調剤薬局併設のドラッグストアが増える理由。登録販売者への影響はある?
調剤薬局併設のドラッグストアが増える理由。登録販売者への影響はある?
こんにちは、登録販売者転職のアポプラス登販ナビライターチームです。
コロナ禍により多くの業界が苦境に立たされている中、ドラッグストア業界は順調に売上を伸ばしています。その主な要因として、新型コロナによる衛生用品の特需により新規店舗の出店が全国各地でさかんなことと、調剤併設型ドラッグストアの増加が挙げられます。
この記事では、調剤併設型ドラッグストアが注目されている理由や大手ドラッグストアにおける戦略と取り組み、今後予想される登録販売者への影響について解説します。調剤薬局併設型ドラッグストアへの転職に興味がある方は、ぜひ参考にしてください。
目次
- ・調剤カテゴリの伸び率は右肩上がり
- ・調剤薬局併設のドラッグストアが増える理由
- ・調剤カテゴリにおける各チェーンの取り組み
- ・ドラッグストアで働く登録販売者への影響は?
- ・まとめ|高まる医薬品販売のニーズに備え、登録販売者も医薬品知識を深めておこう
調剤カテゴリの伸び率は右肩上がり
2022年4月に日本チェーンドラッグストア協会が発表した『ドラッグストアにおける調剤の動向』によると、2021年度のドラッグストアの調剤額は1兆1,738億円で前年度から9.8%の増加となりました。調剤医療費総額のうちドラッグストアで実施した調剤額の割合も15.6%増加しています。ドラッグストアの全国総売上高(推定値)のうち、13.7%が調剤額です。
また、同協会による『2021年度版業界推計 日本のドラッグストア実態調査』では、調剤・ヘルスケア部門の売上高は前年度比7.8%増となっています。
これらの結果から、ドラッグストアにおける調剤部門は堅調に推移していること、そして調剤部門の活躍が今後のドラッグストア業界をリードしていくカギになるだろうといえます。
調剤薬局併設のドラッグストアが増える理由
調剤薬局とドラッグストアは機能や特徴が大きく異なりますが、近年なぜ調剤併設型ドラッグストアが注目されるようになったのでしょうか。
結論からいうと、調剤薬局とドラッグストアは併設されているほうが、調剤薬局を利用する患者さま、ドラッグストアを利用するお客さま双方にとって利便性が高いからです。
調剤薬局は、薬事法上では薬剤師が医師の発行した処方せん内容にもとづいて調剤をおこなう場所と定義されています。また、医療法では医療機関に分類されており、都道府県知事の許可なく開設することはできません。
一方で、ドラッグストアについて具体的に定義する法律は現時点では存在せず、日本ドラッグストア協会が提唱する「医薬品や化粧品を始め日用家庭用品や食品等日用雑貨を取り扱う店舗」という概念が、多くの方の認識と近いのではないでしょうか。
一店舗でまとめ買いできる
ドラッグストアでは、薬剤師や登録販売者による対応が必要な医薬品(主にOTC医薬品)から、化粧品、日用品などを取り扱う商品のバラエティが豊かで、特に近年では生鮮食品や冷凍食品など食品類の取り扱いに注力したドラッグストアも増え、まさにスーパーマーケット化しているといえます。
そのため、調剤併設型のドラッグストアでは、お客さまは調剤薬局で受付を済ませてから処方薬の調剤が完了するまでの待ち時間を利用して買い物を済ませられるというメリットがあるのです。
医療機関の休診日でも処方せんが受け取れる
処方せんの有効期限は、土日祝も含めて発行日から4日間です。調剤薬局が土曜日や日曜日も開いていれば、お客さまは処方せんの有効期限を気にすることなく調剤薬局を利用できるでしょう。
こうした理由から、定休日が設けられていない調剤併設型ドラッグストアへのニーズが高まっていると推測できます。
オンライン服薬指導の影響
2019年の改正薬機法により実施可能となったオンライン服薬指導は、0410対応(0410通知)により時限的な解禁がおこなわれました。さらに、2022年4月改正省令では、薬剤師の判断により初回時からオンライン服薬指導が可能になったほか、同一薬剤師による指導である必要がなくなるなど規制はより緩和されています。
こうした流れを受けて、今後もオンライン服薬指導に参入する企業と調剤薬局はさらに増加すると考えられます。オンライン・対面の双方で利便性を高めるためにも、調剤併設型ドラッグストアの需要は今後ますます高まるでしょう。
調剤カテゴリにおける各チェーンの取り組み
大手ドラッグストア各社における、調剤カテゴリの成長促進に向けた取り組みの一部をご紹介します。
ウエルシアHD
ウエルシアHDは日本最大の調剤併設ドラッグストア店舗網を有しており、中期計画において調剤部門の重要取組事項に在宅(調剤)事業への取り組みを掲げています。
現在、ウエルシアにおける調剤併設率は80%を超える高水準を保っています。さらなるアプローチとして、子会社におけるドラッグストアの調剤併設率もウエルシア同様水準まであげることを公言し、グループ全体での調剤カテゴリの増収を図っています。
2023年2月期からは、ウエルシア訪問薬局の本格展開もスタートしました。施設などに入居する利用者に特化した薬局形式で、薬剤師が処方せんに記載された処方薬を用意し、指定の日時に配達します。
訪問時には薬剤師による服薬サポートも実施し、訪問後はお客さまの体調や服薬状況等の情報を薬局やかかりつけ医、看護師、ケアマネージャーなどに共有する仕組みとなっています。
スギHD
創業当初から調剤併設型のドラッグストア事業を続けてきたスギHDでは、「患者のための薬局ビジョン」実現に向けた施策を加速しています。
具体的には、薬剤師が本来の対面業務に専念できるよう調剤設備と機器の見直しや店舗を利用するお客さまの快適度を考慮した待合室の改装などがあります。
特に、お客さまの快適度と利便性向上に向けた取り組みとして、調剤業務の機械化や分業化と、デジタルツール導入を推進したことで、対人業務に割ける時間を増やしました。
地域の健康拠点として、予防未病から在宅医療まで幅広い対応を試みた結果、ドラッグストアおよび調剤薬局としてのあり方や役割を時代とお客さまのニーズに合わせて変化させたといえるでしょう。
トモズ
欧米型ドラッグストアを展開するトモズでも、経営テーマ「医療の提供」のさらなる追求に向けて、調剤併設型ドラッグストアの出店と付加価値の追加を本格化させています。
調剤機能強化とお客さまが心地よいと思えるような店舗改装のほか、各店舗にヘルスチェック機器を設置し利用可能にしました。また、薬物治療中のお客さまを対象に管理栄養士による健康相談会を開催しています。
こうした取り組みは、ヘルスケア商品や医薬品によるセルフメディケーションと、登録販売者や薬剤師など専門職のスタッフによる知識を生かしたサポートから成る「欧米型ドラッグストア」の特徴を色濃く反映しているといえるでしょう。
ドラッグストアで働く登録販売者への影響は?
調剤店舗が増えることで、少なからず登録販売者にも影響はあるでしょう。また、ドラッグストア業界で昨今話題となっているのが、日本チェーンドラッグストア協会長の池野隆光氏によって提出された要望書です。
2022年11月8日の「予算・税制等に関する政策懇談会」において、同協会は自民党へ政策に対する要望を提出しました。
具体的な内容は、以下の通りとなっています。
- ・緊急避妊薬とインフルエンザ要検査キットのスイッチOTC化
- ・新型コロナOTC抗原検査キットの第2類への変更
- ・OTC第1類医薬品を登録販売者でも取り扱い可能にすること
- ・都道府県等の手続書類における書式の統一化
上記要望書の内容から、医療費抑制に向けたセルフケアメディテーションの啓発と実施が今後ますます推奨されるのに比例し、ドラッグストアに対する医薬品ニーズも高まると考えられます。それに伴い、登録販売者でも第1類医薬品の取り扱いが可能になるかもしれません。
また、この要望書はドラッグストア業界が経済の基盤となり消費者の生活を支えていくという同協会の強い意思表示だといえます。ドラッグストアで働く登録販売者としては、今後より一層視野を広く、柔軟に対応する姿勢が求められるでしょう。
まとめ|高まる医薬品販売のニーズに備え、登録販売者も医薬品知識を深めておこう
ドラッグストア業界はコロナ禍においても業績が堅調に推移しています。ドラッグストア業界全体の売上高のうち調剤部門が占める売上高はまだ1割超程度ですが、今後も調剤併設型ドラッグストアの新規開設が見込まれており、ドラッグストアのさらなる成長が期待されています。
また、ドラッグストア業界では、セルフケアメディテーション推進に向けた働きかけをおこなっています。これらが実現すれば、ドラッグストアが担う役割はさらに多岐にわたり、登録販売者の働き方や役割も少なからず影響を受けるでしょう。変化の波に乗り切れるよう、定期的な業界分析と動向調査を実施し、医薬品販売に関する知識のブラッシュアップに努めましょう。
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