常に強い毒性を示します。
台所や寝室、子ども部屋で使うなら、使用後の換気もあわせてお伝えしましょう。
くん煙剤の特徴と注意点|事前説明でクレームを防ぐ登録販売者のひと言
くん煙剤は薬剤を部屋全体に行き渡らせる剤型なので、すき間に隠れたゴキブリ・ダニ・ノミ対策に向いています。
これらは防除用医薬品にあたることが多い商品です。
使う前の準備が多いので、ここはぜひお客さまに丁寧に伝えてください。
- ①人やペットは必ず室外へ退避させる
- ②火災報知器にカバーをかける(使用後は必ず外す)
- ③食品・食器は戸棚にしまうか覆う
使用後は2時間以上閉め切ってから、1時間ほど換気します。
マンションでは火災報知器が管理室で一括管理されていることもあるので、事前に管理人さんへ相談するよう一声添えると親切です。
ここでも観賞魚・爬虫類は要注意です。
部屋の外へ出すのが基本で、毒性が強いため数日は戻さないほうがよい場合もあります。
マンションなどの集合住宅では階上の住宅に殺虫成分が流れ込んでしまい、ペットの観賞魚や爬虫類が死んでしまう―という事故も報告されています。
ハチ駆除剤の特徴と注意点|「無理をさせない」安全第一の接客対応
特に7月~10月にかけて需要が高まるのがハチ駆除剤です。
遠距離噴射・即効性が特徴ですが、売場でも特に危険性が高い相談だと心得てください。
まず大原則として、スズメバチ・大きな巣・高所・屋根裏・壁の中・出入口付近の巣は、自己判断での駆除をすすめてはいけません。
専門業者や自治体への相談を案内してください。
防護服を着た作業員でも命を落とす事故が起きるほど危険で、毎年20例ほどの死亡事例が報告されているのです。
お客さまが「自分で何とかしたい」とおっしゃっても、安全に対処できるのは一辺10センチ未満の作り始めの小さな巣に限られます。
そうした場合でも、風向き(必ず風上から)・退避経路・作業時間(ハチが巣に戻る夜間)・防護・刺されたときの対応を必ず確認してください。
そして、刺されたときに全身症状(アナフィラキシー)が出たら、すぐに医療機関を受診するようお伝えします。
命に関わる相談だからこそ、「無理せず専門家へ」と案内することが、いちばんお客さまのためになるのです。
まとめ|家庭用殺虫剤を使った接客で「選ばれる登録販売者」になる
それでは今回のまとめです。
・害虫の分類
殺虫剤選びは「何の虫か(衛生害虫か不快害虫か)」と「誰がどこで使うか」の二軸で決まる。
商品名や剤型より先に、パッケージの適用害虫を確認する。
・法区分の二軸
①対象が衛生害虫か不快害虫か
②薬剤で効能をうたうか物理的に対処するか
防除用医薬品・医薬部外品は登録販売者が情報提供すべき商品。
・雑貨品の効能表示リスク
雑貨品を口頭で「蚊よけ」とすすめると、セールストークも薬機法・景品表示法の規制対象になりうる。
対象害虫を正しく案内する。
・使用環境の確認
妊婦・乳幼児・喘息のある方・ペット(特に観賞魚・爬虫類)の有無を必ず確認する。
ハチは危険性が高く、無理な駆除はすすめず専門家へ案内する。
殺虫剤の売場は、つい「セルフ販売でいい」と思われがちです。
しかし、そこには資格と直結した商品が並び、わたしたちの一言がお客さまの安全と信頼を左右しているのです。
ぜひ明日から、適用害虫と使用環境を確認する接客を店頭で実行してみてください!【現役ドラッグストア店長直伝】夏対策商品の正しい選び方・使い方を現役ドラッグストア店長が解説<登録販売者のキャリア>
執筆者:ケイタ店長(登録販売者)
ドラッグストア勤務歴20年、一部上場企業2社で合計15年の店長経験を活かし、X(旧Twitter)などで登録販売者へのアドバイスや一般の方への生活改善情報の発信を行っている。X(旧Twitter)フォロワー数約5,000人。
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