登録販売者の離職率は高い?転職も含めてキャリアアップについて考えよう
登録販売者の離職率は高い?転職も含めてキャリアアップについて考えよう
さまざまな理由により、「今の職場から離れたい...」「できることなら転職したい...」とお考えの登録販売者の方もいらっしゃるのではないでしょうか?実際に行動に移すのは、なかなか勇気がいりますよね。本コラムでは、登録販売者の離職率を把握したうえで、転職の必要性についてどのように判断すべきかを解説します。
目次
- ・データから見る登録販売者市場
- ・登録販売者の離職率はどのくらい?
- ・登録販売者が離職しやすい理由
- ・登録販売者が離職したくなった際におこなうべき3選
- ・登録販売者の資格は転職に有利!
- ・まとめ|登録販売者は離職しても転職がしやすい!
データから見る登録販売者市場
まずは、登録販売者市場について、客観的に分析していきましょう。
厚生労働省が公表している「登録販売者試験実施状況」によると、令和4年度の登録販売者試験の受験者数は55,606人で、そのうち合格者数は24,707人、合格率は44.4%となっています。合格者全員が登録販売者として働くわけではありませんが、毎年、2万人前後の方が登録販売者の資格を取得している状況です。
また、登録販売者を取り巻く環境は、非常に速いスピードで移り変わっています。以下に、登録販売者に関連する制度の流れをまとめました。
【登録販売者に関連する制度変更】
- 2008年
-
- 初の登録販売者試験
- 受験資格:高卒以上、1年の実務経験
- 2015年
-
- 受験資格の撤廃
- 管理者要件として「直近5年以内に、月に80時間以上従事した月が24カ月以上ある場合」が追加される
- 2020年3月
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- 管理者要件が緩和され、「過去5年間のうち、従事期間が2年以上(1,920時間以上)従事している場合」が追加される
- 2021年8月
-
- 管理者要件が緩和され、「従事期間が通算して2年以上であり、かつ、店舗管理者又は区域管理者としての業務の経験がある場合」が追加される
- 「2分の1ルール(※)」の撤廃
- 2023年4月
-
- 管理者要件が緩和され、「過去5年間のうち、従事期間が1年以上(1,920時間以上)ある場合」が追加される
表中の※マークで示した「2分の1ルール」とは、「OTC(一般用医薬品)の販売をおこなう店舗では、営業時間の半分以上、医薬品の専門家(薬剤師・登録販売者)が常駐しなくてはならない」というルールです。コンビニのような24時間営業の店舗では、「2分の1ルール」により、1日に12時間以上、医薬品販売の資格保持者を配置しなくてはならず、医薬品を取り扱いづらいという事情があったため、かねてよりルールの撤廃が求められていました。
上記の表から、直近の数年間はほぼ毎年、何らかの規制緩和がおこなわれているということがわかります。これらの規制緩和の理由としては、コンビニやスーパーなどの異業種参入やドラッグストアの新規出店、既存店舗の人手不足などが挙げられます。このように、登録販売者市場は、活気がある状態が長期間続いているといえるでしょう。
登録販売者の離職率はどのくらい?
登録販売者の離職率に関しては登録販売者のみのデータがないため、小売業の離職率の傾向から考えていきましょう。
2~3人に1人は新卒3年以内に離職している
厚生労働省の令和2年のデータによると、小売業での新規高卒就職者の3年以内離職率は47.8%、新規大卒就職者の3年以内離職率は37.4%となっています。これらのデータから、小売業では3年以内に2~3人に1人が辞めている計算になります。
小売業の離職率は高い
離職率の高い産業トップ5は以下の通りです。
【新規学卒就職者の産業別就職後3年以内離職率のうち、離職率の高い上位5産業】
高校 | 大学 | |||
---|---|---|---|---|
第1位 | 宿泊業・飲食サービス業 | 61.1% (▲3.1P) | 宿泊業・飲食サービス業 | 51.5% (▲1.1P) |
第2位 | 生活関連サービス業・娯楽業 | 56.9% (▲2.8P) | 生活関連サービス業・娯楽業 | 46.5% (+0.3P) |
第3位 | 教育・学習支援業 | 50.1% (▲5.7P) | 教育・学習支援業 | 45.6% (▲0.0P) |
第4位 | 小売業 | 47.8% (▲1.7P) | 医療、福祉 | 38.6% (+0.2P) |
第5位 | 医療、福祉 | 46.2% (▲0.8P) | 小売業 | 37.4% (▲1.9P) |
( )内は前年差増減、「その他」を除く
ランキングは高校と大学のデータでわかれていますが、上位5位にランクインしている業種はすべて同じで、第4位と第5位の「小売業」と「医療、福祉」が逆転しているだけの違いとなっています。
「小売業」を見てみると、全17産業のうち新規高卒就職者では第4位、新規大卒就職者では第5位となっていることから、「小売業」の離職率は高いことがわかります。離職率が高いというと、悪い印象を持ってしまいがちですが、裏を返せば、資格職なので転職しやすいということの表れでもあります。
※産業の種類
- 宿泊業・飲食サービス業 : 旅館、ホテル、飲食店
- 生活関連サービス業・娯楽業 : 美容院やクリーニング業、旅行業や冠婚葬祭関連事業など
- 教育・学習支援業 : 幼稚園、小学校、中学校など
- 小売業 : ドラッグストア、薬局、ホームセンターなど
- 医療、福祉 : 病院、診療所、歯科医院、保育園、高齢者施設など
登録販売者が離職しやすい理由
では、登録販売者が離職しやすい理由にはどのようなものが考えられるでしょうか。
体力が必要な勤務環境
ドラッグストアで扱う商品は医薬品だけでなく、多岐にわたります。飲料や米、缶詰、シャンプー・リンス、ペットフードといった重い商品が多く、品出しで腰や背中を痛めてしまう方も少なくありません。また、新規出店のあおりを受けて人手不足に陥っている店舗が多いため、厳しいシフトで働かざるを得ない場合もあります。このように、体力が求められる勤務環境に耐えられずに離職してしまうケースが多いことは否定できません。
仕事内容への不満
登録販売者に起こりがちな仕事のミスマッチとして、「医薬品に触れる機会が予想以上に少ない」という点が挙げられます。店舗によっては一般従事者をレジ人員として配置するだけでは間に合わず、登録販売者が長時間レジに入らなければならないことが日常的に発生します。
また、会社によっては売り場が担当者制になっている場合があり、医薬品の担当者になれないと医薬品に触れる機会がほとんどないというケースもあるようです。医薬品販売を強く希望して登録販売者になった方にとっては、せっかく得た知識を活かせず不満が募ってしまうのも仕方ありません。
人間関係がうまくいかない
どのような職場でも起こりうる問題ではありますが、人間関係も離職の理由のひとつとして挙げられます。職場のすべての方と良好な関係を築くことは難しいものですが、人間関係で何かトラブルが起こった際に店長やマネージャーが対応してくれないという場合に、悩む方が多くいるようです。
関連記事:【登録販売者向け】ドラッグストアで人間関係に悩む理由と解決法を解説登録販売者が離職したくなった際におこなうべき3選
もし離職を考えたら、以下の行動を試してみてください。
今の仕事のメリット・デメリットを洗い出す
離職を考えたら、まずは状況を客観的に把握するため、今の仕事のメリットとデメリットを書き出してみましょう。ここで考えるべき要素としては、次のようなものが挙げられます。
- 仕事内容
- やりがい
- 人間関係
- 給料
- 福利厚生
- 残業時間
- 勤務時間
- 通勤時間
物件選びと同様、「仕事において自分が優先したいこと」を正しくきちんと把握し、今の職場を離職すべきかどうか検討します。
第3者や上司に相談
一人で悩みを抱え込んでいても、なかなか結論が出ないものです。そのような場合は、店長や上司、あるいは同僚に悩みを相談することで、自分では思いつかなかった選択肢が出てくることもあります。とくに、店長や上司に相談すると、店舗の異動や職種の変更などを提案してくれる可能性がありますので、おすすめです。
また、「医薬品に触れる機会が少ない」などの悩みがある場合、「スキルアップしたいので、医薬品を担当させてください!」などと思い切って店長に交渉すると、積極性ややる気を評価してもらえるかもしれません。
環境を変えるのが難しい場合は転職がおすすめ
上記の行動を試してみても環境を変えるのが難しいと判断した場合は、転職を検討しましょう。2023年4月に登録販売者の管理者要件が緩和されたこともあり、登録販売者市場は現在活発な状況です。また、求人情報を眺めているだけでも、「いざとなったら自分の活躍の場は結構あるのだな」と感じられ、心に余裕を持つことができますよ。
登録販売者の資格は転職に有利!
登録販売者の資格は一度取得すると転職時に有利になる場合が多いです。その理由は、大きく以下の3つです。
失効しない公的資格
登録販売者資格には、有効期限がありません。また、更新の必要もなく、一度取得すれば半永久的に有資格者となることができます。また、年齢制限がなくいつでも受験できるため、転職したいと思った際に心強い資格です。
ブランクがあっても働ける
さらに、一度登録販売者として離職していたとしても、資格保持者として再就職が可能です。登録販売者の管理者要件は年々緩和されており、ある程度ブランクがあっても復帰しやすいように改善されています。病気やケガ、出産や育児、介護などで一時的に離職する場合や、一度退職して別の企業に転職後、やはりまた登録販売者として働きたいという場合でも、すぐに復帰することができます。
全国に活躍できる職場がある
ドラッグストア業界は急速に成長しており、全国に活躍できる店舗が多数あります。大手チェーンで働いていた経歴は別のチェーンへ転職する場合にも有利に働くでしょう。昨今ではスーパーやコンビニエンスストア、家電量販店などドラッグストア以外の求人も増えているため、正社員だけでなくパート・アルバイトの方も同様に、多くの選択肢から職場を探すことができます。
まとめ|登録販売者は離職しても転職がしやすい!
登録販売者は、転職に有利な資格です。思い切って離職しても、ブランクがあっても、再び登録販売者として活躍することができます。職場に関する悩みは尽きませんが、「登録販売者の資格を持っているだけで、自分の可能性が広がる」ということをぜひ心に留めておいてくださいね。
執筆者:村松 早織(薬剤師・登録販売者講師)
株式会社東京マキア 代表取締役
登録販売者や受験生向けの講義を中心に事業を展開
twitter、YouTube等のSNSでは、のべ1万人を超えるフォロワー・チャンネル登録者に向けて、OTC(一般用医薬品)についての情報発信をおこなっている。
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