【登販の接客】胃薬と風邪薬の併用は大丈夫?飲み合わせで気を付けたい点を紹介

お客さまの中には、「胃腸の不調」と「風邪」を同時に訴える方もいます。しかし、胃薬と風邪薬の中には併用してはいけない組み合わせもあるので、ご案内の際には注意が必要です。この記事では、「注意すべき成分」をはじめ、お客さまが胃薬と風邪薬の併用を希望されたときの対応方法などをご紹介します。
目次
- ・登録販売者は把握しておこう!胃薬と風邪薬の併用時に注意すべき成分
- ・登録販売者は接客力を磨こう!胃薬と風邪薬を併用したいと言われたときの対応
- ・登録販売者のプラスアルファの知識 胃薬との併用で注意すべきその他の薬
- ・まとめ|登録販売者のスキルは、接客を重ねることで磨かれていく!
登録販売者は把握しておこう!胃薬と風邪薬の併用時に注意すべき成分

胃薬と風邪薬の併用の際には、とくに「抗コリン成分」と「抗ヒスタミン成分」に気を付ける必要があります。胃薬には抗コリン成分が配合された商品があり、風邪薬には抗コリン成分や抗ヒスタミン成分が配合された商品があります。
併用不可の例としては、以下のようなケースがあげられます。
- 抗コリン成分(胃薬)+抗コリン成分(風邪薬)
- 抗コリン成分(胃薬)+抗ヒスタミン成分(風邪薬)
それぞれの医薬品に含まれる抗コリン成分が重複すると、副作用が強く出るおそれがあります。また、抗ヒスタミン成分は抗コリン作用を示すため、こちらについても抗コリン成分との同時服用に注意が必要です。
胃薬に含まれる成分で風邪薬との併用に注意すべきもの
抗コリン成分
抗コリン成分には、副交感神経系の働きを抑える作用があります。消化管の運動・胃液の分泌は、副交感神経系の刺激によって亢進するため、抗コリン成分により、胃痛・腹痛・胃酸過多・胸やけなどの症状を和らげられます。
胃薬に含まれる「抗コリン成分」の例としては、以下があげられます。
- ロートエキス
- ブチルスコポラミン臭化物
- チキジウム臭化物
風邪薬に含まれる成分で胃薬との併用に注意すべきもの
①抗コリン成分
抗コリン成分は、鼻水の症状の緩和に用いられます。鼻水は、副交感神経から放出されるアセチルコリンの刺激により鼻腺から分泌されます。そのため、抗コリン成分は、アセチルコリンをブロックすることで鼻水の分泌を抑えます。
風邪薬に含まれる「抗コリン成分」の例としては、以下があげられます。
- ベラドンナ総アルカロイド
- ヨウ化イソプロパミド
②抗ヒスタミン成分
抗ヒスタミン成分には、肥満細胞から遊離したヒスタミンが受容体と反応するのを妨げ、ヒスタミンの働きを抑える作用があります。鼻水・くしゃみなどの症状を緩和させる成分なので、多くの風邪薬に配合されています。
風邪薬に含まれている「抗ヒスタミン成分」の例としては、以下があげられます。
- クロルフェニラミンマレイン酸塩
- ジフェンヒドラミン塩酸塩
- カルビノキサミンマレイン酸塩
- クレマスチンフマル酸塩
抗コリン成分の副作用と注意すべき人
抗コリン成分の服用に注意すべき人、または避けるべき人としては、以下があげられます。
- 高齢者(持病を抱えているケースが多い)
- 排尿困難の症状がある人
- 心臓病と診断された人
- 緑内障と診断された人
- 乗物または機械類の運転操作をする人
抗コリン成分の副作用としては、散瞳による目のかすみや異常なまぶしさ、顔のほてり、頭痛、口喝、眠気、便秘、排尿困難などがあげられます。さらに、心臓病や緑内障の持病がある方の場合、それらの症状の悪化を招くおそれもあります。また、抗ヒスタミン成分には抗コリン作用があるため、抗コリン成分と同様の副作用に気を付ける必要があります。
胃薬と風邪薬の併用により、抗コリン作用のある医薬品が重複すると、これらの副作用が強く出てしまうおそれがあります。
【抗コリン成分の主な副作用】

登録販売者は接客力を磨こう!胃薬と風邪薬を併用したいと言われたときの対応

風邪薬には抗コリン成分や抗ヒスタミン成分が含まれていることが多く、胃薬の成分と飲み合わせがよくないケースもよくあります。ここでは、お客さまに「胃薬と風邪薬をどうしても一緒に使いたい」と相談されたときのための、接客スキルをご紹介します。
時間をずらして服用する
医薬品の成分は時間の経過とともに体内で代謝・排泄されるので、各商品で成分が重複していても、時間をずらせば服用できることがあります。
風邪薬の場合、以下を目安に服用の指示をおこなうとよいでしょう。
- 添付文書の服用回数が1日3回 → 風邪薬の服用から4時間以上空けて、胃薬を服用する
- 添付文書の服用回数が1日2回 → 風邪薬の服用から6~8時間以上空けて、胃薬を服用する
参考:日本OTC医薬品協会「注意したい薬の飲み合わせ、食べ合わせ」
併用できる薬に変更する
胃薬と風邪薬の併用が禁止されているときは、それぞれの成分がぶつからないよう、商品を選び直すのもよい方法です。
風邪薬を変更する場合
複数成分が入った風邪薬ではなく、風邪の症状ごとに商品を選ぶとよいでしょう。たとえば、熱や頭痛がある場合、以下のような解熱鎮痛薬を選びます。
- ロキソニンS (ロキソプロフェン)
- リングルアイビーα200 (イブプロフェン)
- カロナールA (アセトアミノフェン)
胃薬を変更する場合
風邪薬と飲み合わせが悪いときは、抗コリン成分が含まれていない胃薬を紹介するのもよいでしょう。とくに、胃薬に含まれることの多い「ロートエキス」と、抗コリン成分がメインで配合される「胃腸鎮痛鎮痙薬」を避けるようにします。
抗コリン成分が配合されていない胃薬としては、以下の商品があります。
- 太田胃散<分包>
- スクラート胃腸薬S(錠剤)
- 第一三共胃腸薬錠剤s
なお、第1類医薬品の「ガスター10」も選択肢となるので、お客さまの症状によっては薬剤師に引き継ぎをお願いするのもよいでしょう。
登録販売者のプラスアルファの知識 胃薬との併用で注意すべきその他の薬

胃薬には、風邪薬以外にも、併用が禁止されている医薬品があります。こちらでは「太田胃散ペイノン錠」を例として、併用できない医薬品について見ていきましょう。
「太田胃散ペイノン錠」は、抗コリン成分の「チキジウム臭化物」が配合された胃腸鎮痛鎮痙薬です。この商品の添付文書の「してはいけないこと」には、以下のような記載があります。
2.本剤を服用している間は、次のいずれの医薬品も使用しないでください
他の胃腸鎮痛鎮痙薬、ロートエキスを含有する他の胃腸薬、乗物酔い薬、抗ヒスタミン剤を含有する内服薬等(かぜ薬、鎮咳去痰薬、鼻炎用内服薬、アレルギー用薬等)
そのため、たとえば以下の商品は、「太田胃散ペイノン錠」と併用できません。
- ●乗物酔い薬:トラベルミンファミリー
- トラベルミンファミリーには、抗ヒスタミン成分の「塩酸メクリジン」や、抗コリン成分の「スコポラミン臭化水素酸塩水和物」が配合されています。
- ●鼻炎用内服薬:パブロン鼻炎カプセルSα
- パブロン鼻炎カプセルSαには、抗ヒスタミン成分の「マレイン酸カルビノキサミン」や、抗コリン成分の「ベラドンナ総アルカロイド」などが配合されています。
- 胃薬と他の薬の併用について相談を受けた際は、添付文書を十分に確認したうえで、併用禁忌となっていない商品をご案内しましょう。
参考:太田胃散「ペイノン錠」
まとめ|登録販売者のスキルは、接客を重ねることで磨かれていく!
風邪薬は多くの成分が配合された商品が多いため、お客さまから胃薬との併用を希望された場合には、とくに注意が必要です。風邪薬を単剤の商品に変更する、抗コリン成分の配合されていない胃薬に変更するといった対応は、最初のうちはなかなか難しいかもしれません。しかし、回数を重ねていけば必ず登録販売者の「接客スキル」は磨かれていくので、臆さずにトライしていきましょう。

執筆者:村松 早織(薬剤師・登録販売者講師)
株式会社東京マキア 代表取締役
登録販売者や受験生向けの講義を中心に事業を展開
X(旧:Twitter)、YouTube等のSNSでは、のべ1万人を超えるフォロワー・チャンネル登録者に向けて、OTC(一般用医薬品)についての情報発信をおこなっている。
- ■著書
- ・医薬品暗記帳 医薬品登録販売者試験絶対合格! 「試験問題作成に関する手引き 第3章」徹底攻略(金芳堂)
- ・薬機法暗記帳 医薬品登録販売者試験絶対合格! 「試験問題作成に関する手引き 第4章」(金芳堂)
- ・これで完成! 登録販売者 全国過去問題集 2023年度版(KADOKAWA)
- ・村松早織の登録販売者 合格のオキテ100(KADOKAWA)
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