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一般用医薬品のリスク区分変更とは?2026年新スキームの内容と登録販売者への影響

一般用医薬品のリスク区分変更とは?2026年新スキームの内容と登録販売者への影響

「ロキソニンS」、「ガスター10」など、これまで薬剤師しか扱えなかった第1類医薬品(副作用リスクが高く、薬剤師による説明が必須の区分)が、今年度中にも登録販売者が販売できる第2類医薬品(比較的リスクが低く、登録販売者も対応できる区分)へと変更される動きが始まっています。これは、あなたの売場で扱える商品の幅や接客の深さが広がり、評価やキャリアの選択肢にも影響する重要な制度改正です。

医師の処方せんに基づいて使用されている医療用医薬品が一般用医薬品に切り替わる場合(スイッチOTC薬:処方薬から市販薬へ転用された医薬品)、まず「要指導医薬品(販売初期に対面での厳格な指導が必要な区分)」として認可されます。その後、3年たてば原則として第1類医薬品に移行する枠組み(スキーム)が制度化されます。一方で、第1類から第2類医薬品に変更する仕組はこれまで整備されておらず、安全性に関する長期データの評価基準や移行判断のルールが明確でなかったことから、10年以上にわたり薬剤師専用のままという医薬品も少なくありませんでした。

こうした課題を背景に、国は厚生労働省に対し見直しを要請し、2026年4月1日から「一般用医薬品のリスク区分変更の新スキーム(第1類から第2類への移行基準を新たに定めた制度)」がスタートしました。

今後は、第1類医薬品の一部が第2類へ移行し、登録販売者が関われる領域が広がっていく可能性があります。

目次

第1章 一般用医薬品のリスク区分変更が進まなかった背景と、2026年新スキーム誕生の経緯

一般用医薬品のリスク区分変更が進まなかった背景と、2026年新スキーム誕生の経緯

要指導医薬品が販売され、原則3年経過すると第1類医薬品に移行し、ネット販売が可能になる――。このしくみは、2013年6月、安倍政権のときに制度化されました(施行は2014年6月12日)。
当時、安倍総理の「成長戦略」の一つとして「すべての一般用医薬品のネット販売を解禁」を掲げました。

その結果、これらの成分は一般用医薬品とは別枠の「要指導医薬品」という新しい分類として、薬機法上に新設されました。そして、「要指導医薬品は、3年たったらネット販売が可能な一般用医薬品に移行する」という条件をつけることで、ネット販売を強く推進する立場との妥協点がつくられた、という経緯があります。このため、「要指導医薬品」は、「一般用医薬品」でも「医療用医薬品」でもない、日本独自の第3の医薬品分類です。一部には「要指導医薬品も一般用医薬品に含れる」と説明する人もいますが、一般用医薬品とは区別して考えるべきものです。

当時、要指導医薬品に移行する際、「スイッチOTC化」という言葉を使うこと自体が不適切ではないか、という話を厚生労働省の担当者から聞いたことがあります。ただし、「スイッチOTC化」という言葉そのものは法律用語ではなく、あくまで慣用的な言い回しです。そのため、厚労省はこの表現には特に踏み込まず、現在まで使われ続けています。

このような制度改正が行われた背景には、当時の薬事法の省令で定められていた「ネット販売禁止事項」に対して、最高裁が国(厚生労働省)全面敗訴という判断を下したことがあります。
これを受けて政府は、一気に「一般用医薬品のネット販売を全面解禁する」という基本方針が打ち出しました。

その中で、「要指導医薬品は3年後にネット販売可」というスキームは、官邸と厚労省、様々な専門家・産業団体の攻防の末に生まれた、いわば"苦肉の策"でした。(なお、「薬局医薬品」という分類がなぜできたかについては、議論が複雑になるためここでは割愛します。)

このように「要指導医薬品が販売され、原則3年経過すると第1類医薬品に移行する」というスキーム自体は、制度スタート前から決まっていました。しかし、「第1類医薬品から第2類医薬品に移行する」するための仕組みは設けられませんでした。

その結果、ネット販売ができるようになっても、店頭ではいつまでたっても薬剤師しか扱えない「第1類医薬品」のまま、という状況が続いてきました。(図表-1参照)。

図表-1 10年以上変更されない第1類医薬品 図表-1 10年以上変更されない第1類医薬品

このように、第1類のまま固定されている状況に対して、国も「セルフメディケーション推進」の観点からで問題視するようになりました。

そこで、2025年6月13日に閣議決定された「規制改革実施計画」、さらに同年11月21日に高市新政権の下で閣議決定された「"強い経済"を実現する総合経済対策」において、厚生労働省に次のような要請が出されました。

  • 科学的根拠に基づいて
  • 一般用医薬品のリスク区分を定期的に見直す
  • そのための新たなスキームを構築すること

この国の方針を受け、厚生労働省は2026年3月6日、薬事審議会医薬品等安全対策部会で、一般用医薬品のリスク区分の定期的に見直す、「新スキーム」を2026年4月1日から開始することを決定しました。 新スキームの骨子は図表-2の通りです。
第1類から第2類への変更を含め、リスク区分変更を要望できるのは、次のような幅広い主体です。

  • 企業
  • 団体
  • 学会
  • 消費者
  • 個人 など

誰でも申請は可能で、受付は常時行われます。
提出された要望は、まず厚生労働省 医薬局安全対策課が内容を確認します。
そのうえで、該当する成分を扱う製造販売業者に要望内容を伝え、以下を求めます。

  • 要望に対する製造販売業者の見解
  • 審議に必要な資料

必要な資料がそろった案件から順に、薬事審議会医薬品等安全対策部会 安全対策調査会で審議される、という流れです。

製造販売業者が要望に対応するためには、その成分の市場シェアが「3分の2以上」であることが条件になります。
例えば、ロキソプロフェンナトリウムでは、第一三共ヘルスケアの「ロキソニンS」が市場の3分の2以上を占めているため、1社で対応可能です。一方、1社で3分の2以上を占められない場合は、複数メーカーが協力して対応する必要があります。

要望申請の書類に不備がある場合は、受付の対象外になります。
単に「○○成分を、第1類を第2類に移行して欲しい」といった1~2行程度の内容では認められません。厚労省のホームページにある所定のフォーマットに沿って、必要事項を記載して申請する必要があります。

リスク区分変更の要望申請要件では、主に次のような点についての情報が求められます。

  1. ① 副作用発現状況
  2. ② 適正使用状況
  3. ③ 類薬の状況
  4. ④ 指定時の指定理由・経緯

これらは専門的な内容も多く、メーカーと相談しながら進めないと難しい項目も少なくありません。

図表-2 一般用医薬品のリスク区分変更の新スキーム骨子 図表-2 一般用医薬品のリスク区分変更の新スキーム骨子

第2章 第1類から第2類へ区分変更が進まなかった理由:安全性への懸念と職能の対立

第1類から第2類へ区分変更が進まなかった理由:安全性への懸念と職能の対立

これまで、なぜ第1類から第2類への区分変更が進まなかったのでしょうか。
理由はいくつかありますが、ここでは一般的に挙げられている2つの要因を取り上げます。

1)副作用情報収集の難しさと第2類移行への懸念

1つは「副作用情報の収集の難しくなるのでないか」という懸念です。
第1種医薬品が第2類に変更されると、

  • 薬剤師による情報提供・確認義務は「努力義務」となる
  • 登録販売者でも販売可能になる

その結果、

  • 情報提供の量や質が下がるのではないか
  • 重い副作用のサインを見逃してしまうのではないか

といった不安が、日本薬剤師会、日本医師会などの医療関係者から根強く上がっています。具体例で考えてみましょう。

・「ロキソニンS」(ロキソプロフェンナトリウム)

胎児に影響がでるリスクがあり、特に「出産予定日12週以内の妊婦」は禁忌(服用してはいけない)です。
つまり、販売時に妊娠の有無や出産予定日を確認し、禁忌を徹底できる教育や指導体制があるかどうかが重要です。

・「ガスター10」(ファモチジン)

適用は「胃痛・胸焼け」ですが、同じ症状は胃がんや食道がん、心筋梗塞など重篤な病気のサインであることもあります。

一時的にガスター10で症状が和らぐと、患者が「治った」と勘違いして受診を先延ばしにしてしまい、結果的に発見が遅れて手遅れになる危険がある、という指摘です。

もしこれらが第2類医薬品に移行し、登録販売者が販売できるようになった場合、すべての登録販売者が、禁忌事項や、重篤な疾患の「症状隠蔽リスク」を十分に理解し、適切に説明できるのか――。
この点について、消費者団体からも強い懸念が出されています。
さらに、こうした安全上の問題に加えて、「職能上の課題」も同時に解決する必要があります。それは次のような場面です。

2)職能の対立と反対勢力

2つ目は薬剤師側の「職能の保護」という側面です。第1類医薬品の販売は、薬剤師だけに認められた独占業務です。
そのため、第1類が第2類に変更されると、

  • 情報提供の密度が下がるのではないか
  • 重い副作用を見逃すのではないか

という安全面の懸念に加えて、

  • 薬剤師の存在意義が薄れるのではないか
  • 薬局の優位性が揺らぐのではないか

という不安にもつながります。

日本薬剤師会の前会長である山本信夫氏は次のように述べています。
「薬剤師は医薬品と名のつくものについては、その使用の状況を継続的かつ的確に把握し、購入者等に必要な情報を提供させ、または必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない、という立場を取っている」と強調しています(「医薬品登録販売者、結集せよ-ウェルビーイングカタリストを目指して;評論社MIL新書より)。

さらに同氏は、一般用医薬品をリスク別に区分すること自体に、もともと強い違和感があったと述べています。
『医薬品は、成分によるリスクだけでなく、服用する人の体質やその時の体調、年齢・性別、妊娠中・授乳中かどうかなど、さまざまな条件によってリスクが大きく変わる。そこが他の商品と決定的に違うところだ。』この考え方は、日本薬剤師会が以前から持っている基本スタンスであり、現在も大きく変わっていません。

こうした背景のなかで、「第1類医薬品を第2類へ定期的に変更できる仕組み」を導入するわけですから、あらかじめ予想される反対意見にして、きちんと説明できる材料を用意しておくことが重要です。

特に、禁忌事項や重篤な疾患の見極め方などを、登録販売者は継続的な研修で把握している、という体制を徹底し、その取り組みを医師や薬剤師などの医療従事者、さらに一般消費者団体にも理解してもらうことが信頼につながります。

一方で、近年、「セルフメディケーションの必要性」を訴える政治団体も出てきています。できるだけ自分の健康は自分で管理し、軽い体調不良は一般用医薬品を活用して自分で手当てしよう、という考え方です。
その背景には、特に若い世代を中心に「社会保険料の負担が重くなっている」という現実があります。医療費を抑えるためにも、セルフメディケーションを進めるべきだ、という流れです。

こうした時代の流れの中で、登録販売者にはこれまで以上に「自己研鑽」が求められます。その自己研鑽、研修の状況を、第3者にも理解してもらえるかたちで、客観的な実績やデータとして示していくことが、職能としての信頼を高め、第1類から第2類への区分変更に対する不安を和らげるうえでも重要になっていきます。

第3章 リスク区分変更を定着させるために登録販売者に求められる3つの役割

リスク区分変更を定着させるために登録販売者に求められる3つの役割

新スキームによって第1類医薬品が第2類医薬品に定期的に変更され、結果として第2類医薬品が増えることは、登録販売者の職域拡大につながります。

しかし、これは単に販売できる商品が増えるという「販売権の拡大」だけにとらわれると、登録販売者に対する信頼は失墜する可能性があります。慎重派や反対勢力の懸念を払拭するためには、登録販売者が以下の3点を徹底する必要があると思っています。

1)受診勧奨を含めたトリアージ能力の強化

まずは、何と言っても単に薬を売るのではなく、「この症状は市販薬で対応すべきか、病院へ行くべきか」を見極める能力です。重篤な疾患を見逃さないためのスクリーニング能力が、これまで以上に厳格に求められます。それをPRすることも必要です。

2)副作用情報の収集・記録・医療機関へのフィードバック

第2類医薬品に変更した薬であっても、常に最新の添付文書改訂や副作用事例を把握し、購入者からの聞き取り内容を記録に残す姿勢が求められます。それらの情報を受診勧奨などの際に、医療機関にフィードバックするという仕組みが定着できれば、医師会も反対理由が減り、定期的な第1類から第2類に変更されるスキームに賛成してもらえるが可能が高くなると期待されます。国もその方向を目指しています。

3)継続学習による「薬の専門家」としての信頼獲得

薬剤師が不在の時間帯でも、登録販売者が「薬の専門家」として質の高い情報提供を行えることを、日々の店頭活動を通じて証明し続けなければなりません。そのためには継続的な学習と専門性の担保が不可欠です。

第4章 一般用医薬品のリスク区分変更がセルフメディケーションをどう後押しするか

一般用医薬品のリスク区分変更がセルフメディケーションをどう後押しするか

第1類から第2類医薬品に変更する新スキームの最大の意義は、

  • 医薬品への「アクセスの向上」
  • 「国民の健康リテラシー向上」

の2つです。
日本は少し風邪をひいた程度でも保険診療を受けやすい、「世界一医療アクセスが良い国」だといわれてきました。その一方でOTC薬へのアクセスはあまり良くなく、医薬品全体に占める一般用医薬品の売上比率は年々減少しています。

さらに、「健康リテラシー(健康情報を理解し、自分で判断・活用する力)」が育ちにくい土壌があるとも指摘されています。
聖路加国際大学大学院教授・中山 和弘氏は、わが国の健康リテラシーが低い理由として、次を挙げています。

  • プライマリー・ケア(身近にあってなんでも相談できるケア)の不十分さ
  • インターネットを含めた情報の入手先の問題
  • 子どものころからの健康教育体制の不足 など

背景には、「医療へのアクセスが良すぎて、健康リテラシーを高めなくても何とかなる社会だったことがあります。この流れを見直そうとしているのが、

  • 本コラム第2回目で取り上げた「OTC類似薬の保険適用見直し」
  • そして今回の「第1類から第2類医薬品への変更」

という2つの動きです。

ドラッグストアの多くは深夜まで営業しており、その現場を支える主な担い手が登録販売者です。
有力な医薬品が第2類に変更されれば、消費者は「必要な時に」、「身近な店舗で」適切な薬を、適正なアドバイスをもとに選べるようになります。

登録販売者はこの流れを前向きに活用して、軽い不調に対して、自ら手当てするセルフメディケーションの受皿になることを意識していくことが大切です。また、登録販売者が関わる情報提供の機会が増えることで、一人ひとりが自分の体調や薬の作用に関心を持つきっかけになります。
結果として、医療資源の適正化にも大きく貢献すると期待されています。

第5章 リスク区分変更スキームと他の政策が生む「セルフメディケーションの好循環」

リスク区分変更スキームと他の政策が生む「セルフメディケーションの好循環」

今回の区分変更スキームは、単独で存在するものではありません。現在進行中の他の施策と組み合わさることで、強力なサイクルを生み出します。

1)スイッチOTC薬化の促進

前回、当コラムで紹介したように昨年からスイッチOTC薬が新スキームと併せて、将来的に第2類へ移行する出口が見えることで、製薬メーカーは新薬のスイッチOTC化への投資がしやすくなります。

2)OTC類似薬の保険適用見直し

医療費抑制の観点から、軽微な症状に対する「OTC類似薬」の処方を制限し、セルフメディケーションへ誘導する動きがあります。

これらの施策が噛み合うことで、「新薬のスイッチ化 → 第1類での評価 → 第2類へのスムーズな移行 → 消費者のセルフケア定着 → 医療費の適正化」という好循環(サイクル)が形成されるのが期待されます。その主役は登録販売者が最も期待され、逆に登録販売者がその役割を担わなければ、わが国の医療保険制度の持続可能性も大きく危ぶまれることになると思われます。

第6章 リスク区分変更時代の登録販売者像:地域医療のゲートキーパーとしての新たなキャリア

リスク区分変更時代の登録販売者像:地域医療のゲートキーパーとしての新たなキャリア

最後に、登録販売者の将来像について考えてみます。
これまで登録販売者には、どこか「薬剤師の補助」というイメージをつきまとっていました。
しかし、新スキームによって、今後は多くの主要な医薬品を「主体的かつ責任を持って扱う立場」へと変わっていきます。

これは、登録販売者が単なる「物売り」から、地域の「健康相談のファーストウィンドウ(最初の相談窓口)」へと進化する、絶好のチャンスです。
第2類医薬品の中心的な担い手になることで、

  • 生活者の最も身近なアドバイザーとしての地位を確立し
  • 地域包括ケアシステムの一員として地域医療を支える存在

になることが期待されます。2026年4月から始まる新スキームは、「登録販売者のプロフェッショナリズムが本当に問われる時代」のスタートでもあります。
この変化をリスクではなくチャンスと捉え、国民の健康を守る担い手として、その社会的価値を証明していかなければなりません。

第7章 まとめ:一般用医薬品のリスク区分変更を「登録販売者のチャンス」に変えるために

登録販売者にとって第1類から第2類への移行は、「単に売れるものが増える」という話ではありません。「薬剤師がいなければ扱えなかった高度な薬」を任されるということは、その前提には当該医薬品の副作用リスクや受診勧奨のタイミングなどについて、薬剤師と比較される関門を通らなければなりません。加えて2026年5月から施行される指定濫用防止医薬品制度の遵守状況について、今年の覆面調査(医薬品販売制度実態把握調査)で細かくチェックされる予定です。

その結果によっても、リスク区分変更がスムーズに進むかどうかに大きく左右されます。いずれにせよ、新スキームは、登録販売者の社会的地位を「物販の担い手」から「医療の担い手」へと押し上げる、まさに転換点と言えるでしょう。

著者情報:
医薬ジャーナリスト 柴田 龍

プロフィール
1982年、医薬専門誌・紙企業に勤務、厚労省記者クラブ、医療分野の記者を経て、1998年、団体職員に転向、以後、医薬関係団体等の理事を務め、厚生労働省の検討会委員、厚生労働科学研究・医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業、スイッチOTC医薬品関連に関する研究などの研究協力員および作業チームに参加、現在に至る。

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新しい記事 医療パラダイムシフトとOTC医薬品の重要性:健康保険法改正が変える患者行動と登録販売者の未来