【接客事例あり】健康食品やサプリメントに関する質問にはどう対応する?登録販売者がとるべき対処法
【接客事例あり】健康食品やサプリメントに関する質問にはどう対応する?登録販売者がとるべき対処法
ドラッグストアでは医薬品と同じように健康食品やサプリメントが販売されており、登録販売者が商品や効能について質問されることも少なくありません。しかし、どちらも健康食品の一種であり、医薬品とはまったく異なるものです。そこで本記事では健康食品・サプリメントについての基礎知識や医薬品との違い、具体的なお客さま対応などについて解説します。
目次
- ・医薬品と健康食品・サプリメントとの違い
- ・医薬品との併用に注意!
- ・健康食品・サプリメントを販売するときの注意点
- ・【接客事例】サプリメントをお求めのお客さまへの対応
- ・健康食品・サプリメントの知識を深めるには
- ・まとめ|健康食品・サプリメントの服用についても正しい情報を届けよう
医薬品と健康食品・サプリメントとの違い
健康食品とは
「健康食品」という言葉は、一般消費者の間でも広く使われていますが、法令で定義された言葉ではありません。つまり、健康によさそうな食品全般を便宜上、「健康食品」と呼称しているということです。食品にはいろいろな分類がありますが、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品を総称して保健機能食品といいます。
また、保健機能食品とは別に、特別用途食品があります。特別用途食品は、乳児、幼児、妊産婦又は病者の発育又は健康の保持若しくは回復の用に供することが適当な旨を医学的・栄養学的表現で記載し、かつ、用途を限定したものです。代表的な商品として、病者用食品の経口補水液があります。
なお、「健康食品」と呼ばれるものの中には、保健機能食品や特別用途食品に当てはまらないものもあり、これをいわゆる「健康食品」といいます。「いわゆる健康食品」は、一般食品と同じ扱いになるため、機能性の表示などはできません。
【食品の分類】
食品
一般食品機能性の表示ができない
保健機能食品機能性の表示ができる
特別用途食品特別の用途を表示できる
特定保健用食品
栄養機能食品
機能性表示食品
保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)
特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品の詳細は、以下の通りです。
- 分類
- 概要
- 許可・承認
- 機能性表示の例
- 特定保健用食品(トクホ)
- 食生活において特定の保健の目的で摂取をする者に対し、その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をする食品
- 個別の生理的機能や特定の保健機能を示す有効性や安全性等に関する審査、消費者庁長官の許可又は承認
-
- ・おなかの調子を整える
- ・血圧が高めの方に適する
- 栄養機能食品
- 1日当たりの摂取目安量に含まれる栄養成分の量が基準に適合しており、栄養表示しようとする場合には、食品表示基準の規定に基づき、その栄養成分の機能の表示をおこなわなければならない
- 基準に適合していれば機能表示が可能(消費者庁長官の許可は不要)
- ビタミンCは、皮膚や粘膜の健康維持を助けるとともに、抗酸化作用を持つ栄養素です。
- 機能性表示食品
- 事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示し、販売前に安全性及び機能性の根拠に関する情報などが消費者庁長官へ届け出られたもの
- 消費者庁長官への届出(消費者庁長官の個別の許可を受けたものではない)
- 本品には、EPA・DHAが含まれます。EPA・DHAには中性脂肪値を下げる作用があることが報告されています。
サプリメントとは
「サプリメント」という言葉も、「健康食品」と同様、法令で定義された言葉ではありません。一般的に、特定成分が濃縮された錠剤やカプセル状の製品をこのように呼称しています。
医薬品との併用に注意!
セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)
セントジョーンズワートは、古くからヨーロッパを中心に、うつ病などの民間療法で使用されてきた成分です。しかし、セントジョーンズワートは抗うつ剤を始めとする非常に多くの薬剤と相互作用の可能性があることが明確に示されています。特に、医療用医薬品を服用中のお客さまには不向きである可能性が高いため、使用を検討している方にはかかりつけの医師・薬剤師に相談するよう促しましょう。
ビタミン
ビタミンと医薬品との相互作用の例として、以下のようなものがあります。
- ●ビタミンB6:摂取により医薬品の効果が減弱する場合として、抗てんかん薬のフェニトインの生物効力を低下させる事例(約45%)が報告されている
- ●葉酸:摂取により医薬品の副作用を増強する事例として、抗腫瘍薬のフルオロウラシルやカペシタビンの排泄を遅延させる可能性が報告されている
- ●ビタミンC:摂取により医薬品の効力を増強させてしまう事例として、女性ホルモンのエチニルエストラジオールの生物効力を60%程度上昇させてしまうことが報告されている
鉄、マグネシウム、亜鉛などのミネラル系
アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、鉄、カルシウムなどのミネラルは、薬物とキレートを生成し、薬物の吸収を阻害する事例が多く報告されています。相互作用を起こす可能性のある医薬品としては、テトラサイクリン系抗菌剤、キノロン系・ニューキノロン系抗菌剤があります。
健康食品・サプリメントを販売するときの注意点
医薬品的な表現は避けよう
保健機能食品を始めとした健康食品やサプリメントを販売する際に最も注意しなくてはならないことは、お客さまに、医薬品のような効果があると説明することです。これらの食品は、あくまで食生活を通じた健康の保持増進を目的として摂取されるものであり、「高血圧を改善します」、「生活習慣病を予防します」といった医薬品的な表現は避けなければいけません。なお、口頭での説明も、薬機法における規制の対象となります。
反対に、その商品の包装に記載のある機能性表示や説明、摂取の仕方などについては、お客さまにお伝えしても問題ありません。また、「健康維持に役立ちます」、「美容のためにお召しあがりください」といった表現も問題ありません。
医薬品的な表現について知識を深めたい場合は、以下のページを参考にするとよいでしょう。
医薬品との服用について注意喚起しよう
例えば、多くの店舗で取り扱いのあるイチョウ葉エキス。イチョウは血液凝固を抑制する可能性があるため、医薬品との相互作用に注意が必要です。また、イブプロフェンも血液凝固を抑制する作用があるため、イチョウと共に服用することで紫斑および出血のリスクが高まるおそれがあります。
登録販売者は、このように医薬品と食品の同時服用によって予期せぬ相互作用が引き起こされるケースを想定しておかなければなりません。
したがって、医療用医薬品を服用中のお客さまについては、かかりつけの医師・薬剤師に、食品を一緒に使っても問題ないかどうか相談してから購入するよう伝える必要があります。また、一般用医薬品と食品の同時服用については、登録販売者が同時服用の問題を十分に検討し、必要に応じてどちらかを中止、または商品を変更するなど、臨機応変に対応しましょう。
健康食品の有効性や安全性について調べたいときは、以下のデータベースや書籍が役に立ちます。
POP表記にも気をつけよう
口頭での説明だけでなく、陳列棚のPOP広告にも注意が必要です。POP広告の場合、口頭接客とは異なり、広告の内容が目に見える形として表れます。行政指導の対象になりやすいため、特に注意しましょう。
【接客事例】サプリメントをお求めのお客さまへの対応
実際の接客事例を見てみましょう。ここでは、30代の男性のお客さまを想定しています。
【接客事例】
- 会話
- 接客のポイント
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- お客さま:すみません、ビタミンのサプリメントを探しているのですが、どれがおすすめですか?
- 登録販売者:ビタミンのサプリメントですね。使用目的を伺いたいのですが、食生活で気になっていることなどはありますか?
- お客さま:はい、最近仕事が忙しくて、食事がうまく摂れていないんです。カップラーメンやおにぎりで済ましてしまうことも多くて、さすがに体が心配で...。心なしか肌がカサカサしている気もします。
- サプリメントの使用目的を伺います。
-
- 登録販売者:承知いたしました。忙しいと食事が疎かになりがちですよね。それでは商品を選ぶにあたって、お客さまご自身の情報を少し確認させていただきたいのですが、現在、何か治療中の病気はありますか?
- お客さま:特にありません。
- 登録販売者:では、使用中のお薬などもないということでしょうか?
- お客さま:はい、ありません。ただ、たまにアレルギー性鼻炎がありまして、ステロイドの点鼻薬を使うことがあります。
- 登録販売者:ステロイドの点鼻薬ですね。詳しく教えていただき、ありがとうございます。では、補った方がよいと考えられる栄養素を中心に商品を選んでいきますね。
- 治療中の病気や使用中の薬について伺います。医療用医薬品を使用している場合は、医師・薬剤師への相談を促します。一般用医薬品を使用している場合は、相互作用に注意しながら商品を選びます。
-
- ―中略(詳しく話を伺い商品を選ぶ)―
- お客さま:ありがとうございました。助かりました。
- 登録販売者:最後にお伝えしたいことがございまして、サプリメントは食事の代わりにはなりません。食生活をできるだけ整えたうえで摂取していただくと、より効果を発揮することができます。
- お客さま:そうなんですね。どうしたら栄養バランスを改善できますか?
- 登録販売者:難しく考える必要はございません。コンビニで食事を買う時に、野菜や肉・魚などのタンパク質を意識して購入していただくだけでも全然違いますよ。
- お客さま:わかりました。食事のバランスにも気を配りつつ、こちらの商品を使ってみますね。
- 食生活のアドバイスも一緒におこないます。
健康食品・サプリメントの知識を深めるには
健康食品やサプリメントについて学習するときは、優先順位を付けて取り組むのがおすすめです。会社で販売を強化している商品や、売れ筋の商品があれば、それらから学習を始めるとよいでしょう。
まずはその商品のホームページなどを確認し、どのような使用目的で用いるものなのかを把握し、次に成分の有効性や安全性について確認します。
また、健康食品やサプリメントの場合、薬効についての説明ができませんので、その商品に込められた開発秘話などの「ストーリー」の部分や、飲み心地・味などを把握しておくと、接客で役立つでしょう。
また、民間資格にはなりますが、サプリメントアドバイザーの資格もありますので、健康食品やサプリメントの知識を深めるために活用してみてはいかがでしょうか。
まとめ|健康食品・サプリメントの服用についても正しい情報を届けよう
近年、薬機法の広告規制がますます厳しくなっており、健康食品やサプリメントのすすめ方について悩んでいる登録販売者も少なくありません。自信を持って接客するためにも、医薬品と食品の境目をきちんと把握し、薬機法の観点での学習もおこないましょう。
また、医薬品と食品の相互作用では、添付文書に注意書きなどの記載があるわけではないため、100%正しいといえる対応方法がありません。そのため、相互作用のリスクを最小限にする方法を考えて対応することが大切です。
執筆者:村松 早織(薬剤師・登録販売者講師)
株式会社東京マキア 代表取締役
登録販売者や受験生向けの講義を中心に事業を展開
twitter、YouTube等のSNSでは、のべ1万人を超えるフォロワー・チャンネル登録者に向けて、OTC医薬品についての情報発信を行っている。
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